概要
高官の娘で美貌を誇る仙月は、若年ながらいつか高みに飛翔せんと野心をたぎらせ、あえて宮女の道を選んだ。仕える相手は、絶大な権力を握る則天武后である。
彼女は武后の「狗」として宮中の暗闘に身を投じ、ときには手を血で汚しながら野望の階梯を這いあがっていく。
そして、遂には高宗の寵姫である姉の仙花と対峙するが…。
〔注記〕「小説家になろう」「マグネット!」「アルファポリス」「セルバンテス」との重複掲載です。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!結局の所、彼女は何を望んでいたのだろう?
武后に縋った願いを皮肉な形で成就させた彼女だが、仮に忌まわしいプロセスを経なくても、武后と対立しかねない願望を持続できたとは思えない。
歪んだ宮廷生活を送る間に正常な判断力を失ったものと思われる。
主人公と同様、歩むべき道を見失う悲劇が現実世界の我々に降り掛かる可能性だってあるわけで、一種の警告と解釈するべきなのか?
なぁんて堅苦しいレビューを書きたくなるくらい、中国の時代小説らしい文体で物語が進んで行くわけですよ。読み応え抜群です。
ところで、河合塾の講師が解説する世界史で勉強したんですが、唐が新羅と組んで百済を滅ぼし、その後に高句麗を滅亡させた大戦略の裏には高宗に対する則天武后の唆し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!野心と嫉妬、悲しみが渦巻く蓬莱宮
時は唐代。後に中国唯一の女帝となる則天武后が皇后だった時代。
野心的な二人の姉妹が、皇帝の寵愛を得ようと後宮に上がります。
首尾良く才人という位の妃となった姉を妬んだ妹は、皇后に仕え、姉を追い落とそうとします。
しかし、「皇后に仕える」ということは、必ずしも皇后に忠実であるというわけではありません。
皇后の側にいれば、皇帝の目に留まり、妃となる可能性もあるのです。
実際、皇后自身がそうやって前の皇后に仕え、主を追い落としてその座を得たのですから。
姉妹は、そして皇后は……。
12000字ほどの短編でありながらダイナミックな展開があり、ハラハラしながら一気に読めてしまいます。
少々難し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!女の妬心は底が無い!
質の高い、文章力が時代の空気感を醸し出す事に大きく作用した作品でした。
WEB歴史時代小説で、文章と時代がマッチした作品は実は少ないので、それだけでも、この作品の質と作者の力量が判ります。
気品ある文章と語彙は、大唐帝国の絢爛豪華な時代を現すには十分なもので、その知識量も圧巻の一言。物語性については、特に何も言う事がありません。
描写やセリフ、ストーリーも、女の世界を女で体験していない僕には、到底書けないなと思いました。まるで、化粧品の美容部員か保育園に於ける女社会の暗闘のようで、妬心からくる憎しみには、何とも息が詰まります。
ただ、主人公と姉の関係性を掘り下げれば、もっと怖さを感じた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!走狗の末路
唐の武則天の時代の後宮が舞台。
この時代に関する豊かな知識に裏打ちされているのだと思いますが、華麗な文章描写が大唐帝国の栄華を鮮やかに彩ります。
が、しかし。
後宮というのはハーレムですから、華やかな見た目とは裏腹に、内側では恐ろしい権力闘争があります。皇帝の寵愛を受けた女に対する羨望嫉視がおどろおどろしく渦を巻きます。
武則天というのは中国史上唯一女帝になった人物なわけで、当然、後宮の中でも最強であり最凶な人物。
本作の主人公は、その武則天の懐に飛び込んで行って成り上がりを目指す、というもの。
主人公が上手く立ち回って成功するたびに、次に起こる悲劇を予想できずにいる主人公の姿にやきもきしな…続きを読む