第33話


プルルルル.....プルルルル.....


「もしもーし!!楽斗ー!久しぶりー!」


「桃香、突然ごめんな」


「全然いいよ!どしたん?」


「あのさ...」

.

.

.



夏の日差しは、相変わらず厳しいが店内は涼しい空気に満ちていた。


「ふぅ...相変わらずクーラーは最高の電化製品だと思わない!?」


「桃香、わかるけど...そんな食べて大丈夫なの?これから夏祭りだけど...」


「うちの胃袋なめんといて!!」


「なめてはないけど...」


とあるカフェ。

桃香と楽斗は、一足先に合流していた。


数日前、楽斗から誘いを受けた桃香は、「うちでいいん?音符は?」と言った瞬間のなんとも言えないような空気から、これは何かあったな...と女の勘で誘いを受けた。


楽斗がウーロン茶に対し、桃香は食べ応えのあるサンドウィッチを食べていた。


あのさ...、と少し言いづらそうに楽斗が口を開く。


「今日の夏祭り、なんだけどさ、後半、まぁ、どこでもいい、んだけど...音符と2人きりにしてほしいんだよね...いい、かな」


「..うちは別にいいけど...」


「その、詳細はまだ話せないけど...もしかしたら、音符そのまま帰るかもしれないし...」


「まぁ、2人に何があったか知らないけど、うまくやりなよ!!」


「ありがと...」


「その変わり、何があったかちゃんと教えること!!おっけ?」


「わかってる..」


ニカッ、と桃香は笑った。

その顔に、元は4人で楽しむはずだったのに申し訳ないな...と、先日の自分の行動に後悔するが、こうして、深く入り込まず聞き入れてくれる友人がいるというのは、とてもありがたかった。

.

.



「てか、そろそろ戻った方が良くない?」


「そ、うだな」


だいぶ話し込んでしまったが、そろそろ行かなければならない時間だ。

これから音符と会うのだ...少し、いや、かなり不安が残る。


「がくと!!」


「ぃて!!」


バシン、と背中を叩かれる。

思いの外強い力に、後ろを振り向くと、


「がんば!!」


と桃香が笑いながら言う。


その姿に、苦笑いをしながらも、


「ほんと、見た目によらない」


と、笑顔を見せた。


「え!?それって良い意味なの!?悪い意味なの!?」


桃香の言葉は、軽く笑って流した。




外に踏み出すと、ムワッとした空気が体を包んだ。


いつもより、通行人の気分がうきうきとしているのを感じた。


夏祭りのはじまりの太鼓の音が聞こえた。

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