第18話 真実1

「さて、なんて呼べいいのかな?」


[ルベールとでも呼んでください]


「ルベール...」


 俺がそうつぶやくと、シルフが意味を教えてくれた。裏とかいう意味らしい。なるほどアズールの裏側ってことか。


「ルベール、シルフとの会話はできないのか?」


[残念ながら、シルフさんには私の念は届きません]


 ふむ。ルベールもシルフとは会話できないのか。シルフの意見を聞きながらやりたかったんだけど仕方ない。キーボードで入力しながら文字でルベールの会話をおこすことも考えたんだけど、よけい面倒なのでやめた。


「ルベールとアズールは別人と考えていいのかな?」


 俺の推測に、ルベールは肯定する。


「ルベールがどういった存在なのかはわからないが、あんたがこちらを監視していたんだな。そして」


[はい。私が島田さんたちを見ていました。そして、この星の者ではありません」


 地球の人間と同じで宇宙に行くだけでなく、光速の壁を突破できる技術を持っているのか。


「なるほど。アズールとの関係性は分からないけど、ここにある機械類は危険なものではないとかだいたいの使い道を教えたりしたのかな」


[概ねそのとおりです]


「他の星から来たということは、あれかな、俺たちを地球まで送ることとかできるのか?」


[いえ、不可能です]


 もしかしたら、できるのかもしれないけど、そう簡単には行かないか。ひょっとしたら帰れるかなと思って聞いてみたけど、甘くはないか。


[島田さん、あなたたちの知識では、エネルギーの認識はいくつありますか?]


 また、不可解な質問だな。エネルギーの認識ってなんのことだ。


「えっと、太陽光を電気に変換して乗り物を動かしたりはできるんだけど、どういう意味なんだ?」


[なるほど。私たちの認識ではエネルギーは3種類あります。ひょっとしたらもっとあるかもしれませんが。まず、あなたたちが認識しているエネルギーが一つ。電気や重力など、科学的に計測できるものです]


 話が見えないぞ。ああ、ひょっとして。


[次にあなたたちが、白銀やテレパシーについて謎の力と言っていましたよね。それが二つ目のエネルギーです]


 謎の力は物理法則で測れない。俺たちが知る物理とは別の法則があるということか。


[三つ目が、今私が使っているエネルギーです。私の本体は遠く星の彼方にありますが、私の意識...魂でしょうかはここにあります]


 オカルトちっくになってきたな。霊体みたいなものなのか。精神のみで外出できるのなら、あらゆる物理法則を無視することができそうだな。エネルギーという限り、ガソリンがなくなった車のようにエネルギーが尽きると動かなくなるのかな。

 ルベールは3つのエネルギーを認識し、使うことができる。俺たち地球の人間は、一つ目の科学的に計測できるエネルギー...第一エネルギーとでも言うか...のみ使うことができる。

 それに対し、白銀やテレパシーは第二エネルギーを使う事によって利用することができる。ルベールはさらに第三エネルギーを使うことで、肉体から精神を切り離し自由に動くことができるというわけか。


「ちょっと信じられない話だが、事実テレパシーも、ルベールもここにあるからな。テレパシーや白銀の力を第二エネルギーとすると、ルベールは第二エネルギーも使えるから俺とテレパシーで話ができるというわけか」


[そうです。ただこの惑星では、第二エネルギーは誰しもが使える力ではありません。アズールやリーノはテレパシーを使えますが、彼女らの一族全てが使えるわけではありません]


 ふむ。テレパシーが使えるのは全員ではないのか。ならアズールやリーノは異種族同士のコミュニケーションを取るために重用されていることだろう。

 異星人であるルベールの目的は何なんだろう。俺たちの元々の目的は住むところを探しての探検だ。つまり資源を取るためにホープに来た。高い資金を払ってまで惑星探査に乗り出すのだからルベールも同じような目的か?


「そのよくわからないが、ルベールが精神だけ自由に行動できる力を第三エネルギーとしよう。自由に行動できるあんたが、なぜアズールと行動を共にしているんだ?」


[第三エネルギーは有限です。この惑星でも僅かながら第三エネルギーが眠っていますが、微々たる量しか集めることはできません。アズールと行動を共にすることで消費を抑えているのです]


 なぜアズールなのかはわからないけど、きっと条件やらがあるんだろう。資源の採取に来て、資源を取らずにここに留まる理由がわからないな。俺たちの倫理観で言えば、現地生命体がいた場合は現地生命体の汚染、絶滅を防ぐために放置して帰還することも考えられる。

 もし、そうだとしたらとっとと帰ればいいのだ。現地調査をする学者か何かかもしれないけど。それならそれで、もっと自由に行動できるよう第三エネルギーとやらをいっぱい持って来ればいい。もしかして、


「ルベール、あんたは帰りたくても帰れないのか?俺のように」


[そうです。私はこの惑星に囚われてしまいました。あなたと同じように]


 あちゃー。俺と同じぼっちだったのかルベールさん。なんか突然親近感が出てきたぞ。


[この惑星は、第二エネルギーが極度に大きいのです。私は第二エネルギーを採取するためにここへ来たのですが。あまりの第二エネルギーの大きさにこの星に囚われてしまったのですよ]


 意味不明だ。続きを待とう。


[第二エネルギーは全てのエネルギーに干渉します。この惑星の莫大な第二エネルギーはほとんど使われることなく漂っています。そのため、第一エネルギーにも第三エネルギーにも強く干渉してきます。ですので、私は帰ろうとしても第二エネルギーに阻まれてかえることができないのですよ]


 ワープ失敗の原因は過剰な第二エネルギーなのか!観測もできないけど、第二エネルギーが壁になって超光速通信の電波は遮断され、ワープ技術はホープから他への脱出を阻む。精神体である第三エネルギーも例外ではなく、第二エネルギーの壁に阻まれるのか。

 そう考えると、よく俺は壁と衝突して消滅しなかったよな。船員の肉体は壁に阻まれ消し飛んだが、俺と機器類は無事だった。機械自体はこの壁の影響を受けないかもしれないなあ。ただ、ワープのようなエネルギーの力は阻むのか。憶測でしかないから、実際のところは不明だけど。

 結論、島田は幸運にも消し炭にならなかった。島田とルベールさんは晴れてぼっちに。


「よくわかってないけど、取り敢えずルベールは帰還できないんだな。そしてエネルギーの節約も兼ねてアズールと共にいると」


[はい。間違いではありません]


「ふと思ったんだけど、アズールから離れてここへ来てるわけだよな。エネルギーは大丈夫なのか?」


[そうですね。あまり無駄には使えませんので次アズールがここへ来たときに話をしませんか?ただ、彼女が眠っている時にしか体を借りれませんが]


「普段はアズールの体の中にいる?のか。彼女の意識がないときには動かせると」


[そうです。意識があるときでも彼女と会話はできますが。こういった話は彼女に聞かれたくありませんし]


「それは俺も同意だ。次来た時にゆっくり話をしよう。とりあえずルベールに危険はないとわかった」


 わざわざここに話をしに来たことからも、すぐに俺と敵対関係になることはないだろう。ルベールが去った後、俺はさっそくシルフと状況確認をすることにしたのだった。


※作者より

いきなりの展開ですが、次回で噛み砕きます。

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