第17話:ダーク・ナイトメア・ドラゴン
グランはカードを引くと魔法カードを発動させる。フィールドを覆うように現れる闇、それは渦を巻くように巡っていた。
「魔法カード【ナイトメア・インビテーション】を発動。場にいる闇属性モンスター一体と手札のカードを一枚セメタリーに送ることでデッキから【ダーク・ナイトメア・ドラゴン】を通常召喚する!」
黒く深淵より深い闇に稲妻が走ると穴が開く。低く唸る声が響くとそれは闇を纏いながら現れた。
「闇より悪夢を貪る竜よ、その牙で喰らい尽くせ! 現れよ、ダーク・ナイトメア・ドラゴン!」
黒く重厚な鱗、大きな翼をはためかせる。刃のような牙に鋭いかぎ爪、長く艶のある尻尾を叩きつけると西洋竜は地に足をつけ開眼する。
「おーーーっと! ここでグラン選手のパートナー、ダーク・ナイトメア・ドラゴンの登場だぞ!」
ジョーはそう熱く実況すると応えるようにダーク・ナイトメア・ドラゴンは咆哮した。
早い段階で切り札が来ることは予測していたが、低コストで呼び出されるとなると話が変わってくる。
セメタリーにカードを送るというのは一見するとデメリットのようにみえるが、墓地を肥やすという点についてはメリットとなる。
ダーク・ナイトメア・ドラゴンにはそれをサポートするカードは多い。活用されるまえに戦いを優位に運ばなければならない。
「ダーク・ナイツ・ドラゴンでランパートに攻撃」
「マシン・ドラコでブロック!」
グランの指示に火を噴くダーク・ナイツ・ドラゴン。その前に立ちはだかるマシン・ドラコは炎を浴びるがびくともしない。
【ダーク・ナイツ・ドラゴン 攻撃1500
ブロック宣言 マシン・ドラコ HP2000からHP1250へ】
「硬いね、やはり。次にダーク・ナイトメア・ドラゴンで攻撃! ダーク・ナイトメア・ドラゴンの効果! 場にいる闇属性モンスターの数だけこのモンスターの攻撃力は+300される!」
【ダーク・ナイトメア・ドラゴン 攻撃3000
現在の攻撃3300】
グランはダーク・ナイトメア・ドラゴンに攻撃を指示する。それを神威はマシーン・パロットでブロックした。
マシーン・パロットはランパートを守るように飛び出すと地面に叩きつけられ破壊される。
「さらにダーク・ナイトメア・ドラゴンの効果発動、場にいる闇属性モンスターをセメタリーに送ることで追加攻撃が行える!」
ダーク・ナイツ・ドラゴンは食われるようにセメタリーに送られ、ダーク・ナイトメア・ドラゴンは二度目の攻撃を行う。
神威モンスターは既にブロック済みなため、その攻撃はランパートが受ける。
【神威―ランパート(5000)から(2000)へ】
ワァーっと歓声が沸く。ジョーの実況を耳にしながらマリアは不安げであった。咲夜は二人の対戦に見入っていた。
半分の耐久値を受けた神威だが、まだ余裕があるといった様子を見せている。これからが彼の本番なのだろう。
グランがターン終了を宣言したのを確認し、神威はカードを引く。
「俺は二体目のマシン・ドラコとドランコッコを召喚」
『どらー』
二体のマシン・ドラコに挟まれながら赤いインコに似た丸い鳥が一生懸命、翼をばたつかせながら飛んでいた。
「ドランコッコでランパートに攻撃」
「もちろん、ブロックだ」
「ならば残りのマシン・ドラコの攻撃は受けてもらう!」
ドランコッコの体当たりはダーク・ナイトメア・ドラゴンの巨体に阻まれ、その隙に一体目のマシン・ドラコがグランのランパートに突進した。
【ドラン・コッコ 攻撃1000
ブロック宣言 ダーク・ナイトメア・ドラゴン HP3500からHP3000へ】
【マシン・ドラコ 攻撃1000
グラン―ランパート(5000)から(4000)へ】
「さて、僕のターンだ」
グランが指を鳴らすと地面から二体のドラゴンが召喚された。手札から魔法カードを発動させたのだ。
「魔法カード【ナイトメア・ミール】を発動! 場にダーク・ナイトメア・ドラゴンが一体の場合、デッキから二体まで闇属性モンスターを通常召喚する! 僕はフレイア・ドラゴンを二体、召喚!」
二体の灰色がかった西洋竜は吼える。グランがもう一度、指を鳴らすと一匹のフレイア・ドラゴンがランパートに向かって黒い弾を吐き出した。
「ドラコでブロック!」
【フレイヤ・ドラゴン 攻撃1500
ブロック宣言 機械竜―マシン・ドラコ HP1250からHP500】
黒い弾を受け、マシン・ドラコは吹き飛ばされる。震える足でなんとか立ち上がるも残りのHPは少ない。
グランの攻撃はまだ治まらない。ダーク・ナイトメア・ドラゴンが一歩、前へと出る。
「ダーク・ナイトメア・ドラゴンで一回目の攻撃!」
「ドランコッコでブロック! さらにドランコッコの効果を発動! 破壊またはセメタリーに送られる時、デッキから魔法カードを一枚手札に加える!」
ドランコッコはダーク・ナイトメア・ドラゴンの噴く炎に焼かれ、破壊された。破壊されると同時に一枚の魔法カードが神威の手札に加わる。
その一連の行動を見てグランはふっと息を吐いた。
「やはり、僕のほうが彼女を強くできる」
ぼそりとグランは呟いた。マイクに拾われない、けれど神威には聞き取れる声に眉間に皺を寄せる。何のことを言っているのか分かったのだ。
「お前、そんなにあいつが好きか」
「当然だろう。彼女が君に教えを請うていることすら受け入れたくないぐらいだ」
どうしてそこまでと神威は口にしようとするも、黙る。彼の長い話には付き合いきれない。それに今はゲストカードファイト中だ。私情は持ち込みたくはなかった。
そんなものはあいつに言えと答えれば、言ったからこうして君に嫉妬していると返されてしまう。
咲夜に言わないわけがない。けれど、咲夜はグランの申し出を断った。
『神威くんに教わりたいので』
教わっているからではなく、教わりたいから。その言葉にグランは自身の中に湧き上がる嫉妬の大きさに驚いたほどだ。
「でも、僕のほうが彼女を強くできる」
グランはドラゴンを一体、セメタリーに送り、ダーク・ナイトメア・ドラゴンに攻撃を指示した。
「僕の方が優れているのだから!」
ダーク・ナイトメア・ドラゴンの噴く火球が神威のランパートを襲った。
その瞬間、悲鳴に似た歓声が沸く。マリアもあぁっと叫び、咲夜は思わず声を出した。
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