第1章「遭遇」
1人と2匹はデスデモーナ大森林を進む。
本来であれば、人間が太刀打ち出来ないような強力で凶悪な魔獣が大勢生息する非常に危険な地なのだが…
その危険な魔獣達の頂点に立っている2匹の魔獣…ケル吉とスネ夫を引き連れた男、明智利央はそんなこととはいざ知らず、陽気に森の中を進む。
「相変わらずめっちゃ楽だわ!…ん?なんだか森が浅くなってきたような気がする」
利央達は他の魔獣に出会うことなく、いつの間にか森の入り口…この前コスプレ少女と出会った場所の近くに来ていた。
「うーん…森でのアウトドア生活も快適だったけど、ここはちょっと人里に行ってみるか!だって誰かと話ししたいし!!」
寂しさが限界にきていた利央は迷うことなく森から抜け、人里目指して足を進める(実際に進めているのはケル吉だが)。
そんな時だった。スネ夫が
「シャアァァァァ!!」
と威嚇するように鳴き、ケル吉もある方向を向いて
「ガルルルル」
と威嚇の姿勢を示した。
「どうしたお前ら…なっ!!!!あれは…」
利央の視界に入ったのは…
3人組の人間が恐る恐る森の中を伺っている様子だった。
「人じゃん!やっば!!久しぶりに見たわ!!」
テンションが上がってしまった利央は思わずケル吉から飛び降りて3人の元へ駆け出した。
「おーい!!こんちはーっす!!!」
3人組は驚いた様子で一斉にこちらに向かって振り向いた。
「なっ!!!!!…人間か?」
「うおっ!!!!」
「何者なの?!?!」
3人組は警戒を露わにする。
「いやいや、怪しいものじゃないんですよ!ちょっと道に迷ってしまいましてね。近くの街なんか教えてくれるとありがたいなーなんて」
「あ、怪しいな…」
「そうよキース、森からこんな軽装備で出てくるなんておかしすぎるわ!」
キースとシャーリーは訝しげな視線を向けてくる。そんな中ドンファンは…
「あ…ああああああああ」
「ちょっとドンファン!静かにして!それでキース、どうする?」
「あぁぁぁぁぁぁああああれれれれれれれれ」
「ちょっとドンファン!いい加減に…」
「おい、冗談…だろ?」
「きゃぁぁぁぁああああ!!!!!」
3人組は愕然とした表情で森の中を見ている。
「え?!いきなりどうしたんですかみなさん?!」
「どうしたもこうしたもないわよ!!」
「ひぃぃぃいいい」
「おいおい、これは悪夢かなにかか?ケルベアーと"ヴェノムボア"と一度に遭遇するなんて…」
3人の視点はどうやらケル吉とスネ夫を捉えているようだ。
「へ、下手したらウタヤ村どころか王都まで大惨事になるぞ…」
「ケルベアーだけでもやばいのに、ヴェノムボアなんて聞いてねえよぉぉぉぉお!!!」
「こ、これは使うしかないわね"あれ"を…」
やばいやばい、久しぶりに人に会ったのにこのままだとなんか大変なことになってしまいそうだ。とにかくあいつらがいい奴らだと証明しなくては…。
「だっ、大丈夫ですよ皆さん!!あいつらは俺の仲間ですから!!」
「なっ!!…仲間だと?」
「はいっ!その証拠に…おい、お前らこっち来いよ!!」
ケル吉とスネ夫はのしのしと近寄ってくる。
「ひぃぃぃい!!もう駄目だ…」
「使うしかないわね使うしかないわね使うしかない…」
なんか2人はパニック状態になってしまっているが、キースと呼ばれた男は鋭い目で2匹を捉えている。
「お前…失礼、貴方がケルベアーとヴェノムボアを使役しているのですか?」
「まあ友達みたいなもんだからな、使役というのはなんか語弊が…」
「そんなことができる人間…一体どれほどの力が、白金等級…いや最高位であるミスリル等級か」
「え?!なんか言いました?」
キースはぶつぶつ何かを言っているようだった。
「なんか暗くなってきたし移動しません?こいつらに乗ればすごく速いですよ?」
そう言って利央は定位置でもあるケル吉の上へとまたがる。
「こっ、殺されるぞっ!!」
「もういいわよね?使っていいわよね?」
「お前達!いい加減にしろ!…あれを見ろ、すぐに攻撃してくるって訳でも無さそうだ…。とにかくあいつの機嫌を損なえば一貫の終わりだ、丁重にキャンプまで連れて行こう」
「げえ!!、キャンプに連れてくのか?」
「そっちの方が危険じゃないの?」
「うまくいけばケルベアーだけじゃなく、ヴェノムボアまで狩れるんだ、これはチャンスみたいなものだぞシャーリー」
「そ、そうね!これは白銀等級への近道ってことね」
「そうだ!…いいな?ドンファン」
「わ、わかった!!」
銀翼の鷲は決意を固める。
「おーい!!早く行きましょうよ!」
「は、はい!今行きます!!」
こうして1人と2匹の旅に3人の冒険者が加わったのだった。
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