第13話「Alarm Clock」


ある日、20代くらいの男性が来店した。

時間は午前6時過ぎくらいだ。

朝、スズメがチュンチュンと挨拶を交わす時間である。

この時、店は暇で暇で他に客はいなかった。

相方はウォークインという飲み物が陳列された冷蔵庫で作業をしていた。

その男性客は眠い目を擦りつつ、携帯電話の充電器コーナーへと進み、商品を吟味し始めた。しかし、あまりに種類が多いせいか、男性は渋い顔をしたままだった。




コンビニの充電器はとても種類が多い。

例えば、充電済みですぐに使用できる乾電池タイプの物もあれば、家のコンセントで充電しないと使えないものもある。iPhone専用、Android専用等々。

おまけに値段も高く、中には2000円を超えるものもある。

万が一自分の携帯と合わなかった場合は最悪だ。

なにせ、開封後の返品は不可である。

正直、筆者も充電器関連はよくわからないのが本音だ。

購入するにしてもショップかヨドバシカメラに行くのでコンビニで充電器は買わない。さて、筆者は他にすることもなかったので男性をじっと見守ることにした。

以前、充電器が万引きされた事もあるのでその警戒の為だ。

男性は尚も吟味を続け、時には商品を手に取り、裏面を見たりして考察していたが…。




それから10分ぐらいが経った。

男性は購入を諦めたらしく、絶望の表情をしていた。

まるで世界が今日終わってしまうかのような不安と憂鬱を抱えた表情だった。

彼は何も持たずにレジに来た。

そして、こう言った。




「すいません、目覚まし時計は置いてませんか?」




「いえ、そういうのは置いていません」




男は「そうですか」と言って残念そうに去っていった。

というかさ、うちは家電量販店じゃないからさ。

大きいスーパーとかならあるだろうが、コンビニに目覚まし時計は見たこと無いが。

まあ、筆者が知らないだけで巨大なコンビニならあるかもしれない。

さて、彼は何故、充電器を求めていたのだろうか。

ちょっと推理してみた。




充電器が必要という事は、恐らく彼の持つ携帯電話は既に電池が切れてる(切れかかっている)可能性が非常に高い。加えて目覚まし時計を求めるということは、恐らく携帯電話のアラーム機能を利用していつも寝起きしているだろう。家の充電器は壊れているのか、紛失したのか。焦った彼はコンビニに来たものの、種類の多さと値段の高さ、おまけに睡眠不足が足かせになり、購入を断念したという事だろう。




携帯のアラーム機能は筆者にもお世話になっているので想像に難くない。家電量販店やスーパーに行けばいいじゃんと思うが、ああいう場所は午前10時もしくは11時くらいじゃないと開かない。多分、その時間までには起きなくてはならないのだろう。学校か仕事か知らないが、なんとも可愛そうである。

充電器はぐるぐる巻きにしておくと寿命を縮めるらしい。

皆様はこんな事にならないよう、お金に余裕がある時にでもストックの充電器を買い足して一つは家に置いておくといいと思う。

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