9話:伝説の死神『クナイ』

 『ユナイテッド・パーク』、ここは世界の縮図をテーマとして造られたエリアである。

 世界各国の名所の模型があり、世界各国の郷土料理がある。なのに人気はない。


「ここはいいエリアなのに人が少ないな、まあそれがいいんだろうけど」

「信濃ちゃん、わかってるね。私はこのエリアが一番好きなんだー。だって……」

「佳奈ちゃん、あそこの……、あっ……。鉄道模型のエリアだった。それと、さっきはごめんな」

「どんだけ引きずるん? さっきので和解じゃないのかいな?」

「佳奈ちゃん、そうなん? じゃあ無かったことにしてよ?」

「信濃知ってるか、黒歴史は簡単に消えない」

「早苗ちゃん、そんな恐ろしい冗談はやめてよ」

「ふーん、じゃあ、『クナイ』って知ってる〜? 橋武の歴史に残ってるはずだけどさー」


 私でも知ってる、橋武の黒歴史。彗星が落ちた直後に起きた、連続殺人事件。

「知らない、何それ怖いの?」

「逆音ちゃん、知らないなんて……、あの『生き返る死体の恐怖』、『闇夜に現る殺人鬼』と言われて思い出したかい?」


「あれに名前があったんだ! なんでも殺された人の大半が五日で生き返ったんだよね?」

「逆音ちゃん、そうだよ。時を止められたかのように、ナイフで刺されたんだよ。しかも時期が時期だったからねー、彗星を落としたという、都市伝説まであるよ」

「早苗ちゃん、付け足しサンクス。とにかく、あれがどこにいるのかも知らないし、また復活したら橋武は終わるかもね」


 信濃路は声をひそめて言った。橋武には、なにかと濃い人が集まりやすい。なにせ戸籍が不要だ、犯罪者も身を隠しやすい。


「あ、ラーメン食べよう、そして食べたらコンサート会場へ行こうよ!」

「綾ちゃん、珍しく君が先導しているね。いつもはただ見ているだけなのにな……」

「だって聞きたいんだもん!」

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