第12話
翌日、駅前。
「ね、寝坊しちゃったけどなんとか間に合った....」
はぁ、はぁ、と息を整えるために大きく深呼吸をするも、夏特有のモワッとした空気を吸い込んだだけであった。
携帯で時刻を確認すると、約束の時刻の少し前。
「おはよ、待たせてごめん」
突然、背後から声がして、首筋に冷たいものがあたった。
「ぴゃっ!!...あ!がくと!おはよ〜!もぉー!びっくりしたよ〜!」
「はよ、はい、これ」
「オレンジジュース!え?どうしたのがくと?旅に出るの?」
「は?なんでよ。遅刻しそうになったからあげる。時間あるから、そこの日陰でちょっと休も」
「うい!了解〜!」
大きな木の周りに設けられているベンチは真新しく、そこの周囲だけは異様に涼しいので人気がある。
空いているベンチに腰掛けると、楽斗が音符の頭をいじりはじめた。
オレンジジュースを飲みながら音符は、楽斗の手を見つめていた。
「はい、結構髪の毛ぐちゃぐちゃだったよ」
「よきかな、よきかな」
「可愛いんだから身だしなみには気をつけなよ」
「ふ!?がくとにかわいいって言われた!かわいいって言われた!」
「はいはい、もう行くよ」
「あ、まってまって〜!」
声の割には、ゆっくり歩いてくれている楽斗に音符は少し満足げに微笑みながら缶を捨てて、楽斗の隣を歩いた。
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映画を見終わると、冷めやらぬ興奮のままお昼ご飯を食べる音符、すると楽斗から、
「あのさ、外暑いから、家来る?ここから近いけど」
「がくとのお家?!いくいく!」
「家誰もいないから、騒いでも良いよ」
「え、わたしって人のお家で騒ぐと思われてる?」
「違うの?」
「違うよ!でも騒ぐよ!お菓子買ってこ〜!」
「どっちだよ。てか音符、そっちじゃない、こっち」
2人は楽斗の家に近いコンビニへと、お菓子を買いに行った。
音符を自宅に誘ったのは、実は楽斗には試してみたいことがあったからである。
ここから楽斗は、一種の賭けに出た。
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