第6話:氷の女帝ースノー・ブルーム
(アンラビーのHPが1000、アイス・ナインのHPが1500……攻撃はアイス・ナインのほうが高い……)
手札にいるモンスターで倒せなくはない。だが、同時召喚した時はどちらか片方しか攻撃はできない。また、攻撃をしてもガードされてしまえばダメージは半減する。
考えても仕方ない、此処はモンスターを出さねばランパートを攻撃されてしまい負けてしまう。咲夜はモンスターを選択すると召喚した。
「私は、【常夜の国―妖精コピット01】を召喚。コピットの能力でデッキから死霊族モンスターを一体セメタリーに送りますっ」
『こっぴー』
ぽんっと煙と共に赤い三角帽子を被った小さな妖精が飛び跳ねる。妖精がステッキを振ると同じ姿の仲間が複数集まり、カードを一枚セメタリーへと抛った。
さらに咲夜はモンスターを召喚する。
『はぁーい』
露出した浅黒い肌に包帯で巻かれた豊満な胸の女性。ゾンビ・ガールは短いスカートをひらりとさせ、ウィンクをした。
すると、カードが一枚現れ咲夜の手札に加えられる。
「さらに【ゾンビ・ガール】を召喚、その効果で【ゾンビ・ボーイ】をデッキから手札へ加える」
ゾンビ・ガールは周囲の男子にアピールするように手を振っている。二人のカードファイトを観戦していた男子たちは思わず感嘆の声が漏れる。
手を振るたびに揺れる胸元に目がいっていた。そんな様子にマリアは「はしたない!」と口にする。
マリアの言葉にゾンビ・ガールはむっとした表情をみせた。女性がそんな露出してと言うマリアにゾンビ・ガールはくすりと笑う。
『おっこちゃまぁ』
「ちょっ、ゾンビ・ガールちゃんっ」
べーっと舌を出すゾンビ・ガールに慌てて止めるも、本人は知らん顔。自身は悪くないというふうにそっぽを向いている。
ゾンビ・ガールにはモンスターAIが組み込まれていた。それほど珍しいというカードではないけれど、ある一定層に人気だった。
公式の人気投票で上位ということもあり、AIが実装された人気投票組である。そのせいか、対戦時でもAIが発揮されていた。
マリアの苛立ったような表情に咲夜はすみませんと謝りながら慌ててゲームを再開する。
「え、と……ゾンビ・ガールでアンビラーを攻撃!」
「もちろん、ガードしますわっ」
とりあえず、攻撃をと咲夜はゾンビ・ガールに指示を出す。ゾンビ・ガールはバールのようなものでアンラビーに殴りかかる。それを手にしていた銀のトレーでアンラビーは防いだ。
【氷の召使い―アンラビーのHP残り200】
ゾンビ・ガールはバールのようなものを肩に担ぎ、舌打ちをした。
「これで、私のターンは終わりです……」
「次はワタクシのターンですわね」
咲夜の言葉にマリアはカードを引く。引いたカードにマリアはにっこりと笑みを浮かべた。
その笑みの理由に咲夜はすぐに気づいた、切り札が来ると。
「ワタクシは魔法カードを二枚セメタリーに送ることで【氷の女帝―スノー・ブルーム】を召喚。おいでになって、ワタクシの女帝」
フィールドの空間に雪がちらついたかと思うと風が吹き抜けた。
白く長い髪がふわりと靡く。白い瞳で見晴らし、雪を氷を纏うドレスを擦りながら玉座から立ち上がる女帝。
手にしているロットを床に打ち鳴らすと、召喚されていたアンビラーとアイス・ナインは膝をつき頭を下げた。
「さらに、スノー・ブルームの効果発動、召喚に使用した魔法カード【スノー・ワールド】をランパートにセットする。そして、スノー・ブルームの召喚に、スノー・ワールドを使用した時、さらに攻撃力は800上昇する!」
スノー・ブルームがロットを翳す。床は凍ったように透明になり、降り積もる雪。一瞬にしてフィールドは氷の世界へと姿を変える。
荒れ狂う吹雪、まるで今その中に立っているかのような光景に咲夜は一歩、後ずさる。
【スノー・ワールドの効果発動を確認。
「氷の女帝―スノー・ブルーム」の効果でランパートにセットされた場合、場にいる氷と名のとつくモンスターの攻撃はこのカードがセットされている間、+500される。「氷の女帝―スノー・ブルーム」がフィールドに存在する間、このカードは破壊されない。また、このカードは防壁カードとして扱う。】
