27話:クラス発表の時

「新しい物語と言う前に、嫌な展開になったね」


 信濃路は少し笑いながら言った。ミサキも少し笑っている。


「でも、青春という雰囲気が出てきてるね! 前のクラスだったらこんな気分しなかっただろうな〜。これからもこのグループについていくね!」

「おう、友達一人できた!」


 ミサキが嬉しそうに言ったことに、信濃路は喜んで反応した。そのことは、周りにいた人たちにも見られた。

 そして、他のみんねも仲良く話し、笑い合った。


 居づらくなった蒼原は、少し悔しそうに走って校庭の方へと行った。


 貼り出しをした先生にも、この様子を見られた。そして先生はメモ用紙を取り出し、なにやら書いたようだ。正直言ってざまぁと思った。


「そんなことより、紙、貼り出されたよ。誰と一緒のクラスか、確かめに行こう!」

「信濃、さすがお前、気付くの早いね」

「てへぺろ」


 早苗は信濃路の反応の速さを褒めた。それは信濃路をデレさせた。初めて見たかもしれない。


「見た感じ……、綾と、ミサキちゃんと一緒のクラスだ! よろしくね、二人とも、五組だからね、蒼原がいたのは心外だけど」

「早苗ちゃん。うん、よろしく」

「よろしくね、二人とも」


 楽しい二人が、一緒のクラスになった。これからの中学校生活が楽しみだ!


 一方、信濃路。


「逆音ちゃんに、彩那ちゃん、佳奈ちゃんが二組なのかな? そして私も二組だったよ。よろしく」

「うん、よろしく。彩那にも伝えておくよ。あいつ、風邪ひいたらしい」


 この一文でも、佳奈の優しさが伝わった。


 蒼原と、その取り巻きの安田の声が、向こうから聞こえてくる。

「蒼ちん、五組だってよ。私は三組だったよ」

「風が強い……、髪が崩れる……。おまけに、あいつらなんかと一緒のクラスか……。人生マジ詰んだ。安ちゃん、取り敢えず中学校生活楽しめよ」


 そこまで風は強くない。砂埃すなぼこりっているだけである。早苗の花粉症が収まったのと反比例に、蒼原達はあせっている。


「うん、じゃあ帰ろう。なんだかんだで一緒のクラスの友達が多かったし」


 早苗が微笑ほほえみながら言った。

 私たちは、桜の下り道を歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る