第13話

「じゃ、麦茶持ってくるから待ってて」

「うん!ねえ、お菓子開けてもいい?」

「こぼすなよ」

「おっけっけー!」

ガサガサと袋を漁る音と、バリ、と袋を開ける音が聞こえた。

相変わらず甘い物には目がない。

楽斗は、キッチンに行き、コップを2つお盆の上に乗せると、麦茶を注いだ。

楽斗には、悩みがあった。

それは、自分がもしかしたら同性愛者...言うなればレズかもしれないと思ったのだ。

事の発端は、音符と食べ歩きをした日。

しつこい女子に絡まれた一件以来、音符の笑顔が頭から離れない。

確かに音符は少し変わっているが、外見は可愛いと思う。

性格も人懐っこく、見ていて飽きない。

でも、何か違う。

ずっとモヤモヤしている。いつの日か見たあの夢のせいなのかもしれない。

ともかく、今日は家に音符と2人きりだ。

とりあえず試す。このモヤモヤをいつまでも溜めておくのは嫌だった。

いつか苦しくなって、音符とは一緒に居れなくなってしまう。そう思った。

「おまたせ...って、もう食ってんのかよ」

「ん〜、待ってたんだけど我慢できなかった....」

「まぁ、いいけど」

コト、と麦茶を音符と、自分の前に置く。

「あっつ...クーラー付けるけど、大丈夫?お腹下したりしない?」

「大丈夫だよ〜!もぐもぐ」

リモコンを手に取り、ピピ、とクーラーを付けると、涼しい風が部屋全体に流れ始めた。

「ふぁ〜〜!!極楽なり〜〜!」

「ほんと、クーラー無いと死ぬ」

そのまま、2人で雑談をしながらお菓子を食べていると、突然楽斗が音符の隣に座った。

「なになに?どしたの?」

「あのさ、変な意味はないんだけど、頼みたいことがある」

「ん〜?なぁに?」

ふぅ、と楽斗が少し深呼吸をした。


「あたしの腕に音符の胸押し付けて」


「...ほ?」

「だから、あんたの胸押し付けて」

「え??胸って...胸???」

「良いからはやく!!!」

「ひ、ひゃい!!!」

音符は恐る恐る楽斗の腕を取り、自分の胸を押し付ける。

「こ、こう...?これでいいの...?」

「...何も感じない」

「え?もしかして今わたしの事バカにしてるの??」

「違う、嫌じゃない」

「???なんか変だよ、がくと」

腕に当たる音符の胸は、そこそこ大きく弾力がある。

暑いから服が薄くて、余計に生々しく感じてしまう。いや、実際生々しいんだけど...。

嫌悪感は無かった。

音符の顔を見ると、顔が少し赤い。

視線も、恥ずかしそうに下を向いている。

なんだか、こっちも余計に恥ずかしくなってしまう。

「なんかさ、女子がよく胸当ててくるんだけど、あれ、凄い嫌でさ、でも音符は嫌じゃないんだよな。ごめん、それ試したかっただけ」

「そ、そうなんだ!あ、ありがと!」

「うん」

何故だか、お互いに顔を赤くしながら早口になってしまった。

「あのさ、」

「ん?」

「もう一個、頼みたいんだけど...」

「なぁに?」



「胸を揉ませてほしい」

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