第35話 線形オメガ航空334便(前中編)
次に見えてきたのは、他の建物に比べてひときわ細長い建物だ。建物の中から光が出ているらしく、床には青い影が伸びている。
『あれはバドムですね』
僕が質問する前に彼女が答えた。
『急増加関数は、覚えていますか』
「なんとなく覚えています」
『もう一度定義を確認しましょう』
(著者注: これは読者のための確認でもある。なぜなら最後に定義を書いたのは6話前、日付にして8か月も前のことだからである。)
(29話からの転載(それ自身28話からの転載である))
n: 自然数
a: 順序数
f_0(n) = n+1
f_(a+1)(n) = f^n_a(n)
f_a(n) = f_a[n](n) もしaが極限順序数のとき
「思い出しました。たしか、f_(ω+1)(64)がグラハム数だったのですね」
『正確には違いますが、グラハム数はf_(ω+1)(64)で近似されます』
「それで、これがあの建物とどう関係あるのですか」
『バドムは、次の式で与えられます』
baddom = f_(ω+2)(10) = f^10_(ω+1)(10)
「これは、どれくらいの大きさなのですか」
『少しずつ見ていきましょう。f_(ω+1)(10)は、このように近似されます』
3↑↑...↑↑3 `
`----v----′ |
3↑↑...↑↑3 |
`----v----′ > 10段
: |
: |
27 ′
「急増加関数は、2を使って表されるのではないですか」
『はい。本当は2をベースにしていますが、10段ということが重要なので、2でも3でもそこまで近似がずれるわけではありません』
「わかりました」
『次はf^2_(ω+1)(10)です。f^2_(ω+1)(10)=f_(ω+1)(f_(ω+1)(10))なので、このように近似されます』
3↑↑...↑↑3 ` 3↑↑...↑↑3 `
`----v----′ | `----v----′ |
3↑↑...↑↑3 | 3↑↑...↑↑3 |
`----v----′ > `----v----′ > 10段
: | : |
: | : |
27 ′ 27 ′
『10のところが、f_(ω+1)(10)になったことに注意してください』
「矢印の段が、横に積み重なるのですね」
『はい。f^3_(ω+1)(10)だと、こうなります』
3↑↑...↑↑3 ` 3↑↑...↑↑3 ` 3↑↑...↑↑3 `
`----v----′ | `----v----′ | `----v----′ |
3↑↑...↑↑3 | 3↑↑...↑↑3 | 3↑↑...↑↑3 |
`----v----′ > `----v----′ > `----v----′ > 10段
: | : | : |
: | : | : |
27 ′ 27 ′ 27 ′
「もはや、想像もできない数になってきましたね」
『構造が見えるだけまだましですよ』
『同様に考えると、baddom=f_(ω+2)(10) = f^10_(ω+1)(10)は、このようになります』
3↑↑...↑↑3 ` 3↑↑...↑↑3 ` 3↑↑...↑↑3 `
`----v----′ | `----v----′ | `----v----′ |
3↑↑...↑↑3 | 3↑↑...↑↑3 | 3↑↑...↑↑3 |
`----v----′ > `----v----′ > ・・・ `----v----′ > 10段
: | : | : |
: | : | : |
27 ′ 27 ′ 27 ′
`-----------------------------------v------------------------------------′
10段
(著者注: 印刷するときはアスキーアートが崩れないように適宜調整してください。それが不可能な場合はTeXで作った図で置き換えても構いません)
「縦に積みあがったと思ったら今度は横に並びましたね」
『はい。その次はまた縦に、その次はまた横に、のように繰り返されます』
「何かとんでもないものを見ているような気がします」
『すぐにこの図も使えなくなるんですけどね』
僕はオーバーキルされた気分になったが、今考えなくても何が起こるかはすぐにわかるだろう。
また矢印のオブジェが見えてきた。「CONWAY'S TETRATET」と書かれている。そういえばさっきのバドムには、名前は書いてなかったな。名前の書いてある建物と書いてない建物、何か違いはあるのだろうか。
彼女が数についての説明を始める。
『あれはコンウェイのテトラテトです。コンウェイのテトラテトは、4→4→4→4と表される数です』
「矢印で表すと、どうなるのですか」
『少し計算してみましょう』
彼女はどんどん数式をノートに書く。
4→4→4→4
=4→4→(4→4→3→4)→3
=4→4→(4→4→(4→4→2→4)→3)→3
=4→4→(4→4→(4→4→(4→4→1→4)→3)→3)→3
=4→4→(4→4→(4→4→256→3)→3)→3
=
4↑↑...↑↑4 ` 4↑↑...↑↑4 ` 4↑↑...↑↑4 `
`----v----′ | `----v----′ | `----v----′ |
4↑↑...↑↑4 | 4↑↑...↑↑4 | 4↑↑...↑↑4 |
`----v----′ > `----v----′ > ・・・ `----v----′ > 4^4段
: | : | : |
: | : | : |
4^4 ′ 4^4 ′ 4^4 ′
`-----------------------------------v------------------------------------′
4↑↑...↑↑4 ` 4↑↑...↑↑4 ` 4↑↑...↑↑4 `
`----v----′ | `----v----′ | `----v----′ |
4↑↑...↑↑4 | 4↑↑...↑↑4 | 4↑↑...↑↑4 |
`----v----′ > `----v----′ > ・・・ `----v----′ > 4^4段
: | : | : |
: | : | : |
4^4 ′ 4^4 ′ 4^4 ′
`-----------------------------------v------------------------------------′
4↑↑...↑↑4 ` 4↑↑...↑↑4 ` 4↑↑...↑↑4 `
`----v----′ | `----v----′ | `----v----′ |
4↑↑...↑↑4 | 4↑↑...↑↑4 | 4↑↑...↑↑4 |
`----v----′ > `----v----′ > ・・・ `----v----′ > 4^4段
: | : | : |
: | : | : |
4^4 ′ 4^4 ′ 4^4 ′
`-----------------------------------v------------------------------------′
4^4段
(著者注: こんな巨大アスキーアートを投稿して運営に怒られたりしませんかね)
「何か・・・恐ろしいですね」
『このノートに書くには図が大きすぎますね。これからは急増加関数との比較をしていくことになりそうです』
「急増加関数なら、簡単に表せるのですか」
『正確に表すことはできませんが、急増加関数は簡単な表記で巨大数の大きさを近似するためのものさしになります』
「それは便利そうですね」
この巨大な図を簡単な表記にできるのだったら、ぜひともこれから使ってほしい。
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