第3章「幹部と幹部」
暇だなぁ…。
利央はあまりの静けさに退屈を感じ始めていた。
ゴブ一郎達は連携を取りやすいということで広範囲をカバーして墓地の全域を警戒しているが、俺を始めとしてケル吉、スネ夫、チャカの3匹はこの一本道…トイエスへと通じる道だけを警戒しているのだが…。
だーれもこない!!
来たら来たで面倒な事になるのも嫌だし、来なかったら来なかったで暇すぎる!
まあジーバ君は30分くらいで終わるって言ってたし、もうすぐか。
利央が子供のように理不尽な不満を思い浮かべていると…
「シャァァァァア!」
「バウゥゥゥ!!」
ケル吉とスネ夫が騒がしくなった。
…チャカはほぼ寝てるような感じで、微動だにしてないが…。
「どうしたーお前たち…!!なんか来たな」
前方から金属と金属がガシャガシャとぶつかり合う音が聞こえてきた。
そして数十人はいるだろうか、鎧に身を包んだむさ苦しい男たちが目の前まで迫って来た。
「止まれっ!!…ケルベアーにヴェノムボアか…お前が最近王都を騒がせた闇の魔法使いか??」
巨大な剣を背中に背負い、重厚感のある鎧に身を包んだガテン系のおっさんが、どうやら俺を知っているみたいだ。
「おっ!俺のこと知ってるんですか?」
「ああ、お前は有名人だぞ?…それであの光は何だ?何をしている?!」
「いやぁ…そう言われて、はいっ!私たちはこれこれこういうことしてますっ!…って答える人はいないと思いますよ?」
「ふっ、まあそうか…。我はナオス騎士団で幹部を務めさせてもらっているスティーブンという…。力ずくで聞き出させてもらうぞ!!」
鎧のおっさんはやる気満々で巨大な剣を構えるが…
「スティーブン隊長!ケルベアーにヴェノムボアなんて、我々の手には…」
「チッ!!…何を言っているお前たち!!こいつがやっている事は間違いなく王国にとって良くない事だぞ?」
「しっ、しかし…」
彼の部下は戦意を喪失してしまってるようだ。
「可哀想に…まあ、それなら一騎打ちで決着をつけますか?」
「何?!…いいのか?」
「ええ、良いですよ。但し、負けたら帰ってもらいますからね」
「すまない…恩にきる!!」
このおっさんは少し脳筋過ぎるな…。
「よし!軽くひねってやれスネ夫!!」
「シャァア!」
利央は当たり前のようにスネ夫に命令を下す。
「まっ、待て!お前が来るんじゃないのか?!」
「そんな事は一言も言ってませんが??あっ、スネ夫の毒はかなり強力なので気をつけて下さい」
スティーブンは覚悟を決める。
「くっ、クソォ!!行くぞーーー」
「隊長!!!いけぇー!!」
戦いは瞬時に決着がついた。
「がはぁ!!!」
「隊長ーーーーーーー!!!」
スネ夫の牙が軽く掠ったスティーブンは、いきなり苦しそうに倒れたのだ。
「あーあ、早く治療しないと死んじゃいますよ?」
「クソ!!覚えていろ!!魔王め!!!」
部下の騎士たちがスティーブンを抱えて、街の方へ帰って行く。
「瞬殺だったなスネ夫!!よしよし!」
「シャア!」
撫でてやると、スネ夫は嬉しそうに鳴く。
「なんかあのおっさん幹部とか言ってたな…あれが幹部なのか…」
正直うちの幹部、こいつらにジーバ君、ゴブ一郎と彼では勝負にすらならないな…。
まあこの調子で戦力を集めていけばニート生活は安泰だな!
「リオ様!!ジーバ殿の儀式が完了したようです」
「おお!ゴブ一郎!さんきゅう、今行くわ」
利央たちはジーバ君の元へと向かった。
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