野心と嫉妬、悲しみが渦巻く蓬莱宮

時は唐代。後に中国唯一の女帝となる則天武后が皇后だった時代。

野心的な二人の姉妹が、皇帝の寵愛を得ようと後宮に上がります。
首尾良く才人という位の妃となった姉を妬んだ妹は、皇后に仕え、姉を追い落とそうとします。

しかし、「皇后に仕える」ということは、必ずしも皇后に忠実であるというわけではありません。
皇后の側にいれば、皇帝の目に留まり、妃となる可能性もあるのです。
実際、皇后自身がそうやって前の皇后に仕え、主を追い落としてその座を得たのですから。

姉妹は、そして皇后は……。

12000字ほどの短編でありながらダイナミックな展開があり、ハラハラしながら一気に読めてしまいます。
少々難しい言葉も出てきますが、漢籍の素養のある作者なので、無理をして難しい言葉を使っているようなノイズがなく、ストーリーに入り込んでしまえば全く問題がありません。

しかし、是非、再読をお薦めしたいのです。
最初に読んだ時は姉妹の運命や如何に!?と心臓バクバクしながら読みましたが、しばらくおいて再読してみると、皇后にまつわるある場面、怖いと思ったある場面が、とても哀しく思えました。

自分が再読するくらいなので、是非、多くの方に読んでもらえたらと思います。

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