第18話 多階鉄道(後前後前編) (10↑↑20(前編))

〔次は、アイコサログ、アイコサログです〕

『アイコサログは、10↑↑20です。10の指数が20段積み重なった数です』


テトレーションはわかるのだが、眠い。とにかく眠い。今は何時なのだろう。そもそもこの世界に時刻の概念はあるのだろうか。鉄道が通っているのだから、時刻の概念くらいは浸透しているのだろう。とりあえず彼女に聞いてみよう。


「ところで、今の時刻はわかりますか」

『はい。今は、24日の0デサー73ミラーです』

しまった。こっちでは時間の単位が違うから、これが何時何分かわからない。それを確かめるためには・・・こう聞けばよさそうだ。

「それは、一日のうちの何割が過ぎたところですか」

『1日は10デサー、1デサーは100ミラーなので、0.の後にデサーとミラーの数字をつなげるとそのまま割合になります。今は0デサー73ミラーなので、一日のうちの0.073が終わったことになります』

0.073ということは、0.073%か。今日が始まったばかりということは、真夜中じゃないか。これが何時何分に相当するか計算してみよう。

0.073日=0.073×24時間=1.752時間 → 1時の0.752時間後

0.752時間=0.752×60分=45.12分 → 45分の0.12分後

つまり1時45分ということだ。それなら眠いはずだ。僕も不規則な生活をしていたとはいえ、1時半には寝るようにしている。それなのに今はよくわからないまま飛ばされてきた世界で数学を勉強している。

それから、一日の長さが地球とこの世界とで違うかもしれないから、それも計算しておきたいのだが、眠くなってきたので明日の僕への演習問題とする。とりあえず、1ミラーが70~90秒くらいだということは経験的にわかっているのでそこから簡単な計算で導けるだろう。


「そろそろ、寝かせてください」

『ねかせて、とはどういうことですか』

「ここに横倒しになって、休憩したいという意味です」

『休憩だったら、次の駅を降りたところにいい場所があります。あの場所なら、横倒しでも大丈夫だと思いますよ』

「だったらそこで寝かせてください」

『わかりました。そうしましょう』


そして僕たちはアイコサログ(10↑↑20)で降りて、休憩所のような場所に入った。

『ここなら横倒しになれると思いますよ』

そう言って、彼女はベンチを指さす。確かに僕に丁度いい大きさだ。

「だったら、寝かせてください」

『わかりました。次の列車が来るのは80ミラー後なので、それまで休憩してください』

80ミラーというと、80分より少し多いくらいか。さすがに少なすぎる。今日はいろいろあったし、6時間は寝たい。

「80ミラーではなく、300ミラーくらい寝たいのですが」

『300ミラーというと、3デサーもここにいるのですか?列車が行ってしまいますよ』

「とにかく、300ミラー後よりも後の列車にしてください。今はここに寝たいので」

『わかりました。私たちの旅が少し遅れてしまいますが、そうしましょう』

「では、おやすみなさい」

『おやすみ・・・なさい?』

「僕は今から寝る、という意味です」

『わかりました。300ミラー経ったら、先に行きましょうね』

「はい・・・」


僕はそのまま眠りに落ちてしまった。

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