第2章「城の住民」
「…でかいな」
城は非常に大きく、全ての部屋を調査するのに普通の人間…亜人ならば丸一日はかかるだろう。
しかし魔王様によって新たな力を与えられた我々、ブラックゴブリンにとっては非常に簡単な仕事だ。
ゴブ一郎は得意げな表情を浮かべ、彼の配下のゴブリンに命令を与える。
「魔王様の命令はこの城の調査だ!千年もの間放置されていたんだ、魔王様の居城に居座る不届き者がいる可能性が高いが、慈悲深い魔王様は殺さずに捕らえろとおっしゃった。お前達、速やかに魔王様の命令を遂行するぞ」
「はっ!!」
ゴブ一郎は50人以上いる配下の中から特に能力の高い10人を選抜して、任務に当たらせている。
速やかに命令を遂行し、魔王様に私の指揮能力をお見せできれば…。
戦闘力ではケル吉様とスネ夫様には到底及ばないので、私は私なりの存在価値を魔王様に証明しないとならないのだ。
ゴブ一郎は緊張と野心に満ちた複雑な表情を浮かべ、クーズー城へと入って行く。
城の中はどの部屋も千年前の物とは思えないほど綺麗だった。これも魔法の力なのか…。
こんな私も魔王様のお陰で魔法を操る事が出来るようになったが、魔法とはやはり非常に便利な物であるな…魔王様には感謝してもしきれない。
ゴブ一郎が利央への感謝を感じていると城の最奥部から
「ギャァァァァア」
と配下のゴブリンだろうか、断末魔の叫びが聞こえてきた。
ゴブ一郎は急いで悲鳴の聞こえてきた大広間のような場所に駆けつけた。そこには既に配下のゴブリン達が集まっていて、3人の配下が倒れていた。
そして配下のゴブリン達はある方向に向かってしきりに威嚇するような声を飛ばしている。
ゴブリン達の目線の先には…
「フォッフォッフォッ、ぞろぞろと人の家に入ってきて無礼では無いですかな?」
ボロボロのローブを羽織り、頭には大きな宝石のついた立派な王冠。軽快な口調とは裏腹に聞き取りづらいしゃがれ声…
「アンデットか?!」
「その通りだよ!ゴブリンの長よ」
ゴブ一郎の方を向いたアンデットの顔は人間の頭蓋骨が剥き出しの状態で、カタカタと口を動かして声を出しているようだった。
ゴブ一郎は生涯で一度だけアンデットと遭遇した事があったのだが、その時はたった1人のアンデットに500人はいたであろう当時いたゴブリンの集落が壊滅に追い込まれたのを鮮明に覚えている。
ゴブ一郎の知る人型のアンデットは火を扱う魔法を得意としていて、遠距離から一方的に魔法を放たれたため、当時はなすすべも無かった。
目の前にいるアンデットも当時出会ったアンデットに似てはいるが…。
「それで珍しき黒きゴブリンよ、我の家に何用かな?」
「…この城は今日から魔王様の居城となる。したがって貴公には我らの軍門に下るかここから去ってもらう」
「ほう、それはまた暴論であるな。我はこの城に住み続けてもう300年にはなるが…お前のような者は初めてであるぞ」
2者の間に緊張が走る。ゴブ一郎はいつ戦闘が始まっても良いように身構えた。
「フォッフォッ、まあ焦るで無い。誰かと会話するのが久々でな…普段は暇で仕方がないのだよ。…魔王と言ったな?とにかくその者と話がしてみたい」
アンデットとの力量差がどれ程のものかは判断がつかないが、決して弱く無い配下のゴブリンが3人倒れているのを見ると私では恐らく勝てないか…。
「いいだろう、魔王様にお前を会わせる…」
「フォッフォッフォッ、理解が早くて助かるぞゴブリンの長よ。それと私の名前はジーバ。リッチのジーバである」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます