第4話:練習バトルはここまで

「本番なんて今考えるな。で、ここまでで質問は?」



 一通りのルール説明を終えた神威は質問がないかと問うた。これだけで理解できるとは思っていないようである。


 咲夜は聞きたいことがいろいろあったのはすぐに手を挙げた。



「プロテクトで使用した防壁カードの効果ってなくなるんですよね?」

「無くなる。セットされてないからな」

「相手の攻撃がモンスターのHPよりオーバーした場合ってランパートにダメージが」

「いかない。貫通持ちモンスター以外の攻撃は貫通しない」



 咲夜の質問に神威は答えていく。初心者がよく躓くであろう箇所の質問らしく、気をつけろよと彼は言う。



「あ、あと魔法・効果で召喚すると明記されているカードで、モンスターを召喚し、モンスターを通常召喚した場合って、魔法・効果で召喚したモンスターって攻撃できるんですか?」


「できる。通常召喚したモンスター二体はどちらか片方しか召喚したターンに攻撃はできないが、魔法・効果で召喚すると明記されたカードで召喚した場合、通常召喚扱いではないため攻撃が可能だ」



 此処がややこしいところであると神威は注意する。


 通常召喚扱いというのは通常通りの方法で召喚したモンスターのことを指す。また、魔法・効果の場合でも、通常召喚扱いで召喚すると明記されているものも該当する。


 召喚の前に通常と書かれていなければ通常召喚扱いとはならない。その場合、攻撃制限はなく通常召喚で召喚したあとであっても攻撃は可能だ。


 咲夜はうーむと眉を寄せる。分かるような、分からないようなと悩ましげな表情だ。


 分からなくなったらヘルプを見ればいい、オルターも勝手に処理してくれると神威は言い「他は?」と問う。


 他、何かあっただろうかと咲夜は考える。メモは取ったし、聞きたいことは全部答えてもらった気がする。気になることといえばそうだなと咲夜は思いついたのか口にした。



「神威くんのパートナーって誰ですか?」

「流星機龍サルヴェイション・ミーティア・ドラゴン。って、それ今関係ねえだろうが」



 ルールに関することをでだと神威に言われ、気になったんだものと思いつつ咲夜は指を折りながら確認する。


 一応、全て覚えたというわけではないがメモも取っているので大丈夫そうではあった。



「えーっと、解ってないところはあると思いますが、ひとまずは大丈夫です!」


「それを大丈夫とは言わねぇ……まぁ、いい。魔法カードの説明にはいるぞ」



 魔法カードには二種類存在する。【ターンマジック】と【ディフェンスマジック】だ。ターンマジックは自身のターンに発動できる。ディフェンスマジックは相手ターンにも発動することができる。


 ディフェンスマジックには【カウンター】と名のつくものがあり、そのカードは相手のディフェンスマジックにカウンター処理が行える。また、カウンターにカウンターは行えない。



「理解はできたか?」


「えっと、モンスターフィールド上にブロックできるモンスターがおらず、相手のランパートの耐久値が0の状態で、相手にアタックしたトーカーの勝利。デッキが0枚になったトーカーの敗北。で、基本ルールのランパートの耐久値は5000ポイント。スペシャルルールは6000ポイント……」



 ランパートには必ず一枚防壁カードを設置し、モンスターは最大四体までフィールドに召喚できる。


 初期設置する防壁カードは初期防壁カードから選ぶ。それ以外の防壁カードは初期設置することはできない。


 咲夜は指差し確認するように一つ一つ言葉にしていく。



「自分のモンスターへの攻撃がガード、ランパートやトーカーはブロック……。セメタリーに使用したカードが送られる……。セメタリーを利用したデッキは管理が難しそうだなぁ」



 レコード・トーカーにはセメタリーを利用した墓地デッキや防壁を強化する防御デッキなど様々な戦略がある。


 モンスターの処理を考えるだけで精一杯の今の自分では、さらに処理の増えるセメタリーを利用した戦略は無理そうだなと咲夜は思った。



「ダスク・モナークは墓地利用しねぇからいいだろ」

「え?」



 神威の言葉に咲夜はダスク・モナークのモンスター効果を確認した。



【常夜の国―ダスク・モナーク

 レアリティ:スーパーノヴァ 種類:進化モンスター

 モンスター効果:攻撃力(2800)HP(5000)


 ①このカードは自フィールド上に死霊族が存在する限り相手の魔法・モンスター効果を受けない。


 ②このカードは自セメタリーに死霊族モンスターが五体以上存在する場合、HP+1500される。


 ③このカードがフィールド上に存在する限り、攻撃対象はこのカードしか選べない。


 手札・フィールドからセメタリーに死霊族モンスターを三体送ることで進化召喚できる。】


 一目見ると墓地を利用するように思える。咲夜はでもこれと二番目の効果のことを口に出すとそれは効果だろうと言われてしまった。



「召喚する時に三体セメタリーに送るだろ。こいつを召喚する頃にはセメタリーに五体以上は存在してる。つか、それを墓地利用デッキとは言わねぇ」


「ふぇっ⁉」



 ただ、墓地を肥やすだけでは利用したとは言えないと神威は言う。墓地を肥やし、そのモンスターや魔法を上手く使ってこそ、利用するというのだ。


 ダスク・モナークのカード効果は確かに墓地にカードが無ければならないが、それだけでは利用しているとは言えない。



「お前に解りやすい例を挙げるなら、セメタリーからモンスターを召喚したりとか、フィールドとセメタリーを潤滑させたり……その何も解ってねぇ顔やめろ」



 ちんぷんかんぷんといった咲夜の表情に、神威は溜息を一つついた。説明しても無駄と判断したようだ。


 墓地利用だけでなく、防壁利用などもあるのだが今の彼女には難しいだろう。今は初期段階であるルールの把握に努めるように告げる。



「とりあえず、今はセメタリーを利用することは考えるな。だから、お前のデッキは五十二点なんだよ」



 咲夜のデッキはセメタリーを利用しようと、魔法カードを詰め込んでいるせいで防御が疎かになっていた。せっかくの死霊族統一デッキだというのにそれをサポートする魔法カードも少ない。


 選ぶカードはなかなか良いというのに非常に勿体無い内容になっている。そこを変えればもっとよくなるだろうと神威は思った。



「まぁ、死霊族のモンスターは墓地利用系が多い。が、今のお前じゃ無理だ。だから、そこを踏まえてもう一度デッキ構築しろ」



 ひとまずルールの確認を終えた咲夜に神威はまたデッキ構築の課題を出した。それを踏まえた上でダスク・モナークのデッキをもう一度組む。咲夜はうーむと考える。


 このデッキをさらに改良するということ。咲夜は今あるカードでできるだろうかと少し不安になった。



「デッキの組み方は?」

「えっと、モンスター・魔法カード合計四十枚、防壁カード一枚以上五枚以下の合計四十一枚から四十五枚!」

「よろしい。後は対戦しながら教えるしかねぇ……ってもう時間はないか」



 ごーんごーんと昼休みの終わりを告げる鐘が校内に響く。そう長くいたつもりはなかったのだが、もうそんな時間となっていた。



「あ、次の授業、数学だから急がないとっ」



 数学教師は口煩いからっ!と咲夜は立ち上がる。


 放課後にまたやるぞと言う神威に「勉強した後ですよね?」と咲夜は返す。次の学力テストのと咲夜が問うと嫌そうに眉間に皺を寄せ神威は頷いた。


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