第3章「スケルトン軍団」


見渡す限りの骨…



自分の人生で、数万の骨に囲まれることがあるなんて予想できるだろうか?…いや、できないね。





儀式が完了したらしく、広大な墓地に溢れるほどのスケルトンが直立しているのが見える。





「お疲れジーバ君!!いやー、それにしても凄いねこれ」



「お!リオ様!ちょうど終わったところですぞ!!、本来であればもっと時間がかかる予定だったんですが、シャーリー殿のお陰でだいぶ早く終わりましたぞ!!シャーリー殿はなかなか凄いですな」



「そんなことないわ。ジーバさんの高度な儀式は私にはとてもじゃないけど真似出来ないもの…。私は魔力を補助しただけよ」



「すげえなシャーリー!ジーバ君のお墨付きかよ!」



「や、役に立ったかしら?」



シャーリーは頬を赤らめ、照れながら聞いてくる…。うーん!!可愛すぎる!!!



「お、…おう!」



「なら良いんだけど…」



余りの可愛さに照れてしまい、変な感じになってしまった。




そんな中ゴブ一郎の部下のゴブリンが慌てて駆けてきた。



「リオ様!!遠方から人間の軍隊らしき一団が接近しています!!」



「まじか!!よーし…じゃあ撤退!!撤退するぞー!!」



「リオ様?このスケルトン達を使えば容易く迎撃できるのでは?」



「ゴブ一郎…、それはもっともな意見だが…。それではスケルトン達に損害が出てしまうだろ?」



「リオ様?!まさかスケルトン達のこともそんなに大切に思っているなんて…」



ゴブ一郎は目を濡らす。








いやー…単純に1日に5体しか作れないのにこんなとこで無駄に減らすのが嫌なだけなんだけどな…スケルトンってクソ弱いし。それよりも労働力として使った方が俺のニート生活の完成も近くからなんだけど…まあ、いっか!




「そうだ!!お前達は俺の宝!!!それはスケルトンも一緒なのだよ!!」



「おぉ!!」



「流石ですなリオ様」



「貴方ってアンデットに対してそこまで考えているの?…恐れ入ったわ」



「流石でございますリオ様!」




相変わらずヨイショがうまい奴らだ!

とても気分が良い!!!




「よし!!じゃあバレないように撤退!!…いや、バレるだろうけど撤退するぞー!!」



数万のスケルトンはカタカタと一斉に動き出したのだった。






















「なんだろうねこの足跡は…」



利央達が去った後の墓地には無数の足跡…それに



「ハンス団長!!ぼっ、墓地の死体が…ひとつもありません!!!」




ナオス騎士団団長、ハンスはその聡明な頭を用いて即座に仮説を立てる。



「…死霊術か?」



死者を冒涜する魔法として王国内では禁術に指定されている魔術だが…。



「リア君!あの男の周りに人間がいたりしないかい?」




ハンスの隣には、隊長へと昇格を果たしたリアがいた。




「いえ団長…私が見た限りでは魔獣を引き連れているだけでしたが…」



「そうか…。死霊術…ミーシャ家の人間でもいるのかな…」



ハンスには他にも気になる事があるようで




「それに死霊術では1度に多くても数体のアンデットを作るのが限界だったはず…この広大な墓地に一体どれだけの死体があったと思う?」



「数千はあったのでは無いでしょうか?」



「そうだよねリア君!!今朝の段階では異常が無かったと衛兵も言っているし…。そう考えると1度に…それも光が見えていたという僅かな間に全部の死体をアンデットに変えちゃったって事になるよねぇ?」




何故この男はこんなにも他人事のように面白ろそうに考えているのだろうか…そういった気持ちを押し殺してリアは答える。



「ですがそのような事は…人間には不可能です!」



「そう!!そこだよリア君!!!人間には無理でも…人間以外なら?例えば…"リッチ"や"ヴァンパイア"なんかの強力なアンデットだとしたらどうだい?」


「で!…でも!!」


「スティーブンの部下の証言から、今回の件はあの闇属性魔法を使う男の仕業である事には間違いないだろう。あの男ならそんなアンデットも配下にいておかしくないのではないかね?」


「しっ、しかしそのような強力なアンデットが都合よくいるとは…」


「まあ、僕だってあくまで推測に過ぎないよ」




そんな恐ろしい事があって良いはずが無い!ただでさえ一国を滅ぼすとさえ言われているリッチなんかがあの男に協力するなど…





考えただけで恐ろしい。


そんなことにならないように、あの男が力を蓄える前に討たなければならないのだが…。




「とにかく、あの男は数千以上のアンデットを手に入れたということでしょうか?」



「そう考えて間違いはないと思うよ」






また一歩、あの男は魔王に近づいたという訳か…。

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