第24話 マナたんのお勉強
血液検査、身体検査、スキャンなどを試してみたが、その全てで第二エネルギーらしきものを計測することはできなかった。そう簡単にはいかないか。もう一つ試してみたいことは、第二エネルギーの量に変化があったときに物理的に観測可能なことで、何か計測できるものがあるかどうかだな。
例えば、カロリーを消費するとか、体温が上がるとか、そういった身体的に何か影響が出るならそこから割り出せるかもしれない。分かったことは俺の体が以前と変わらず健康だということだけだ。
検査が終わったお昼過ぎにアズールは約束どおり訪ねて来てくれた。今日は蛍光黄色のジュースを提供しようじゃないか。
今朝シルフが蛍光黄色キノコの合成が完了したと話があったので、さっそくアズールにジュースを提供することにした。飲み比べるために、タピオカ入りも作ってみた。
「ありがとう。アズール。まずは新作ジュースをどうぞ」
[わあ]
蛍光黄色キノコは合成で作ると色は出ないが、敢えて蛍光黄色に染めてある。俺が飲むなら無色でいいや。ちょっと毒々しいよこの色。
[おいしいです。タピオカ?でしたっけ。タピオカ入りもおいしいです。黄色のキノコに似た味がしますが、味がキノコより濃い感じですね]
バナナジュースにするには濃度を上げないと味が薄かったので濃くしてみたのだ。気に入ってくれたようで嬉しい。
ジュースを飲みながらも透明な壁越しにアズールは俺の体をじーっと見ている。見るだけでわかるのかな。
[いまざっと島田さんの体を見ましたが、マナは問題なく体に定着しているようですね。まず、マナを使ってみましょうか」
と言ってアズールは手のひらサイズの白銀を懐から取り出し机の上に置いた。最初は直接素手で触ったほうがいいとのことだったので、俺の隔離ルームへ手のひらサイズの白銀を持ってきて実験開始だ。
最初は何も考えず手で掴んでみる。
「どうだ?使えてるか?」
[最初は意識して使わないとダメかもしれません。マナが白銀に流れてませんので、白銀にマナを流してみてください]
流すったって、どうすんだこれ。と第二エネルギーの胃に意識をやると、スーっと白銀に何かが流れていくのが感じ取れた。これが「流す」という感覚なのか。感じ取れた後アズールの方を見ると、彼女は頷いてくれた。
なるほど。特に難しいことでもなさそうだな。
[大きいものほど、マナを使いますので気をつけてください。白銀は面積あたりのマナ限界量が決まってますので、一定以上はマナを流すことができません。マナは体から離れると白銀からもすぐに離れていきます。
慣れると手袋越しにでもマナを流すことができます。手袋越しの場合は、手袋から白銀が離れると同じくマナがなくなってしまいます]
大きいほど、第二エネルギーを使うってことか。今白銀へ第二エネルギーを流して消費したわけだけど、自分の第二エネルギーが減った感覚が分からないぞ。白銀について聞きたいことができたのでルベールと後で話をしたいな。
[さきほどの白銀ではサイズが小さすぎますので、今度は少し大きなものでやってみましょうか]
「ああそれなら、白銀のインゴットがまだまだ大量にあるから持ってこよう」
白銀の延べ棒のサイズは、長さ30センチ、底面は10センチの正方形だ。長いほうを床側にしてどんどん並べていく。
[では、まずは一本掴んで、マナを流して見てください。流し終わったら数を増やして行ってくださいね]
よおし、やってみるか。まず一本目に第二エネルギーを流す。そして二本目、三本目...と進めているうちに、僅かではあるが体の中にある第二エネルギーが減っているのを感じ取れるようになってきた。ただ、減った感覚の後にすぐ元に戻る感覚がある。
[マナの吸収蓄積もできているようですね。マナの使用には問題ありません。後覚えていただきたいことがあります。マナを流すことを止めることです。おそらくもうできるとは思うのですが]
「大丈夫みたいだ。流すことを止めることはできるようだよ。止めれないと枯渇しそうなときに困るものな」
マナの吸収は無意識に行うようだ。使うときは意識して流さないと使えないが、アズール曰くそのうち息を吸うように流すことができるようになるのだろう。
「ありがとう、アズール。少し気になることがあるからルベールと話できるかな?」
[なんでしょうか?島田さん?]
