第32話


同時刻ー忍の部屋ー


「はぁ、今日も暑いなぁ...」


忍は、時計を眺めるとふぅ、と溜息を吐いた。


窓を開けると生温い風が吹いてきた。

蝉がミンミンと鳴いている。


部屋を出ると、朝食を食べ顔を洗う。

歯を磨くと、浴室に向かう。


「汗掻いちゃった...」


パジャマを脱ぎ、シャワーを浴びると全身を丁寧に洗う。


「桃香ちゃんと会うのも久しぶりだな...楽斗さんと音符ちゃんも...」


心地よい香りに包まれながら、夏祭りのことを考える。


夏休み中、何度が桃香と接触があった。

ただ、いつもと同じように出かけたり、お話をする程度だったが、その度に、忍の胸は締め付けられた。


好きなのだ。やはり。


浴室を出ると、柔らかいタオルで体を拭く。


今日は、お母さんに浴衣を着せてもらう予定だ。


もうそろそろ買い物から戻ってくる時間なので、部屋着を着ると、部屋に戻り、髪をアップで結ぶと軽くお化粧をした。


本当は、今までお化粧をした事がない忍だったが、夏祭りにどうしても、桃香に気持ちを伝えておきたかった。


まぁ、2人きりになれれば...だが。


少しすると、母親が帰ってきた。


さっそく、着付けてもらう。


白地に、色とりどりの花が散りばめられたデザインのものだ。


鏡で姿を確認すると、自分がとても可愛くなっているような気がして、恥ずかしかったが、少し勇気が持てた。


少しずつで良い。

少しでも、自分の気持ちを伝える事ができたなら、後悔はしないはずだ。


巾着にお財布と携帯、ハンカチ等を詰めると桃香との待ち合わせ場所に向かった。


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