第28話:ミス
「あーあ、やっちまったか」
その様子に神威は額に手をあて、グランも渋い表情を見せている。
マリアの行動自体は間違いではない、その魔法カードは使っていいタイミングである。けれど、対象にしたモンスターが悪かった。
「この場合、僕ならギャリーを選択する」
常夜の国―盗賊・ギャリーは破壊またはセメタリーに送られる時、カードを一枚手札に加えることができる。
カードは召喚させた咲夜が引くことになるが、パートナーと連携するのなら選択しない余地はない。
「それにコピット04の効果は一度きりじゃない。あいつならデッキ圧縮系のカードをまだ詰め込んでる。それに壁として機能もしている」
コピット04のHPは1600だ、まだまだ余裕がある。咲夜の手札によるが能力も使用可能だ。セメタリーに送られたカオス・ヘルカイザーも回収することができる。
それにコピットシリーズというのは魔法カードが実は多く、他のモンスターをサポートするのに向いている。咲夜のことだから入れているはずだ。
コピットにはまだ役割というのが残っている。マリアのしたことは神威たちから見ればミスとしか言いようがなかった。
「あのタイミングで切り札を手札に加えたとなると次のターンには呼び出せる手段があったんだろう」
「この後の展開、どう見る神威?」
グランの問いに神威は肩を竦めた。
あの様子からみてマリアは冷静ではない、そんな相手とタッグを組んでいる。その状況で勝利できるかどうか。
「西園寺の説得にあいつが成功しないと無理だろうよ」
マリアがスノー・ブルームを召喚するのを見ながら神威は答えた。
*
「魔法カードをセメタリーに送り、氷の女帝―スノー・ブルームを召喚ですの!」
ひらひらと雪を舞い散らせながら白き氷の女帝は歩む。かんっと手にしたロットを地面に打ち鳴らすと立ち止まり、フィールドを見晴らしていた。
「さらにセメタリーに送った魔法カードの効果を発動させますわ。スノー・ワールドの効果によりモンスター一体の行動を不能に……」
「ホロスコープ・ローズの効果を発動させる!」
菖蒲はホロスコープ・ローズをセメタリーに送る。セメタリーに送られる最中、ホロスコープ・ローズの夜空の水晶が弾け飛ぶ。幾万の星星がマリアたちを襲った。
「自身をセメタリーに送ることで魔法・モンスターの効果を一つ無効化させる!」
「っ……。でも、この効果は無効化できませんわ! スノー・ワールドの効果で防壁カードとしてこのカードを設置する。その効果で氷のと名のつくモンスターの攻撃力は+500されますわ」
スノー・ブルームの身体が淡く光り、攻撃力が上昇する。攻撃力の上がったスノー・ブルームにマリアは攻撃を指示した。
スノー・ブルームの氷の息吹をキャットレディは受ける。続いてくるギャリーの攻撃をセイント・ローズが剣で弾いた。
【アイドルスター・メアリー・キャットガール 残りHP400
薔薇乙女の騎士―セイント・ローズ 残りHP1800】
「つぎつぎ! ぱぱっといくよーっ!」
マリアの攻撃できるモンスターが攻撃を終了し、ターン終了宣言を聞くと祭はカードを引く。早く終わらせたいといったふうに窺えた。
そんな祭の様子にマリアは眉根を寄せると苛立ったふうに言う。
「ちょっと、真剣にやってくださる?」
「カードファイトは真剣にやってるよ、当然でしょ? 西園寺さんがさっさとしないせいじゃーん」
「て、手順ていうものがっ……」
「はーい聞こえなーい。ボクのターン、魔法カードを一枚セメタリーに送り魔法モンスターを召喚! 出てきて、ナースちゃんっ」
きらりと光ると大きな注射器を抱えた白衣の天使が羽ばたいていた。真っ白な翼をはためかせながらくるりと回転しウィンクをする。
【アイドルドリーム―キューティー・ナース 攻撃200 HP1000
効果によりモンスター一体のHPを500回復=セイント・ローズを選択
薔薇乙女の騎士―セイント・ローズ HP2300】
キューティー・ナースが薬をセイント・ローズに投げるとHPは回復した。
「さらに召喚に使用した魔法カードの効果を発動! モンスターを一体セメタリーに送ることでモンスターを一体破壊する。ナースちゃんをセメタリーに! そして破壊するのはスノー・ブルーム!」
ばいばーいと手を振ってキューティー・ナースは姿を消した。その間際、カードを一枚置いていく。
キューティー・ナースの破壊またはセメタリーに送られる時、カードを一枚ドローするの効果により祭はカードを手にしたのだ。
「さぁ、場はがら空き同然っ! キャットガールでランパートに攻撃!」
「ぶ、ブロックですわっ」
キャットガールはマイクで殴る、それを頭部に受けたギャリーは倒れるように破壊された。
ギャリーの効果により破壊またはセメタリーに送られる時、カードを一枚加えるの効果で咲夜はカードを手札に加えた。
「セイント・ローズでランパートに攻撃!」
セイント・ローズは飛び駆けると剣を大きく振りかぶった。ランパートに大きくヒビが入る一撃を食らう。ランパートはめきめきと音をたて揺れた。
【マリア・咲夜ペアーランパート残り(2500)】
「そ、そんな……」
マリアは一瞬にして消えたスノー・ブルームに動揺していた。それでも戦いを止める気はないのか、オルターは構えている。
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