第25話
同時刻、別の喫茶店にて。
「久しぶりですな、忍殿!」
「その変な話し方どうしたの?...それで、私に話って...?」
「うーん.....えっとねぇ.....」
「話しづらいことだったりするのかな...?」
夏休みももう終わりに近いが、音符が忍を誘ったのは初めてだ。
それも、なんだか話しにくそうな事に、自然と忍の顔も真剣なものになる。
まさか相談事に誘われるとは思ってもいなかった忍は、自分を頼ってくれた事に嬉しさを感じていた。
「えっとぉ....」
「?」
「とりあえずこの夏盛りパフェと、オレンジジュースにする!忍ちゃんは?」
「え!?注文決めてたの...!?」
「え、だって何か頼まないと来た意味ないよ...?」
「う、うん、そうだけど...じゃあ、私はケーキセットで...」
「ほいほい〜〜!すいませ〜ん!夏盛りパフェ1つと、オレンジジュースとケーキセットお願いします〜!」
カウンターから店員さんの返事が聞こえて来た。
忍は、もしかして相談事というのは建前でただ単に暇そうな私を誘っただけだったのかな...と少し悲しくなった。
「あ、でね、相談なんだけど...」
「え!?相談事あるの...?」
「え??う、うん....忍ちゃん大丈夫?お熱あるの??」
「お、音符ちゃんが紛らわしい事するから...」
「???」
音符ちゃんは、首をかしげた。
久しぶりに会うから、少し変な感じ...
すぐに音符ちゃんのペースに持っていかれちゃう。
「それでね、相談っていうのはね、う〜〜んと、悩んでることがあってね....」
「私で良かったら、力になるよ...」
「ありがと!あのね、もし、もしかしたらの話ね!えっと、仲の良いお友達がいて、特に何もないんだけど、えっとね、なんだか、あんまり良くないなぁみたいな?う〜〜ん....なんて言うのかな....変な距離感みたいなもの感じたら、忍ちゃんはどうする???」
楽斗さん?とは聞かなかった。
音符は自分では、うまく隠せているように思っているが、忍にはバレバレである。
「うーん....そうだね、どうして音符ちゃんは距離感を感じてるの...?」
「うぅ....よく分からないけど...前みたいに楽しくないって思うことがあるの...」
「じゃあ、前はどんな風に楽しかったの...?」
目の前に、注文した品が運ばれてくる。
店員さんにお礼を言って、食べ始める。
今日のケーキは抹茶のミルクレープだ。
一口食べると、程良い甘さが口に広がる。
「前はね、えっと、なんでも話せる!みたいな...こう、なにやっても..っていうのは言い過ぎだけど、でも、わたしの好きなようにできてたの...だけど...」
「だけど?」
「最近はね、なんだか、あんまりしつこくしちゃいけないのかなって思って.....あ!!ちがうよ!これわたしじゃないから!もしもの話だから!!」
突然、我に返ったかのようにすごい勢いで話し始めた音符ちゃんを落ち着かせる。
「わかってるよ...落ち着こ?...多分ね、それ、音符ちゃんそのお友達に遠慮してるんだよ...」
「遠慮??」
「うん、もしかしたら、嫌われちゃうとか、思ったりしてるのかもしれないね...。前は、そんな事深く考えてなかったけど、最近は、嫌われる事が怖くなっちゃうような事が、その友達とあったのかな....?」
「え!?ないない!!なんにもないよ!!ほんとだよ!!」
音符ちゃんがすごい勢いで手を振る。
顔が真っ赤で、すごく暑そう.....暑がりなのかな...。
「もしも、の話だよ?」
「う、!!、し、忍ちゃん....やりおる...」
「なにが...?」
.
.
.
喫茶店を出る頃には、辺りは夕焼けに染められ赤くなっていた。
音符ちゃんと別れると、そのまま家路につく。
途中、LINEで桃香ちゃんから、4人で夏祭りに行かないか、とお誘いが来た。
「(もう、夏休み終わっちゃうんだね...)」
忍は、桃香からのLINEを見つめていた。
「(結局、何も言えなかったな....)」
桃香ちゃん、桃香ちゃんは、私のこと...
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