第2話 人類初のホープ探査、ただし誰も見ていない
宇宙船ポチョムキンは現在惑星軌道上を周回している。
探査機から送られてくるデータを見て俺は愕然とした。宇宙ステーションイェールからの観測は、まるで当てにならないものだったのだ。
まず、大気成分。
二酸化炭素60パーセント、酸素2パーセント、その他ほぼ窒素。
大気圧は地表付近では、なんと20気圧以上。予測とかなり違う...
重力は地球の1.1倍とほぼ同じなので、重力による健康被害はなさそうで良かった。重力はどうしようもない要素で、どうなることかと思ったが、幸い長期滞在出来そうだ。
成層圏には雲が多数観測され、雲は水蒸気からできていた。標高の高い地域や、極地域では湖らしきものがいくつか発見できた。主成分は水だろうと推測される。
太陽光の強さの割に気温が非常に高く、赤道付近の気温はおよそ180度程度。地球と違って海がないため、昼夜夏冬の寒暖差が非常に大きいと思ったのだが、二酸化炭素による温室効果と、常に流れる偏西風のため、夜でも昼ほどではないが熱い。
その結果より、標高6000から8000メートル級のカルデラに当たりをつけることにした。地軸が傾いており、極地域は夏冬で日射量が極端になるからだ。
カルデラのうち、湖が存在する箇所を探索するといくつか見つかったので、次は現地へローパーという、ラジコンのような探査機を降下させ、調査に当たる。
この辺りの気圧は8気圧、気温は60度。
「ローパーの画像を送ってくれ」
シルフがモニターにカルデラの映像を投影してくれる。
湖に宇宙船が着陸可能な広さのある平地...平地には植物らしいものはない。
湖の中はどうだろう?
あー、なんかいるーー。
小さなエビのような動くものと、赤色の藻らしきもの。
水温は40度くらい。目に見えないが細菌やらもきっとわんさかいるのだろう。
初の地球外生命体発見!やったね俺!
なんて言ってる場合じゃない。
ここに地球産の生き物を持ち込めば、ホープ産の生命体に深刻なる被害をもらたす。なるべく被害を与えないよう行動しないとだ。とはいえ、自分の命が関わればアッサリホープの生き物は見捨てる。
調査結果から、着陸するならカルデラ。通信機が復活するかどうかをシルフにチェックさせているので、これの結果を待って行動を決めよう。
「島田。通信機の故障原因は不明。地球とコンタクト取る目処は立たないわね」
となると、向こうから迎えに来てくれるのを待つしかないわけだ。
今頃宇宙ステーションや地球では、宇宙船ポチョムキンとの通信が出来なくなったことは分かっているだろうけど、位置を補足出来てるかどうかは分からない。
おそらく、行方不明になっているんじゃないかなあ。
ホープ探索は人類の将来に必ず必要なので、いつかはホープに探査機が来るだろうが、今回のワープ失敗により、また原因調査やらしつつ、安全性確認などをやっていたら来るのは、いつになることやら。
少なくとも数年はホープで生存出来るようにしないといけない。
着陸しない場合は食料や酸素が枯渇するまでそう時間はかからない。
「着陸するしかないか。行くか未知の惑星へ」
こうして、宇宙船ポチョムキンは惑星ホープに着陸することになる。
目的地はカルデラだ。
カルデラに着陸した俺は、宇宙船のソーラーパネルを開きまず電力を確保。
よし、まずはドキドキの船外調査だ。
重力地球の1.1倍、外気温60度、気圧8、呼吸不可能な空気。呼吸出来ない以外はそれほど過酷な環境ではないが、念のため宇宙服を着よう。
ポチョムキン号に装備されている宇宙服は最新式で、黒い全身タイツにフルフェイスヘルメットという姿だ。見た目は海にいるダイバーとそう変わらない。
よし、行くぞ!ハッチのエレベーターから下降し、いよいよ大地に降り立つ。
人類史上初の太陽系外惑星への着陸という歴史的瞬間に俺は感動に震えていた。
「だーれも見てないけどねー」
ヘルメットから声が、いちいちうるさいやつだな。
シルフとはヘルメットを通じて会話することが可能。船外活動をサポートしてもらう予定だ。どんな生物がいるか分からない上、ここまで重力がある場所で船外活動した経験が人類にはない。
宇宙服が破損することは充分考えられることだけど、最悪ヘルメットさえ無事なら呼吸はできる。
カルデラはかなりの広さがあり、観測上では神奈川県より広い。面積の約半分が湖で、観測した限り地上に植物は発見していない。
俺は荒涼とし大地をおっかなびっくり歩き、周囲にいくつかのカメラを設置する。続いて宇宙船から酸素プラントを、引っ張りだし、宇宙船に繋いだ。
このプラントは二酸化炭素から、酸素とカーボンを作り出す機械で、動力は太陽光だ。酸素は環境に考慮し、船内の酸素タンクに溜め込めるだけ溜め込む。
外部環境と切り離すため、ドーム型の施設を作っていき、それを増設してプラントを拡大していく予定だ。ドームの中では地球の植物などを生育する予定だ。
生きて行くためには、リンなどの必須元素がないと食べ物が作れない。
それらを探索し、外部から持ち込む。持ち込む前には殺菌ドームを手前に作成し、消毒してから持ち込む必要がある。どんな菌が潜んでるか分からないからな。
とにかく、発電できる限りの電力を確保し、酸素プラントのカーボンだけではドームの素材は足りないので、いま歩いてる大地やら、岩石やらを取ってくる必要がある。おそらく湖付近は砂になっているはずなのでそこから運んでくるのもいいな。
幸か不幸かぼっちになってしまったので、食料は二ヶ月ほど持ちそうだ。
水と酸素はなんとかなりそうなので、まずはドーム作りに精を出すとしよう。
順調にドームを作成すること5日。消毒プラントと、半径30メートルほどのドームが一つできた!
ドーム上部はクリスタルカーボン製でできており、中には酸素プラントを設置している。酸素プラントは増設し、酸素とカーボンをひたすら製造している。
次のドームも建設をはじめていて、こちらは植物プラントにする予定なので半径100メートルは確保する予定だ。これくらいの広さのドームを幾つかつくり、自給自足可能な状態まで持っていこうと思う。
ドームの建築には、工作機械を多数導入しており、多くはシルフによる自動制御だ。そうでもしないとこんな短期間でサクサク作れない。
初めてのドームは居住空間にすべく、簡易的なプレハブ風建物を建築しようと思っているけど、まず植物プラントの建築が先だ。
作業を終えて、家で寝そべったり、テラスで優雅にお茶したい!
手をつけていない湖にもいかないとだし、休む暇がない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます