第25話 グラハム線(前前編)
『次は観光列車のグラハム線に乗ります。グラハム線は
オメガプラス1番線とはなんだろう。普通ホームの番号は自然数なのではないか。9と4分の3番線なら聞いたことがあるが、僕の知る限りそれはフィクションでの話だ。
(著者注: 0番ホームの問題を避けるため、特に断りのない限りこの章では0は自然数とする)
彼女が指差した先にあるものは、動く歩道である。片方の端は10メートルほど先に見えるが、もう一方の端は遠すぎて見えない。こういう場合には想像を絶する長さであるということは大体予想がついている。この世界はそんなものなのだ。
僕たちは動く歩道に乗り込む。
『しっかり手すりにつかまっていてくださいね』
彼女は手すりを抱くようにして持っている。僕もそれをまねる。
僕は周りの目が気になって、あたりを見回す。すると次の瞬間、
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
動く歩道が急加速を始めた。僕は大声で叫んでしまった。その様子を彼女が怪訝そうに見ている。
「こ、こういうものには、慣れていないだけです」
『動く歩道ですか?これから先は何度も乗りますよ』
こんなのが何回も来るのか。1回で十分だ。
『あれを見てください。景色が流れて行っています』
景色の流れるスピードがどんどん速くなっている。もはや今僕がどれくらいの速さで進んでいるのかもわからない。景色の色がどんどん混じって、白に近づいていく。ついに、文字通り目の前が真っ白になった。そして・・・
気が付いた時には、僕たちは動く歩道から降りていた。さっきまで乗っていたものも、ここからは見えない。一体何が起こったのか理解しがたいが、どこか遠くの場所まで来たのだろう。
『あのホームですよ』
彼女が指す方法を見ると、そこには階段と「ω+1」の表示があった。あの先にω+1番線があるのだろう。僕たちは階段を上っていく。
階段を上った先にあるのは、何の変哲もない島式ホームだった。ω+1番線という表示があり、時刻表が掲示され、ベンチに何人か腰かけている。ω+1番線の反対側にはω番線もある。ω+1番線の向こう側にはω+2番線が見える。どこまで続いているかわからないが、10本は通っているようだ。
しばらくホームを観察していると、電車が入ってきた。全体が緑に塗られ、白で書かれた「観光列車グラハム線」の文字が目立つ。6両編成で、僕の前には4号車が止まっている。
『では、乗りましょう』
彼女が後ろから声をかける。僕たちは一番近くの扉から観光列車グラハム線に乗り込んだ。
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