第2章「露見」
なんだあの見るからにやり手っぽいおっさんは?
それに俺が"見せかけの英雄"だと?!
…
バレてる。
なんであのおっさん…ピーターとか言ったか?は俺の事を見抜いてるんだ?
同格くらいの強さがありそうなヴォルフとか言う人は気づいてなさそうなのに…。
そうそう、最近生き物がどれくらい強いというかオーラというか…がなんとなくわかるようになってきた。
初めてヴォルフって人を見たときにはこいつヤバいなってのがすぐ分かったし、チャカを見た時もそうだった。
これが闇属性魔法の力の1つなのだろか?…帰ったらジーバ君に聞いてみよっと。
…じゃなくて!今はそれどころじゃない!ピーターとか言う奴が殺気まんまんで近付いて来てるんだけど!!怖い!めっちゃ怖いんだけど!!
(お前ら!来てくれ!!)
心の中でケル吉達に呼びかける。
これも最近できるようになった事なのだが、念話とでも言うのだろうか?心で思った事がケル吉達には通じるようなのだ。
チャカはまだ無理なのだが、ケル吉とスネ夫には以心伝心的な事が出来るようになった!
いやー、便利便利。
ケル吉とスネ夫が利央の両脇を固めるようにして、警戒を強める。
並みの人間なら本能的に恐怖を抱いて当然のケル吉とスネ夫を見ても、ピーターの歩調に変化は無い。
いや…やばいってあいつ!全然ビビってないじゃん!普通ケル吉とか見たら少し…というかめっちゃ怖くない?そんなんできひんって普通。
そんなピーターにある男が立ち塞がる。
「それ以上近づくな」
王国最高司令官ヴォルフ・ルドルフだ。
ナイス!!めっちゃナイス!そのやばそうな奴を止めてくれヴォルフ君。いや、ヴォルフおじさん。
「どいてくれヴォルフ。お前とやり合うのは少々骨が折れる…。少しばかり"英雄"の言葉を証明するだけだ」
「…それは出来ない」
「…そうか、ならば…いくぞ?」
圧倒的なオーラを放つ両者は、異常な速度で互いに剣を抜きぶつかり合う。
なんだあれ?…本当に人間か?
ヴォルフとピーターの撃ち合いは人間業とは思えなかった。
互いに必殺の剣撃を放つが、いとも簡単相手の剣を防ぐといった攻防が、1秒間の間に2、3回は行われている。
いやー、やばいなあれは。俺だったそれこそ秒でノックアウトだな。
そんな人間離れした両者がぶつかり合う中、コスプレ少女がこちらを睨んでいるのが見えた。
ええ?俺悪くなく無い?普通に国民が悪くない?なんで俺睨むのあの子は…
「…くま」
ん?コスプレ少女が何か言っている。
「…あ…くま」
そして俺を指差して
「…悪魔!!」
と大きな声で叫んだのだ。
そんな様子を見たヴォルフは驚きを隠せないといった表情を見せて、リアの方を呆然と眺める。
しかし、人間離れした相手にその隙は余りにも大きかった。
「ヴォルフ?!やはりお前まだ…しかし、すまないな」
ピーターは峰打ちでヴォルフを気絶させたようだ。
まじかよ!!最後の砦のヴォルフおじさんが…。
かくなる上は…
逃げるしか無い!!!!!!
クズの決断は…利央の決断は早かった。
「チャカ!!!」
利央が強い口調でチャカを呼ぶと、普段ののんびりした様子のチャカから一変して、エネルギッシュな動きで利央の元までチャカが来る。
「逃すか!!!」
ピーターはありえない速度で利央に迫る。
やばい!!追いつかれる。
…しかし、ピーターの狙いは利央では無く
!!こいつ!ケル吉とスネ夫をはなから狙って!!!
ピーターの攻撃を受けたら、いくらこいつらとは言え重傷を負うに違いない…
利央は迷う事なく、闇属性魔法を発動させる。
手に黒い球体…禍々しいオーラを放つ、小さな闇を生み出すと、ピーターに向けて放った。
ふざけんな!!仲間に手出して無事で済むと…?!?!
ピーターは俺から魔法が放たれた事を確認すると、ニヤリと笑みを浮かべた。
なんだこいつ?!まるで俺から魔法を引き出すために行動したかの様に…!!
やばい!公衆の面前で闇属性魔法を使ってしまった!!
時既に遅し、闇属性魔法は数万人の王国民が見守る広場で炸裂したのだった。
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