第25話 最弱生物島田と外伝
探索は先日より大規模に進めているが、特にシルフからの連絡がなかったのでこれといったことはないのだろう。
「シルフ、洞窟の調査はどんなものだ?」
あの時は未知の食材探索だーと張り切ってソナーをバンバン打っていたが、現状カルデラの深層まで調査する必要が出てきた。といってもやることは変わらないのだが。
「1000メートル以上の深さを持つ洞窟をいくつか発見したわ。そのうち二つにラジコンを向かわせてるわよ。湖の地形調査はまだ半分くらいね」
早い!さすがだ。このスピードなら三か月以内にカルデラ内全調査してしまいそうだよ。
「カルデラの外側の調査は特に変わったところは見つかってないわね。横穴くらいありそうだけど」
地表近くにカルデラ内洞窟に入れるところがあればショートカットできるかもしれない。
「島田。何もこのカルデラが候補じゃないんでしょ、地表に近い閉鎖空間を高度航空機で観測したらどう?」
観測用の高度航空機はラジコン飛行機を2回りほど大きくした無人探査機だ。
高度航空機を投入できるならしたいものだけど、
「シルフ、すでにいくつもの探査機やラジコン、工作機械、監視カメラを動かしてるけど、まだ行けるのか?」
「宇宙船の設備を全て動かしてもまだ余裕よ。どう?驚いた?」
驚くも何もなんという処理能力だ、シルフAIを積んだメインコンピュータ半端ないな。
「あともう一つ、今のうちに確認しておきたい。ルベールの協力はおそらく必須だから、ルベールの目的にも協力してやらないとだな」
「そうね。ルベールにも利がないと動いてくれないでしょうし。マナの回収と帰還だったっけ」
さりげなくマナとか言ってももう突っ込まないぞ。
「第三エネルギーの回収は、俺たちの目標に必要だから協力するけど、第二エネルギーの回収はどうやるんだろう?」
「自身に溜め込むか、回収用の生物がいるかその辺でしょうけど、こちらは心配しなくても、大量にあるんでしょう、ホープに。だから、第三エネルギーの回収に協力するから、私たちにも協力して欲しいで大丈夫じゃない?」
ルベールが帰還を望むなら、渡りに船か、大丈夫そうだ。あとはアズールに俺たちのことを伝えるかどうかだな。ルベールの協力にアズールの協力が必要なら宇宙船のこととか、伝える必要がある。
「あと、ルベールの故郷は私たちより科学技術が低そうね」
「白銀という例がありながら、無機物に第二エネルギーの蓄積ができてないものな」
「そう。だから、ルベールから見たら不可能と言っていたことでも、科学的に達成できる可能性はあるはずよ」
希望は捨てず、科学的見地からの追及もやっていこう。
よし、今後の方針が確定したぞ。しかし、俺がホープでは、最弱に近い生命体となると俺自身が出向くときは細心の注意が必要だな。
「こうして、最弱生物島田の第二の冒険がはじまるのだった」
こら、シルフ!
--第一部完--
ここまでお読みいただきありがとうございました!第二部でも引き続きよろしくお願いします。第二部で完結予定です。
--登場人物紹介--
1.島田健二
完全無欠のぼっちにして、惑星ホープでは家畜にも負ける生命体。
長所はお気楽さ。
2.シルフ
宇宙船ポチョムキンのメインコンピュータ。人間並みの思考能力を持つAIを備える。島田の惑星ホープでの生活は全てシルフが行っている。
3.アズール
カミキリムシの特徴を持つ、ホープの知的生命体。草食。
4.ルベール
アズールに憑く精神体。母星に本体がいるらしいが、帰れなくなってしまった。ぼっち先輩。
5.リーノ
赤の一族。フリソデエビのような美しい青紫色を持つ。食いしん坊バンザイ。
6.島田誠二
島田の弟。兄貴大好き。行くから待ってろ!
