第23話 矢印本線(前後編)
〔次は、デカタクシス、デカタクシスです〕
10↑↑↑10だから、10のテトレーションを10回重ねた数だ。もう大きさの見当がつかなくなってきた。
そういえば、現在地表示はどうなっているのだろう。僕は前のディスプレイを見る。
現在地: (10↑↑)^9 (10↑)^3 523
次の駅: 10↑↑↑10
停車まで: 2#11
矢印に累乗がかかっている。(10↑↑10)^9ならわかるが、(10↑↑)^9などという表記は見たことがない。彼女に聞いてみよう。
「あれは何ですか?」
『ディスプレイの表示ですか?』
「はい」
『あれは矢印表記の省略記法です。実際には、このような数を表しています』
彼女がノートに書き始める。このノートももう3分の1くらい埋まってきた気がする。
(10↑↑)^9 (10↑)^3 523 = 10↑↑10↑↑10↑↑10↑↑10↑↑10↑↑10↑↑10↑↑10↑↑10↑10↑10↑523
『このように、括弧の中を^の後の数だけ繰り返して並べます』
「わかりました」
矢印表記を展開すると長くなるから、この表記法は便利だ。しかし、Eで表す表記法はどこに行ったのだろう。
「Eで表す表記法はどうなりましたか?」
『確かにこの大きさの数に対応するE記法もあるのですが、小数との相性が悪いのであまり使われません』
そういえばE表記はE6.8#10のように1つ目の数が小数だった。多分この小数が整数でないと何か後で問題が生じるのだろう。
〔次は、ギャゴル、ギャゴルです〕
どうやらデカタクシスを通過したようだ。名前がタクシスで終わっていないということは、矢印とは異なる系列の数なのだろうか。彼女が解説を入れる。
『ギャゴルは、10↑↑↑100と表される数です。この数は、ヘクタタクシスとも呼ばれます』
やはり矢印3本なのか。右の数が100ということは、10のテトレーションが100段積み重なっているということだ。かなり大きな数になってきた。
〔まもなく、ギャゴル、ギャゴルです。ギャゴルを過ぎますと、グラハルまで約17ミラー間停車いたしません。〕
何か恐ろしいことが起こっているような気がするのだが、僕には何も理解できない。
『グラハルは、3↑↑↑↑3です。ここで、一般の矢印表記の定義をしてしまいましょう』
彼女は正気なのか。
(メタ著者注:最も正気でないのは登場人物にこんなことを考えさせている著者である。)
a↑b = a^b
a↑^n 1 = a
a↑^(n+1) (b+1) = a↑^n (a↑^(n+1) b)
『n本の矢印を、↑^nで表しました』
「具体例を見せてください」
『わかりました。では、3↑↑4を実際に計算してみましょう』
3↑↑4 = 3↑(3↑↑3) = 3↑(3↑(3↑↑2)) = 3↑(3↑(3↑(3↑↑1))) = 3↑(3↑(3↑3)) = 3↑(3↑27) = 3↑(7625597484987)=3^7625597484987
「なんとなくわかりました」
『別の例も出しますね』
10↑↑↑3 = 10↑↑(10↑↑↑2) = 10↑↑(10↑↑(10↑↑↑1)) = 10↑↑(10↑↑10) = 10↑↑(10↑(10↑↑9)) = ... = 10↑↑(10^10^10^10^10^10^10^10^10^10)
「理解出来ました」
『グラハルは、3↑↑↑↑3で表される数です。この数を展開すると、このようになります』
3↑↑↑↑3 = 3↑↑↑(3↑↑↑↑2) = 3↑↑↑(3↑↑↑(3↑↑↑↑1)) = 3↑↑↑(3↑↑↑3)
なんということだ。矢印3本の右側、つまりテトレーションの段数のところに、さらに矢印3本で表される数が来ている。もはや想像もできない数になってきた。
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