第3話 クラス1
『さあ、これに乗って、もっと先へ行きましょう』
僕たちは、そこにあったコイン型の乗り物に乗り込んだ。僕たちが乗った後、彼女は解説する。
『この機械は、
「6から7って・・・1増えただけじゃないですか」
『確かに、6から7のときはそうですが、素数というのは数が大きくなるにつれてだんだん稀になっていきます。つまり、数が大きくなればなるほど、次の素数は遠くなる、つまり遠くに行けるということです。』
「つまりこの装置は加速するということですか」
『簡単に言うとそうですね。では、一気に97まで行きますよ』
「97というと、2桁の最大の素数ですよね」
『その通りです。ではいきますよ。』
そういって、彼女はNPと書かれたボタンを何度も連打する。そのたびに、壁の数字が大きくなる。
7
11
13
17
僕は素数の定義を思い出す。
19
23
29
素数は、《1とその数でしか割り切れない素数》だった。
31
37
41
でも、1は違う。
43
47
53
数学の先生は素因数分解がどうとか言っていた気がする。
57
57
57
57
だが詳しくは覚えていない。
57
57
57
57
57
さっきから壁の数字が57で止まっているが、何があったのだろうか。
『なぜでしょう・・・57で動かなくなってしまいました』
「一体、何が起こったんですか?」
誰かが装置の扉をノックする。彼女が答える。
"こんにちは"
そこには、電気配線の工具と思わしきものを持った男性が立っている。
『あなたは、誰ですか?』
"私は、この装置への修正パッチの装着を担当している者です。実は、その装置はプログラミングのバグで、57でフリーズします。そのため、ここで修正を行って、もっと先へ進めるようにしています"
『では、お願いします』
僕たちは装置から降りて、その男性が装置に細工するのを見る。装置をノートパソコンにつないで、そのノートパソコンの画面上で修正を行っているようだ。プログラムが書かれているようだが、何の言語かまではわからない。ただ、括弧がたくさん使われているのが特徴的だということはわかった。
しばらく見ていると、今度は装置の内部にも何かを取り付けるようだ。装置とノートパソコンを交互に見ながら、さらにプログラミングを行っている。
"終わりましたよ"
改造は1時間ほどで終わった。内部を見ると、ボタンが1つ増えている。そのボタンには「p_n」と書かれている。男性がこれについて説明する。
"こちらのボタンですが、これを押すと現在の部屋番号番目の素数にワープします。例えば、今私たちは57の部屋にいますが、ここでp_nのボタンを押していただくと、57番目の素数である269までワープできます"
『わかりました。ありがとうございます。』
そういって彼女と僕は、装置に乗り込んだ。
『さっそく、p_nを押してみますか?』
彼女は自信げだ。
「ちゃんと、269に、行けますよね」
『大丈夫ですよ!さあ、もっと、速い旅をしましょう!』
そういって、彼女はp_nのボタンを押した。壁の数字は確かに269になっている。
『では、もっと先へ、行きましょう!』
彼女はボタンを連打する気だ。そのたびに、(部屋番号)番目の素数に行くはずだが、僕にはそれがどんな数字になるか見当もつかない。269番目の素数ですら、2度と使うことはないだろう。さらにその数字番目の素数となると、もう僕には桁数すらわからない。
『それでは、いつもの高速ワープタイム、いきますよ!』
彼女はボタンを連打した。壁の数字が徐々に大きくなる。
1723
14723
160483
2167937
僕にはこの数字がどのように増えるか見当もつかないが、どうやら1回押すごとに1桁増えているようだ。
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