第6章「合成獣」
「人間が…喰われてんの?見た目は??」
強烈なワードを発している利央であるが、その内情は至って冷静であった。
「何なら大きめな獣のような見た目をしておりましたな」
「獣?…魔獣の類だったら仲間にしてもいいかもな。部下たちの敵を打ってくれてるわけだし」
「兎に角、我々も入って見ますかな?」
「そうだな…ゴブ一郎!!降りてきて!」
闇属性魔法の能力によって念話のようにして会話をする事が可能であるが、利央はそれではつまらないと言って離れている場所であっても声を出すようにしている。
(この場合は能力が無いと聞こえない距離であるが…)
そして、しばらくしてゴブ一郎が都市の上空から降りてきた。
「防壁の上に人影はありませんでした。それに天使と思われる敵影も」
一頭で奴隷数十人分の価値があるとされている非常に珍しい空飛ぶ魔獣であるペガサスを撫でながら、ゴブ一郎は身軽に飛び降りる。
「そうか、ご苦労さまゴブ一郎。なんでも人間が喰われているらしいから様子を見に行くぞ」
「人間が?!…了解です」
ゴブ一郎も驚きはするものの普段通りの姿勢を崩さない。
ゴブ一郎の反応はこの世界においては至って普通の反応である。
強力な魔獣や亜人が蔓延るこの世界において、種族的な弱者である人間が食物連鎖の下位に位置していてもなんら不思議では無い為である。
そして3人はジーバ君が唱えた音や気配を消す魔法で身を闇へと隠しながら都市内部へと入っていく。
「確かこの辺りだったはず…あっ!あそこですな」
ジーバ君の指差す方向には主人の到着を待っていたスケルトンウォリアーがいた。
「こいつが偵察用の…それで、人間を喰ってるって奴は…あいつだな」
人の気配が消えた都市の中から聴こえてくる人間の悲鳴。
「きゃぁぁぁあああ!!」
そして悲鳴が聞こえなくなると、次に聞こえてくるのは…
「バキバキバキバキ」
骨が砕けているような粉砕音。
そして利央たちの視線の先には、血まみれの"何か"を頬張る獣の姿があった。
「あれは…魔獣?ですかな??見たことの無い種族ですが…」
「あの獣、顔がたくさんついてますが…」
ゴブ一郎の言葉通り、利央たちの方へ向いた獣には蛇の頭や猛禽類の頭、更にはケルベアーの頭の様なものが付いていた。
「なんだあれ…手や足もめちゃくちゃだな。色んな魔獣の物が無理矢理くっ付けられてるみたいだな」
「生き物の合体版とでも言いますかな」
そしてその獣は3人目掛けて突進を敢行するようで、種類の異なる足を不規則に動かして近づいて来るが…
「?!早いですね」
「だね…兎に角、使って見るか」
利央はそう言うと、いつもの様に闇属性魔法を使用する。
今までありとあらゆる生き物…人間以外全ての生き物を手なづけることの出来た魔王たる所以の一つを。
利央から生まれた黒いモヤモヤは、一直線に獣に向かって飛んでいき、そして…
「何?!消えた…の?」
闇属性魔法は獣を包もうとして広がりながら獣に迫った後、異常な光の発光によって消滅したのだった。
「無駄だぜ!!…セオス様の生み出した合成獣(キメラ)には効かないさ」
「誰だっ?!」
聞きなれぬ声にゴブ一郎がいち早く反応する。
3人に向かって声をかけた人物は、3人の上…純白の翼を用いて上空を飛んでいた。
若い男の風貌に特徴的なドレッドヘアーの天使であった。
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