第3話
「…では、皇后様はまた
仙月に問われた同輩の
眼を向けた先には、黄色の
前者は聖上、そして後者は武后の姪に当たる
武后の姉は韓国夫人といい、もとは
韓国夫人は今わの際に、決して自分の娘を後宮に
しかも賀蘭氏も賀蘭氏で、母親譲りの美貌と帝寵をかさに日を追って驕慢となり、叔母の武后何するものぞという勢いである。
賀蘭氏の嬌声が
「魏国夫人も少しはこちらに遠慮すべきでは?」
半ば上の空で雪梅の言葉に頷いた仙月は、大切なことを思い出した。
――そうだ、皇后様に茶菓を進める時刻だわ。
急ぎ足で女主人の居室に入ると、武后は眼をつむり、脇息に身をもたせかけていた。
「…仙月か」
物憂くこちらを見た武后は唇の端を上げた。彼女の手元には、錦にくるまれた包みがあった。
「先日、
「かしこまりました」
一礼して、何気に武后の手を見た仙月はぞっとした。皇后の、脇息の縁をつかんだ右手の先が固くこわばり、血の色を失っている。追い打ちをかけるように、武后の低い声が仙月の耳朶を冷たくした。
「塩漬けは美味なものだが、食べ過ぎると身体に毒だ。……のう、そうは思わぬか?」
***
注1「泰山封禅」…天子が泰山で天を祀り、天下の安泰を報告する臨時の祭祀。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます