第18話:流星機龍―サルヴェイション・ミーティア・ドラゴン



「ディフェンスマジック発動!」



 ダーク・ナイトメア・ドラゴンの身体に鎖が巻き付く。地面から飛び出した鎖によってダーク・ナイトメア・ドラゴンは叩き落され、身動きができなくなっていた。



「この効果でモンスター一体の行動を終了させる! モンスター効果を無効にしたわけじゃねぇから、ダーク・ナイトメア・ドラゴンの攻撃は止められる!」


「ドランコッコの効果で手にしていたか!」



 グランは悔しそうに唇を噛む。そんな彼に神威ははぁと深く溜息を吐いた。



「てめぇは……」



 神威はグランを睨み、カードを引く。



「頭を冷やせ!」



 咲夜のことはどうでもいいといったら失礼だがこれはゲストカードファイトであり、スポンサーから受けた立派な仕事だ。


 講師に向いているかと問われれば否定する。教えるのが上手いわけではないことも認める。けれどそれは今、この場では関係ないことだ。


 誰に聞かれるかもしれない場所での彼の言動、それに私情を挟んだグランに神威は怒っていた。


 引いたカードに目を遣る。デッキからセメタリーにカードを一枚送ることで一枚ドローする魔法カードであった。自身の今の手札と見比べ、打開策を練る。


 自身の場にはモンスター二体、さらに防壁カードも残っている。けれど、ダーク・ナイトメア・ドラゴンは専用魔法カードが豊富に存在する。


 グランはその使い手だ。手札、ドローカード次第では押し切られる可能性があった。


 ダーク・ナイトメア・ドラゴンをどうにかできたとしてもモンスター効果でセメタリーには行かず、デッキに戻ってしまう。それを専用魔法カードで復活させらてしまうことも考えられた。


(このターンで場を固めるしかない)


 このターンで決めるか、場を固めなければ勝機はない。神威は限られた時間で思考する。引いたカードと手札。


(あのカードっ)


 ふいに過ぎったあのカード。引いた魔法カードの効果を確認し、神威は発動させた。



「魔法カードを発動! この効果でデッキからカードをセメタリーに送ることで一枚カードを引く。俺はドジっ子ピヨコをセメタリーへ!」



 カードの名前を聞き、場が「なんだそのカードは」と騒然とする。公式ジャッジマンであるジョーもカードリストを確認していた。


(あのカード、使ってくれたんだ……)


 咲夜はピヨコの効果を知っていた。それは自身が昨日、神威に渡した忘れられたカードだった。


 使ってくれるとは思わず、咲夜は驚くも少し嬉しそうに頬を綻ばせていた。役に立てた気がしたのだ。



「さらにドジっ子ピヨコの効果発動! デッキからセメタリーに送られた時、手札・デッキから召喚条件を無視し、機械族またはドラゴン族進化モンスターを通常召喚する!」


「何っ!」



 グランはピヨコの効果を確認している途中だった。


 神威が手を掲げれば、フィールドが夜空へと変わり一筋の光が流れ落ちる。



「小さき命の危機、荒れる大地に一筋の光が降り注ぐ。舞い降りろ、流星機龍―サルヴェイション・ミーティア・ドラゴン!」



 流れ星のように降り立った機械の身体をもつドラゴン。白い機械的な東洋竜は金色の瞳で見晴らすと、全身から淡い光を放ち咆哮した。背負っている光輪は廻り周囲を眩しく照らす。



「さらに魔法カード【フォーリング・スター・ナイト】を発動! セメタリーに獣族が三体以上存在し、フィールドにサルヴェイション・ミーティア・ドラゴンが存在する時、防壁カードとしてセットする!」



 流れ星が一つ舞う夜へとフィールドは景色を変えていた。満点の星空の下にサルヴェイション・ミーティア・ドラゴンは降り立つ。



「サルヴェイション・ミーティア・ドラゴンの効果! 自フィールドに存在するモンスターの種族によって能力が追加される! 獣族の数だけ相手の魔法・モンスター効果をこのカードは受けない。場にいる機械族モンスターの数だけ攻撃力は300上昇し、攻撃ができる!」



 サルヴェイション・ミーティア・ドラゴンの身体がさらに輝く。


【流星機龍―サルヴェイション・ミーティア・ドラゴン 攻撃3000 HP4000

 現在の攻撃力(3600)

 ① 自フィールドに存在するモンスターの種族によって能力が追加される。

 獣族の数だけ相手の魔法・モンスター効果をこのカードは受けない。場にいる機械族モンスターの数だけ攻撃力は300上昇し、攻撃ができる。

 ② 獣族がセメタリーに五体以上存在する場合、召喚条件を無視し手札・セメタリーから通常召喚することができる】


 攻撃力はさらに上昇する。フォーリング・スター・ナイトの効果により、400上がるのだ。サルヴェイション・ミーティア・ドラゴンの攻撃力は4000になっていた。


 神威はサルヴェイション・ミーティア・ドラゴンに攻撃を指示した。



「ブロックだ!」



 フレイア・ドラゴンはサルヴェイション・ミーティア・ドラゴンの光の鞭で引き裂かれる。さらにサルヴェイション・ミーティア・ドラゴンの効果による追加攻撃をダーク・ナイトメア・ドラゴンが庇った。



【ダーク・ナイトメア・ドラゴン 現在HP3000 残り1000】


 大ダメージを食らうもダーク・ナイトメア・ドラゴンは地に足をつけ立っていた。



「三回目の攻撃!」

「プロテクトを使用する!」



 グランの防壁カードが輝き、サルヴェイション・ミーティア・ドラゴンの攻撃を無効にする。



「これでモンスター効果は……」

「まだだ!」

「何っ!」



 セメタリーにいたはずのピヨコがぴょんっと現れる。頭に被ったずれる卵の殻を押さえながら、尾にかぶせた機械の帽子を振った。それはサルヴェイション・ミーティア・ドラゴンを応援するかのように飛び跳ねると姿を消した。



「ドジっ子ピヨコの効果を発動! このカードはセメタリーにある状態で、自フィールドのモンスター効果の対象としてよい。そして、このカードがセメタリーに送られたターン、行動を終了したモンスター一体を再度、行動可能にする!」



 サルヴェイション・ミーティア・ドラゴンは再び光り輝くとグランのランパートを光の鞭で薙ぎ払う。グランのランパートの耐久値は0となった。



「ドラコで攻撃! これで止めだ!」



 グランの場にはブロックできるモンスターも、プロテクトできる防壁カードも無い。ドラコの攻撃をグランは受けた。



「勝者、九条神威!」



 ジョーの神威の勝利宣言にステージは観客の拍手と声援に包まれた。



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