第6章「伏兵」

利央たちの背後からは…




「はい!紹介しま〜す!こちら蜘蛛人(アラクネ)のアラちゃんで〜す!!」



「どうも…アラと申します…」



見た目は蜘蛛としか形容できない様な昆虫の足が生えた下半身に、美しい人間の女性の上半身の半人半虫とでも言うべき亜人が姿を見せた。



その美貌を持ちながらどこか自信なさげな表情は、彼女の性格を表しているようであった。





「亜人…だと?いつの間に、、、」




アンドレは相変わらず空中で身動き一つ取ることが出来ずにいる。




「まあまあアラちゃん、このハエに何が起きてるのか説明してあげてよ」




「はい魔王様…。実は魔王様と貴方が話している隙に私が糸…蜘蛛人が種族として生み出すことのできる糸を周囲に張り巡らせていました…」




「人外め。なんと姑息な…」




「それでアラちゃんの糸に…」




利央がそう言いかけたところで、新たな人物が背後から姿を見せた。




「私が魔力を乗せましたの」




現れたのは人間と変わらない大きさで、人間の様に顔や手、足があるのだが…




「貴様!その肌の色は…もしや!」




アンドレは何かに気づき声を荒げる。





「あら、お気付きかしら?流石は天使。古くから我々と争って来ただけのことはあるわね。そうよ、私は魔人よ」




海の様な深い青色の肌を持ち、他の種族から見ても圧倒的に美しい造形の綺麗な顔。そしてその自身に満ち溢れた表情は先程の蜘蛛人とは対照的であった。




「そうそう。こちら魔人の…」




「ミランダよ!!」




「…そ、そうだ!ミランダ姐さんだぞ!」




「魔の者まで魔王の元に…以前の魔王の際は魔の者とは敵対していたはず…何故だ!!何故魔王に肩入れする?!」




アンドレは相変わらず身動き一つ取れない状況で怒りの声を上げる。




「そんなの決まっていますわ」



ミランダは舐め回す様にして利央を見る。



「ひぃっ」



「魔王ちゃんに興味があるからよぉ」







「…」





「兎に角!この2人のコンビネーションでお前はまんまと罠に掛かった訳よ!この羽虫が!!」






「クソ!!力のある者に関わらず姑息な手を…正々堂々闘え無いのか貴様は!」






「闘え…無い!!!」




利央は自信満々にキッパリと言い切る。




「…」





「取り敢えずコイツをやってしまおう。ジーバ君はまだ合成獣とか言う奴と戦ってるみたいだし。援護に行くか」




利央がそう言いかけたその時








「フッフッフ。ハッハッハッハァー!!」





「えぇ?!いきなりどうした?!」





アンドレが大声で笑いだしたのだった。






「まさか魔人までが魔王に手を貸しているとは…少々甘く見ていたな。この私が奥の手を使わなければならないとは」




「奥の手?…なんか知ってるミランダ姐さん?」



「ん?さぁ?どうかしらね」



「む…」




最近魔王軍に入ったミランダだが、この感じは何か知ってる時に自分を見極めると言うか、からかうときに取る反応だと利央には分かった。




「あっ糸が…」



アラちゃんの悲痛な声の通り、アンドレを拘束していた糸が一本、また一本と切れて行く。




「えぇ?!なんじゃあれ?!」





見るとアンドレの身体が次第に巨大化して行っているところであった。

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