いつ変わったか全く分からない。テレパシーに音はないからなあ。アズールの見た目にも変化がない。口調も同じだから口調からも判断できない。俺が意識すると口調は変えれるのだろうか...
「白銀のことだけど、白銀は一時的とはいえ、第二エネルギーを貯めれるんだよな。無機物なのに」
[そうです、白銀はマナを蓄積できる特殊な金属ですが、手を離れるとすぐ霧散してしまいます]
「ということは、第二エネルギーを蓄積した状態なら第二エネルギーの影響を受けるのか?」
[そうです。影響を受けるからこそ、質量が下がるのですよ。頑強さも靱性も強化されます]
なるほど。第二エネルギーによる身体能力の強化が白銀に働くってことか。待てよなら第二エネルギーを溜め込むこともできるんじゃないか。
「それなら、白銀に触れたまま白銀の量を増やしていくと、白銀に第二エネルギーを貯めていくことができるよな。白銀に流した分の第二エネルギーは、人体が吸収していくから総量が増えていくはずだ」
[確かにそうです。あなたはまだマナの量を見る力が養われていませんので、分からないこととは思いますが、白銀に蓄積されるマナは生命体に比べると極僅かですよ]
確かに、今は第二エネルギーの量を俺は測ることができない。しかし感覚的には理解できた。あれだけの量の白銀に第二エネルギーを流しても、外気から俺の体に流れる吸収量のほうが多いのだ、たぶん。
白銀のタンク化はあんまりかもしれない。
「ありがとう。ルベール」
[いえ、アズールに変わりますね]
なかなか上手くはいかないな。ただ一つ使い道があるかもしれない。試してみるか、準備ができたらアズールにお願いしよう。
「アズール。他人や自分の第二エネルギーの総量を測るやり方と、テレパシーのやり方を教えてもらえるか?」
[マナの計測は、マナの扱いに慣れてくれば自然にできるようになると思います。テレパシーはマナの計測ができるようになってから、できるか試してみましょうか。私の一族でもできる者は限られてますので、簡単にはいかないでしょうが]
マナの計測だけでもできれば大きな進歩だな。
[島田さん、私があなたにマナが蓄積できるようにと思ったのは、身体強化なんですよ。身体強化には興味はないのですか?]
不思議そうにアズールは聞いてくる。正直身体能力はあまり興味がなかった。あるに越したことはないけど、計測が一番の利点だったからなあ。
「いや、興味がないわけではないんだ。教えてくれると嬉しい」
[身体強化もマナの計測ができるようになったらわかると思います。体中にマナを流すだけです]
なるほど。この第二エネルギーの胃にあるものを全身に流すのか。すぐにはできそうにないけど、白銀で感覚を掴めばいずれできるようになりそうだな。
[近くまた来ますので]とアズールは俺の体の様子を再度見た後、帰宅していった。いつもは7日ごとだものなあ。大丈夫と言ってくれたとはいえ、少し無理して来てくれたに違いない。
「シルフ、白銀で記憶媒体を作れないか?記憶媒体化した白銀とメインコンピュータを繋げば、一時的にだがシルフも第二エネルギーの恩恵を受けることができるかもしれない」
白銀を大量に並べながら、俺はシルフに聞いてみる。
「すぐにでもできるわよ。なるほど、あんたのやりたいことはわかったわ。試してみる価値はあるわね。次アズールが来るまでには準備しておくわ」
帰還や地球との交信に役に立つことではないが、俺の個人的な願望のため、シルフには白銀の加工をお願いしたのだった。
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