第23話:運に自信はないけれど
「私は【常夜の国―妖精コピット05】を召喚!」
水色の帽子を被った小さな妖精がぽんっと現れ、場にいるコピット07とハイタッチした。
「召喚したことにより、カードを一枚ドロー。そして、コピット07の効果! 自フィールドにコピットと名のつくモンスターが存在する場合、攻撃力+300する!」
コピット07が淡く光り、攻撃力が上昇する。
【常夜の国―妖精コピット07 攻撃1500 HP1200
現在の攻撃力(1800)】
咲夜は攻撃を指示した。こっぴーと掛け声を合わせ、二体のコピットはフィールドを駆ける。振りかぶるステッキ、けれどそれは防がれてしまう。
コピット05の攻撃は野狐によって防がれる。コピット07の攻撃は玉藻前にあしらわれてしまった。
【常夜の国―妖精コピット05 攻撃500
野狐 HP1000からHP750へ】
【常夜の国―妖精コピット07 攻撃1800
玉藻前 HP3500からHP2600へ】
「コピット07の効果発動! 自フィールドにコピットと名のつくモンスターが存在する場合にもう一度、攻撃できる!」
コピット07はステッキを大きく振りかぶる、その攻撃は弾かれてしまった。竜真は玉藻前の効果を使用したのだ。
効果により、野狐は灯火のように消える。モンスターをそのまま残させないことが目的だった咲夜は効果を発動してくれたことに安堵しつつ、表情に出かけるそれを堪えてターンを終了した。
竜真は手札を確認しながらモンスターを一体召喚する。黒い狐のような妖怪族モンスターが一鳴きする。
「妖狐―黒狐を召喚。そのまま攻撃や! 黒狐の効果はこのモンスターはブロックされないんやで!」
黒い狐が素早い動きでコピットたちの間をすり抜け、咲夜のランパートに攻撃する。
【妖狐―黒狐 攻撃1500
咲夜―ランパート(5000)から(3500)へ】
(攻撃力1500のブロック無視モンスターっ)
その効果を持つ通常モンスターの中では攻撃力は高いほうである。黒狐の効果に目を遣るとHPは低くかった。
HPを犠牲にすることで攻撃力を上げているのだと解ると、モンスター効果を読んでいるのを知ってか竜真は次の行動をせず待っていた。
「あっ、すみません」
「大丈夫や、ちゃんと確認することは偉いことやで」
一つのミスが勝敗に関わるからなぁと竜真は笑みをみせて玉藻前に攻撃を指示した。咲夜はそれをコピット05でブロックする。
【白面金毛九尾の狐―玉藻の前 攻撃2800
常夜の国―コピット05 HP(2000) 残り(600)】
玉藻前の効果で妖怪族モンスターの野狐がさらに一体、召喚された。
(きりがない……)
玉藻前の効果で確定で一体、モンスターを召喚することができる。耐久に持ち込もうにも玉藻前をどうにかしないことには押し負けてしまう。
(玉藻をどうにかしないと……)
何か手はないか、手札を見詰めながら思考する。思いつかないわけではない。けれど、それはあまりにも運に任せることで。咲夜は悩んでいた。
「……魔法カードを発動、【常夜の門】。素材となるモンスターを三体、さらに一体をデッキまたは手札からセメタリーに送ることで、デッキから進化モンスターを召喚する!」
空間が歪み、門が開かれる。漆黒の鎧に身を包み、マントを翻しゆっくりと歩きながらダスク・モナークは登場した。
黒く一つに揺られた長い髪を靡かせ、大鎌を振るい玉藻前に向ける瞳は鋭い。
「おっ、噂には聞いてたで」
「う、噂になってるんですかっ!」
竜真は「知らなかったん?」と噂の内容を咲夜に話した。
グランに気に入られた女子のパートナーは希少カードのダスク・モナーク。上級壁モンスターで攻撃もできるタフ。
「そりゃあ、効果が効果やけねぇ。HP6500は削るの大変やわ」
おまけに死霊族が場にいる時は相手のモンスター・魔法効果を受けないしなぁと、竜真はダスク・モナークの効果を眺める。どう対処しようか考えている様子だった。
「死霊族倒した後にって言っても、自分ターンに使えるディフェンスマジック積んでないとバトル中は無理やし、ターン時にやるにしても、魔法効果で破壊する系のは代償がなぁ」
デメリットを活用できればいいんやけどねぇ。竜真は頭を掻く。
竜真の話を聞き、そんな噂になっていたのかと恥ずかしく思いつつ、この後のことで咲夜は手を止めていた。その様子をダスク・モナークは腕を組み眺めている。
今からやろうとしていることは運だ。
(引ける自身がない……)
場に三体以上モンスターが存在する時、カードを一枚ドローする。咲夜はその魔法カードに触れるが手を止めてしまう。
運に自信はない。けれど、あのカードを引かないことには玉藻前をどうにかできる手段は無理をして殴りにいくぐらいしかない。玉藻前を無視するという手もあるけれど、効果で耐え忍ばれてはジリ貧となる。
『貴様は』
そんな咲夜にダスク・モナークは呆れたような、怒りのような。そんな表情で咲夜を見止める。
『貴様はこの程度の想いで我を求めたのか』
この程度。咲夜はその言葉に目に力が宿る。
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