第6章「偵察」

「…クソがっ!!!!!」




利央は怒りのあまり、近くの木に向かって己の魔力をぶつける。




「リオ様…」



「くっ!…」




王国南部都市モルガンに辿り着いた利央たちの目前に広がっていたのは、数え切れないほどの魔王軍兵士の死体と血生臭い戦いの跡であった。



利央の後ろに控えるジーバ君とゴブ一郎の表情にも、やるせない怒りの感情が見て取れる。




「リオ様…気持ちはわかりますが、ここは抑えてくだされ」




「なんでだよジーバ君!!こいつらみんな俺の部下だったんだぞ?!?!」




「リオ様!!また暴走されては困るんですぞ!!!今のリオ様が暴走されては、我々には止める事は…。シャーリー殿も居ませんし」



「!!…ごめん」




利央は自分の過去を恥じ、素直に謝罪をする。




理性を失い、殺意に支配され、己の手で部下を危険に晒したあの失態は普段何も考えずに過ごしている利央にも忘れる事のない出来事である。




普段と違う利央の様子に2人も若干の困惑を見せる。





「兎に角、敵の様子を伺いましょう。スケルトンウォリアーを送ってみますぞ、彼らの視界を私の視界と同期して…」




「あの骨の戦士ですか…そのような使い方があるとは…」



感心するゴブ一郎を他所に、ジーバ君の操るスケルトンウォリアーが巨大な防壁に守られた都市へと接近していく。




「それにしても…でかい防壁だな。魔法攻撃も防ぐ結界付きとなるとかなり厄介か」




「ですな…ホー君殿が斬り込みたくなる気持ちも分かりますぞ」



「はい…」





そして偵察用のスケルトンウォリアーは戦場となった防壁の前を進んでいく。




「おかしいですな…逃げ帰った者の話では都市からの砲撃があったはず…」




しかしスケルトンウォリアーが攻撃される気配はなく、都市からの反応も無い様子である。



「どうなってんの?!天使が出てくる筈じゃなかったっけ?」



「その筈ですが…」





とここで



「私が様子を見てきます」




「ゴブ一郎…気を付けろよ!!無茶したら許さないからな!」



「はい!!」




そしてゴブ一郎はペガサスに跨ると、都市の上空まで一直線に飛んでいく。




「あのバカ…」



「フォッフォッ、全く…無茶をしますな」





ゴブ一郎は巨大な都市を大きく旋回するように飛んでいるものの…




「反応が…無いね」



「これは、いよいよおかしな状況になってきましたな。スケルトンウォリアーを都市内に入れますぞ」



「頼む」




そしてジーバ君と視界が同期されているスケルトンウォリアーは、巨大な門の脇にある門番用の通路らしき場所から都市内部へと入る。




「どう?ジーバ君」



「おかしいですな…人一人おりませんぞ」



「そんな馬鹿な、こんな大都市だで?!…もういいジーバ君!俺らで直々に乗り込んで…」



利央がそう言いながら歩き出そうとしたその時



「待ってくだされリオ様!!!!!!」



「?!?!どうした?!」




ジーバ君は大声で叫ぶと、続けて…





「に、人間が…喰われていますぞ…」




「は?!?!?!!」

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