21話:虹

「あやや、こんな大勢来て、なにがあったの?」


 舵名は私達を見て驚いている。


「いや、叫び声がしたから気になって来ただけ」

「さてはお前……、都市伝説が好きな人間でしょ。まさか、吉風川の都市伝説を知ってたり……しないよね? 名前を聞いてもいいかな?」

「信濃路ひとみです」

「ふーん、噂は聞いているよ。たしかぁ……、言葉を自在に操る魔術師だったようなぁ。ふむふむ、すごいや!」

「なんで私を知ってるの? というかお前誰?」

「私の名前は江越舵名。水がある場所が大好きな、種族不明の妖怪さ!」


 乗り気になって、舵名は自己紹介した。いつもの信濃路ならば乗り気でドンドン聞いたと思うが、今日は気分が乗っていない。


「わ、わ、私、そ、そ、そんな能力じゃなくて、人から物をうばう能力だ、だ、よ」

「信濃ちゃん、君がしゃべっている間に雨が止んで、化け猫の意識も戻ったよ」

「そもそもなんで化け猫になってるん?」


 信濃路は舵名に聞いたつもりだが、答えたのは早苗だった。


「いい、そういう能力なんだ。これならば納得出来るよね」

「あ、ありがとう早苗ちゃん」


 化け猫は自分を『しずく』と名付けた。雫が立ち上がると、舵名と雫は上流へと行ってしまった。


「じゃあねえーー!」


 舵名の言葉が耳にひびく。また会えるかどうかはわからない。けれどにじがかかっている。


「あー、そういえばみんな、明日、クラス発表だね。誰と一緒のクラスになれるのかなー。怖い人と一緒にならないことを願うばかりだよ!」


 彩那が言ったのを皮切りに、みんなが自分の願望を話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る