第28話


扉の前で息を切らしている音符を、どうしようかと見つめていると奥から、

「がくとー?なんだったー?」

と母親の気配がしたので、

「なんでもない!!コンビニ行って来る!!」

と、音符の手を掴み外に駆け出した。


ーーーーーーーー


夜の公園は静かだったが、空気が生ぬるい感じがした。

「が、がくと...!!ごめ、んね、あの、はっ...」

突然走り出したためにまだ息の整っていなかった音符はベンチにグッタリとしていた。

「音符...ごめん、大丈夫か...?」

「だ、いじょうぶ....うぇぇ.....」

「吐きそうじゃん...飲み物買って来るよ」

自販機に向かう楽斗の手を音符が掴む。

「がくと!!あの!!」

「な、なんだよ」

音符の手が熱い。顔も、瞳も。


「わたし、がくとのことほんとに大好きだから!!」


声がでかいとか、急に何言い出すんだとか色々な言葉が頭をめぐる。

思考が止まるのを感じた。

時が止まって、

呼吸も止まって、

景色と、匂いも止まって、




目の前には音符がいて、

くちびるが、



(あつくてあまい)

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