螺鈿の鳥

作者 結城かおる

48

16人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

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質の高い、文章力が時代の空気感を醸し出す事に大きく作用した作品でした。

WEB歴史時代小説で、文章と時代がマッチした作品は実は少ないので、それだけでも、この作品の質と作者の力量が判ります。
気品ある文章と語彙は、大唐帝国の絢爛豪華な時代を現すには十分なもので、その知識量も圧巻の一言。物語性については、特に何も言う事がありません。

描写やセリフ、ストーリーも、女の世界を女で体験していない僕には、到底書けないなと思いました。まるで、化粧品の美容部員か保育園に於ける女社会の暗闘のようで、妬心からくる憎しみには、何とも息が詰まります。

ただ、主人公と姉の関係性を掘り下げれば、もっと怖さを感じたと思います。姉妹の歪んだ情念があればこそ、ラストシーンが栄えると思いました。兄弟も親子も、身近だからこそ憎しみの蓄積も人一倍。ならば、そのバックボーンは何処にあるのか? それがもっと知りたかった。この物語に於ける楽しさの原動力は、主人公の情念にあると感じましたので。

さて、歴史時代小説の楽しみ方は千差万別。新しい知識を入れる事を楽しむ読者もいれば、単純にエンターテインメントとして楽しむ事が目的の読者もいます。
この物語は、特に前者向けではないかと思いました。良く言うと、よく調べよく書かれています。言葉選びに時代の空気感も十分に出ていますし、僕も勉強になりました。
しかし、一方で「もっと簡単に表現してもいいのでは?」という疑問も湧いてきます。
判りやすく注も付けているのは凄く有り難く勉強になりますし、著者の中国世界への並々ならぬパッションを感じますが、それにより物語が分断される恐れもあります。特にエンタメ作品として物語に没入したいと思う人には、そのポイントが少し注が多いと感じました。
しかし、これは完全に好みです。司馬遼太郎や和田竜のように、史料紹介を入れる作者がいる一方で、そうしたも…続きを読む

★★★ Excellent!!!

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唐の武則天の時代の後宮が舞台。
この時代に関する豊かな知識に裏打ちされているのだと思いますが、華麗な文章描写が大唐帝国の栄華を鮮やかに彩ります。
が、しかし。
後宮というのはハーレムですから、華やかな見た目とは裏腹に、内側では恐ろしい権力闘争があります。皇帝の寵愛を受けた女に対する羨望嫉視がおどろおどろしく渦を巻きます。
武則天というのは中国史上唯一女帝になった人物なわけで、当然、後宮の中でも最強であり最凶な人物。
本作の主人公は、その武則天の懐に飛び込んで行って成り上がりを目指す、というもの。
主人公が上手く立ち回って成功するたびに、次に起こる悲劇を予想できずにいる主人公の姿にやきもきしながら、盛り上がっていって最後に……というしっかりした構成の物語を楽しめます。

★★★ Excellent!!!

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中国史はさっぱりですが、するすると頭に入ってきました。また、中国史のイメージ通りに女のドロドロが楽しめます。
地位を得たいがために他者をから落とすことは非情でしょうか。ええもちろん。
自分の愚かさに耐えられず、神に縋るのは軽薄でしょうか。そうかもしれません。

ただ、どこかでくすぶる嫉妬心、栄華による蔑み、ただ信じているものを神格化することは、誰しもが___程度はどうであれ____経験したことがあるのではと思います。

★★★ Excellent!!!

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 見慣れない語彙には注が用意され、登場人物と舞台も少ない。
 文字数も一万二千字未満で手軽に読める分量。
 それでいて、作者さんの筆力のおかげで、則天武后の恐ろしさや宮廷・後宮の雰囲気をしっかり味わえる。
 歴史時代小説を気軽に味わうための小説と言っても言いすぎではない作品です。

 作品世界の空気を感じられたなら、そこには新しい楽しさが待っています。歴史時代ジャンルを食わず嫌いで避けて来た方には是非触れて頂きたい。 

 

 

★★★ Excellent!!!

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妬み、讒言、陰謀、暗殺、惨劇……中国、則天武后の時代を舞台に繰り広げられる人々の思惑。
情景や服飾の描写が非常に優れており、きらびやかなイメージがしっかりと浮かびます。
華麗な宮廷を舞台にしていながらその惨劇と情念の苛烈さ・醜さがよい対比になっていて、終盤へのいいアクセントになっています。

いや、中国の宮廷って本当に怖いですよねえ(汗)

★★★ Excellent!!!

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武則天という人物の恐ろしさを見事に活写している作品です。
この人のことは単に上昇志向が強いとか、政敵には容赦がない、といった言葉では捉えきれないものがあります。
この比類なき女傑がときにある種の弱さも垣間見せつつ、そして繰り出してくる最後の一撃。
これはもはやホラーでしょう。
ずっしりと重い読みごたえのある一作です。

★★★ Excellent!!!

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決して長い物語ではない。
あたかも、歌うような独特のリズムで語り始められる物語は二人の姉妹の話。
運命がその立場をわけた姉妹は、やがて、悲劇的な最後へ突き進んでいく。その鍵となる則天武后と仄めかされる内心の葛藤。ーーおぞましくも、美しい物語は、ピリッと毒を持っている。

★★★ Excellent!!!

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7世紀末、隆盛極まる大唐で最も強い権力を握っていたのは、
後に高宗と謚される天子その人ではなく、皇后、武氏である。
彼女は一般に則天武后と呼ばれるが、やがて自らが即位し、
中国史上唯一の女性皇帝となった。ただの「后」ではない。

武とは彼女の姓であり、military powerを表すものではないが、
武則天という呼称の字面の何と猛々しく、力に満ちていることか。
単に悪女と呼ぶには、彼女が成してのけた事績は巨大に過ぎる。
この途方もない女傑には、私は怖くてうまく向き合えない。

本作『螺鈿の鳥』は、武則天が皇后であったころの物語だ。
ヒロインは野心と姉への嫉妬を胸に、武后付きの宮女となる。
女同士のどす黒い権謀術数が渦巻く後宮を、武后は支配する。
その支配の黒子こそ、自ら武后の狗となったヒロイン仙月である。

カクヨムには上げていないが、私も東洋史ベースの歴史物を書く。
原稿を読んだ人から「本当に女か?」と呆れられる程の武断派で、
初めはあった「東洋史が書ける女性ならぜひ後宮物を」との声も、
「もう少し色恋を絡めたら……」という助言に変わってしまった。

そんな私だから、後宮のドロドロや女の怖さを描いた本作には、
純粋に憧れを抱いたし、正直に「これは書けない」とも思った。
それなりに東洋史を知っているため、中国歴史物は地雷である。
ウェブ上で初めて、武則天らしい武則天を描く小説に出会った。

おぞましく恐ろしいラストが特にいい。
「やはりそう来るか」とニヤリとした。
並の悪女では女帝の足下にも及ばない。
女帝の脆さと弱さもまた危うい魅力だ。