雨の日の怪

14話:雨でも出掛ける

 遊園地で楽しんだあの日、そこから数日経った。赤いメモ帳にはには『3月31日、信濃路達と遊ぶ』と書いてある。


 雨は窓を激しく叩く。少し窓を開けていたので肌寒い。わかりやすい悪天候だ。

 まあ昨日の天気予報通りだけどね。


 ほとんどの人はこんな天気に外出は控えるだろうけど、私は出る。

 信濃路の家で遊ぶという、重大な約束は守るためにな。


 私は起きた後、部屋にあったパンを食べた。そしてリビングへと直行した。逆音にあいさつをするためだ。

 青の寝巻きの逆音さかねのとなりに、赤の寝巻きの私が座る。


「おはよう! 今日もいい日にしようね!」

「綾ちゃん、おはよう! もちろん君もね!」

「今日、なんか予定ある〜?」

「うん、ちょっと待っててねー」


 あいさつを済ませた後、私は部屋に戻って、赤のシャツに着替え、再び降りた。


 私がバックを持つと、逆音は何かあったのか尋ねてきた。


「綾ちゃん、どっか行くの? 私は一日中寝るけど」

「ごめん逆音ちゃん、信濃路の家行ってくる!」

「楽しんでー、あ、朝ごはんどうするの?」

「逆音ちゃん、もう済ませた」


 逆音の自転車の鍵を使いたい。性能が私の自転車に比べていいからだ。だから逆音に使用許可を得るために聞く。


「じゃ、チャリ借りる」

「いってらー!」


 ……、予想以上に水溜みずたまりがある。もしかしたら、泥水がかかるかもしれない。こんな雨で自転車を漕げるのか、とても不安だった。


「でも行くさ。友達の信濃路さんたちが待っているからね」


 そう独り言をして、私は漕ぎ出した。


 雨の音は聞こえる、空を見ても灰色っぽい。でも風は吹いてない。しかも友人は待っている。だから自転車は漕げる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る