うわー、少な!安定のぼっちです。
ヒロインはいませんので、あしからず。
あまりにあっさり終わりましたので、おまけの外伝を用意しました。アズール目線のお話です。
--外伝--
[例のやつらじゃが、心配はなさそうじゃの。見に行ってみようぞ]
頭にルベールの声が響く。先日ルベールは、地上に空を飛ぶ船が着陸したと教えてくれたんだけど、空を飛ぶ船ってどんな形なんだろう。船というものもわたしは見たことがないから。
ルベールは何でも知っている賢者だ。千里眼も使えてわたしに危険があったときはいつも教えてくれる。姿は見えないけど、お話の仕方から年配の人だと思ってるの。
船が着陸してからルベールは船の様子を見に行っていたみたいで、着陸してから数日でお家を作ったみたいなの。どんなお家なんだろう。
わたしたちの住むお家は、大きなキノコの中をくり抜いたもので、ふわふわしてとても居心地がいいんだけど、地上のお家もフワフワしてるのかなあ。
[危害を加えることはまず無いとおもんじゃが、普通に訪問すると怪しまれると思うから一計を考えたぞ]
[なになにー?]
[きゃつらは、湖のある地点に目をもっておる。そこから見える位置に倒れておれば、家まで行けるだろうよ]
[なるほどー。倒れてる人を助けるってことはいい人たちなんだね]
[ああ、二人いるんじゃけど。注意があるんじゃ。見たところ、大きい方は極めて脆弱じゃ。マナも持っておらんので、怪我させないように注意を払わねばならん。怪我させて、もう一人を怒らせるとまずいからの]
大きな人はものすごーく脆いのね。触れるときがあったら注意しないと。もうひとりは怖い人なのね。りょーかい!
湖で寝たふりをしていると、乗り物?みたいなのに乗せられてベットに寝かされたの。話かけられているようだけど、ルベールどうしたらいい?
[そうじゃな。どうもお主の命を救おうと電気ショックを行うとしておるようじゃ]
[電気ショック?]
[ああ、ちょっとピリピリくるが、体に害はない。寝た者を起こすものじゃよ]
大きい人が手に四角い何かを持って、わたしの体に当てて来た。直後、少しだけピリピリしたけどこんな弱いピリピリじゃ寝てても起きれないよー。
[えっと、これで起きれるのかな...]
[大きいやつの基準じゃ、相当なショックを与えるみたいじゃな。わしが言ったことが分かったかの?そろそろ立ち上がって、殴るフリだけしようか、いいかフリだけじゃぞ。間違っても叩いたらダメじゃよ]
なるほどー。警戒してます!って感じを出せばいいのね。知らない人に連れて来られて何かされちゃう!って態度を取ればいいのね。
二回目のビリビリが来た後に、わたしは立ち上がり、拳を振り上げるフリをした。拳を上げるときは、ゆーっくり、ゆーっくりあげろとルベールに言い聞かされていたので、そのように拳を振り上げたら、
大きい人が足払いをしてきたんだけど、よ、弱い、弱すぎるんだけど、倒れたらいいのかな?ルベール?
[触れた場所は一応わかるかの?あまりに弱い力じゃからのう。倒れて、完全に力を抜くんじゃ]
倒れたら、大きな人は、腕を後ろ手を取ってきたのでされるがままにしておいたら、またルベールから。
[少し力が入っとるかもしれん、かるーく、かるーくじゃ]
かるーくね、わたしは深呼吸しながら、出来うる限り力を抜いた。
そうすると、大きな人は手を離してくれた。
[こちらが、抵抗しないと分かったみたいじゃの。よし、大きい方にテレパシーじゃ]
私は、大きな人と小さな人両方にテレパシーでお話しようとしたけれど、小さな人にはつながらなかったよ。ルベールが小さな人の機嫌を損ねるなとまた注意してきた。
小さな人はものすごーく強い人なんだって。わたしも小さな人の空気を近くで見ることで理解できた。この人は...強者だ。
※初遭遇時のアズールと島田の様子でした。アズール側はこんな感じだったのです。かわいそう島田くん。
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