第4話

翌日、いつものように靴箱で靴を履き替えていると、後ろから控えめに、

「音符ちゃん...おはよう...」

と、話しかけられた。

後ろを向くと、少し頰を赤く染めたしのびちゃんが立っている。

「しのびちゃん!おはよ〜!今日も風強かったね〜!」

「う、うん。飛ばされちゃうかと思った...」

「ぷ、しのびちゃんおもしろい!でもしのびちゃん飛ばされてもニンニンで戻って来れるね!」

「ニンニン...?」

「にんぽー飛ばされないの術!」

指で忍者のポーズを作り、ニンニン!と言うとしのびちゃんは口に手を当てて控えめにくすくす、と笑った。

「音符ちゃん、おもしろい...教室まで一緒に行ってもいい...?」

「おっけっけー!」

ちなみに、この学校の構図は、

一階に靴箱と食堂

二階に1年生の教室と特別室が数個

三階に2年生の教室と図書室と職員室

四階に3年生の教室と茶道室がある。

体育館は別にあって、集会などは体育館に集まって行う。

階段を上りながら、しのびちゃんを見ると、前髪に見慣れないものを見つけた。

「しのびちゃん、お花ついてる!」

「え..,?あ、これ?」

と、言って、さらさらの髪の毛に手を伸ばしお花を取ると、どうやらピン留のようだ。

小さな桜の花をモチーフにされた控えめで可愛いデザイン。しのびちゃんにとっても似合っていた。

「かわい〜!!買ったの?」

「ううん..昨日ね、桃香ちゃんに買って貰ったの」

「そうなの〜!?すご〜い!しのびちゃんにぴったり〜!」

「ふふ...ありがとう、音符ちゃん」

しのびちゃんって、大人な女の人って感じでとっても綺麗だな〜!


教室に入ると、ももかちゃんが眠そうにあくびをしていた。

「ももかちゃん〜!おはよー!」

「おはよう....」

「はよ...めっちゃ眠いー!お!忍付けてきたね、似合ってるよ!」

「あ、ありがとう...」

それぞれ席につきながら話していると、チャイムギリギリにがくとが入ってきた。

「はよ、遅刻するかと思った」

「がくとお寝坊さんだ〜!!」

「その割にはめっちゃ歩いてきたけど?」

「楽斗さん...おはよう...」

「忍、桃香、はよ。音符にはあいさつしてやんない」

「え!?なんでなんで〜!?おはようしてよーー!ねえーー!!」

うわぁーん!イジメだー!、と泣き真似をしながら騒いでいると先生が入ってきた。

そのまま朝のHRを終わらせると、今日から本格的に授業が始まる旨を伝え、教室を出て行った。

「今日から授業かぁ...あ!がくと!」

はい、と昨日がくとのために選んだ本を差し出す。

「ありがと。『はちみつマーマレード』?」

「うん!わたしの好きな本だよ!食べないでね!」

「音符じゃないんだから食べないよ」

「え!?わたしも食べないよ!?」

がくとは、本をパラパラと捲り、昨日プレゼントしたカバーを付けて鞄の中にしまった。

そこからまた雑談を始めると、一時間目を告げるチャイムが鳴り、教師が入ってきた。

.

.

.


「あ〜!!終わったーー!!」

「うるさい」

帰りのHRが終わり、クラス内は授業の事について友達と雑談したりする声で賑やかになっていた。

「じゃ、うち帰るわ」

「桃香、途中まで一緒に帰ろうぜ」

「ももかちゃんとがくとばいばい!しのびちゃん!わたしたちも帰ろ!」

「う、うん!桃香ちゃんに楽斗さん、ばいばい...」

お互いに挨拶を済まし、帰路につく。

しのびちゃんと授業の事や宿題について話しながら楽しく時を過ごした。


家に着くと携帯が振動した。

見ると、がくとからLINEがきていた


楽斗:明後日の日曜日のことだけど、向こう着いてから渡したいものあるから早めに来て

おんぷ♪:渡したいもの?まさか爆弾!?

楽斗:馬鹿なこと言うな、じゃあね

おんぷ♪:たとえ爆弾でも死ぬ時は一緒だよーー!!


LINEの返信は来なかった。

がくとの恥ずかしがり屋さんめ!!

それにしても、渡したいものってなんだろう?


明日は土曜日、学校はないので、お部屋のお掃除して、本でも読んで過ごそうかな〜、うーん、買い物にも行きたいな〜...と考えているとあっという間に夜になっていて明日のことは明日決めよ〜と思いながら眠りについた。



結局、大幅に寝坊して起きたのがお昼だったので軽く身支度して買い物に行き、本を読んで過ごした。

その日の夜は明日着ていく服を選び、持っていくものをバックの中に詰めながら明日の動物園に期待を膨らませた。

目覚ましを早くにセットし、忘れ物がないか確認して眠りについた。

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