第11話

7月の終わり、まだまだ暑さが続くこの日。

「1学期お疲れ様。みんな問題を起こすことなく良く頑張ったわね!明日からの夏休みも何事もなく有意義に過ごすように!あ!宿題も忘れずにね!」

解散!、という言葉とともに教室には生徒たちの脱力と開放感とも取れる声が響いた。

「楽斗さ〜ん!!夏休み何するの?」

「お祭り一緒に行かない?」

「ずるい!私も行きたい!!」

「....」

相変わらず楽斗は女生徒に人気である。

その様子を音符は、頰を膨らませた状態で見つめていた。

「音符〜!なにしかめっ面してんの??」

「楽斗さん、すごい人気」

「もうがくとを背後から刺すしかない...」

「お!やる?やっちゃう??」

「も〜!桃香ちゃん悪ノリしないの...!!」

「てか、ほんと女子校でもないのにすごい人気だね」

「男の子たちの視線もすごいね...」

楽斗の周りで黄色い声をあげる女生徒に恋心を抱いている男子が悔しそうに楽斗を見るのはもはや日常の一コマであった。

楽斗は大変迷惑しているが...。

「ねぇ〜!!どうして遊んでくれないのぉ〜?音符さんとは遊ぶのに!」

「....は?」

「一人占め?みたいでズルイ〜!私たちとも遊んでよ〜!」

むにゅ、と楽斗の腕に柔らかい感触がした。

その感触に、ゾワ、と鳥肌が立つ。

「音符関係ないし、つかなんで遊ばなきゃなんないの」

「え?だって私達も楽斗さんと一緒にいたいし....」

「一緒に居たいからってこっちが迷惑してんのわかんねぇの?夏休み前だってのにイライラさせんなよ」

ガララ、と椅子を無理矢理引いて歩き出す楽斗。

「音符行くよ」

「うぇ!?う、うん!」

スタスタと歩く楽斗について行く道中、後ろを振り向くと女の子たちが楽斗を見てキャーキャーと騒いでいた。

すごい....喜んでる.....。

.

.

.

場所は、Flower days。

音符は、夏季限定の南国スペシャルを。

楽斗は、ステーキをガツガツと食べていた。

「が、がくと...」

「なに」

「お、お口...ソースが...」

ナプキンを一枚取り、楽斗の口を拭く音符。

楽斗はされるがままだった。

そのまま、会話もあまり続かずに、お互い帰路に着いた。

今更になって桃香と忍を置いてきてしまったことに申し訳なさを感じたが、あの状態で2人に謝罪をすることは音符には出来なかった。

それほど、まさか自分が呼ばれるとは思ってなかったからだ。

ちょっとだけ、優越感を感じている。

自宅に着くと、部屋着に着替え、ベッドにダイブする。

「明日から夏休み...!!帰宅部のわたし!毎日部活動お疲れ様〜〜!!」

足をバタバタさせて、夏休みの到来に歓喜していると、携帯が2回振動した。

「あ!がくとからLINEだ!」

確認すると、さっきはごめん。子どもみたいなことして。もし、予定無かったら明日映画見に行かない?音符が見たがってたの、チケットあるの忘れてた。と書かれていた。

それに、イケメン!行く〜!デートする〜!と送ると、バカ、と一言だけ送られてきた。

正直、夏休みにイベントがなさすぎてこれは真面目に宿題コースかな?と思っていた音符にとってはまさに神のお誘い。

その日も音符は、遠足が待ちきれない子どもの様に夜を過ごした。

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