第31話


ついに.....


ついにこの日が来てしまった.....


夏祭り。


昔のわたしならすっごく楽しめたかもしれないけど....


「うぅ〜〜....行きたくない〜〜...」


タオルケットに包まり、イモムシのようになりながら呻く。


あれから楽斗と連絡はとっていない。

4人で作ったグループラインに、今日の待ち合わせ場所と時間が投稿されていた。


遅刻しないように!と一言添えられている。


それに返事を返すと、渋々起き上がり、鏡で顔を確認する。


「めっちゃ元気ない顔してる...」


目元の腫れは幾分かマシになったが、顔色は優れない。


今日は浴衣で行こうと思っていたが、母親が急に出掛けてしまい、着付けをしてくれる人がいなくなったので私服で行くことにした。


タンスとクローゼットから夏服を取り出し、眺める。


久しぶりに、桃香や忍と会うのだ。

少しくらいオシャレしていっても変じゃないよね...と思いつつも、本当は、楽斗に何か声をかけてほしいという気持ちも混じりつつ洋服を選ぶ。


スカート?短パン?ジーンズ?ワンピ?どうしよう!!


と、考えること数十分。


「よぅし!今日はこれで行く!」


音符は、花柄の散りばめられた生地にレースのかかったワンピースを手に取った。

そして、水色のジーンズ柄の上着を羽織ると、髪を纏める。


キッチンに行くと、用意されたご飯を食べ、歯を磨き、顔を洗う。


そして少しお化粧をすると、なんだかわくわくしてきた。


完成された姿を見ると、だいぶ気合が入っている。


「が、頑張りすぎたかも...」


待ち合わせにはまだ余裕があった。

屋台のことを考えるとお腹がなりそうになる。


心の中にある不安に目を背けるように、音符は夏祭りに心躍らせた。

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