効果を読むと咲夜はスノー・ブルームの攻撃力を確認する。
【氷の女帝―スノー・ブルーム 攻撃力(2500)HP(2800)
現在の攻撃力(3800)】
「攻撃力、3800っ」
「あら、そんなもので驚いていては対戦なんてまだまだ早いことですのよ」
マリアは手を翳すとスノー・ワールドの効果を発動させた。
「スノー・ワールドはまだ効果がありまして! 一度だけ、相手モンスターを一ターンの間、行動不能にすることができますのよっ!」
ランパートにセットされたスノー・ワールドが光る。ゾンビ・ガールの足が氷に覆われていた。身動きができず、ゾンビ・ガールはマリアを睨みつけている。
「フフ。これでゾンビ・ガールはこのターン、ガードもブロックもできませんわ。さらにワタクシはスノー・ブルームの召喚に使用した魔法カードを発動、デッキからカードを一枚ドローですわ」
カードを引くとマリアは手を前に出す。それを合図にモンスターが攻撃態勢へと変わった。
マリアの指示にアンラビーとアイス・ナインは咲夜のランパート目掛け、飛んだ。
「コピットさんでブロック!」
『こっぴ、こぴ!』
コピットはジャンプするとステッキを振り、アイス・ナインの攻撃を軽々と捌く。すたっと着地すると、ニヤリと笑みを浮かべた。
アンラビーの攻撃は防げず、ランパートへとダメージがいく。
【ランパート耐久値 残り3800】
「なっ、なんで平気そうですのっ!」
コピットの様子にマリアはオルターでモンスターを確認する。
【常夜の国―妖精コピット01 攻撃力(500)HP(2000)
現在HP(1250)】
コピットのHPにマリアは驚いたように「その見た目で!」と声を上げる。
コピットはくるくるとステッキを振りながら回っていた。コピットは見た目によらず高耐久モンスターであり、壁として優秀だ。
ただ、使っているものは少ないため、見落とされるケースはよくあることである。
「まぁ、まぁ、アンラビーの攻撃は通りましたし……。それにこれで、ブロックできるモンスターはいない。スノー・ブルームでランパートに攻撃っ!」
スノー・ブルームがロットを向ける。そこから氷の息吹が溢れ、咲夜を襲った。
「さぁ、プロテクトの使用かしら? それとも……ダメージを受けまして? 貴女のランパートの耐久値は残り……2400⁈」
「ディフェンスマジック【コピットクッション】を発動。コピットをセメタリーに送ることでダメージを半減させる。さらに防壁効果でダメージ500半減っ!」
咲夜を守るようにクッションが現れていた。魔法が発動したことにより、フィールドにいたコピットは手を振るとぽんっと消えてしまう。
スノー・ブルームの攻撃はクッションによって吸収されてしまった。
「さらにコピットクッションの効果発動、受けたダメージが1300を超えていた場合、デッキからコピットと名のつくカードを一枚、手札に加える。【常夜の国―妖精コピット02】を手札に加えます!」
「……ターンエンドですわ」
咲夜がカードを手札に加えたのを確認し、マリアはターンを終了させる。ターンが咲夜に移ったことで動きを封じられていたゾンビ・ガールの氷が溶けて開放された。
咲夜はカードを引いた。手札を確認すると眉間に皺を寄せる。今の手札でどう打開すればいいのか咲夜には解らなかった。
(なんとか、防いだけど……)
次のターン、防ぎきれるか。自フィールドにはゾンビ・ガール一体しかいない。ランパートに攻撃した場合、アンビラーでブロックしてくるのはほぼ間違いないだろう。役割を果たし、HPの残り少ないモンスターだ。
(先にスノー・ブルームを処理すべきなのかな……)
攻撃力の上がっているスノー・ブルームを放置はできない。かといって、集中攻撃されることをマリアが予測していないわけがない。
「あぁ、もう……わかんないよ……」
咲夜は手札を見詰め、小さく嘆いた。
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