第15話 蜘蛛を殲滅だー
蜘蛛も気門から呼吸してる限り、必ず溺れるはずだ。シルフの事前調査から少し手を加えればやつらを殲滅できる。
「大丈夫、もし失敗したらすぐに伝えるから。三日後にまた来てくれないか?」
[私たちは、蜘蛛が来るなら倒すつもりだったんだ。洞窟まで行くことはない。君が倒すというなら、ありがたい話だよ]
半信半疑な様子のリーノ。
「野良蟻も殲滅してしまうが、よいよな」
[ああ、問題ない]
「あ、せっかく来てくれたし、蟻食べていく?」
[フェルミーカがまだあるのか!実のところ私はフェルミーカに目がなくてね]
「甘い味付けでも大丈夫か?試してみたい味付けがあるんだ」
[ああ、問題ない。できるまで待たせてもらうよ]
明らかに上機嫌でリーノはそう応じた。
よし、今日の蟻は、ジュースキノコパウダーをふりかけてみるぞ。
蟻の身を蒸らして、ジュースキノコパウダーを振ってみる。プリプリの蟻の身が食欲を誘う。カニだ、これはカニなんだ。
「さあ、食べるが良い」
何者だよ俺。俺の変な言葉を気にすることなくリーノはフォークを持ち、豪快にカニではなく...蟻の身に突き刺した。
[ほう、ジュースキノコか、これはいける]
ほうほう。それは良かった!マウス実験もそろそろ終わるし、俺も近く食べれそうだ。
リーノは完食すると、帰宅して行った。
「さて、シルフ。いよいよ異星人による侵略だ」
「そう言うとカッコイイけど、ぼっち島田による、ずる賢い蜘蛛殲滅作戦。ついでに蟻も死んじゃうよ作戦だよね」
「ずる賢いって、安全確実じゃないか」
「作戦行動の98パーセントは私がやるんだけどね」
「ま、まあ。ブリーフィングをしようじゃないか」
作戦は単純だ。蟻洞窟の奥に一箇所抜け穴があるので、そこを爆破し塞ぐ。次に、湖側の入り口があるけど、ここは放置でもいい。今回蜘蛛が流れてきたら困るからカーボンで一時的に塞ぐか。
作戦は水責めだ!塞いだ後にポンプで洞窟に水を注入し、息絶えるのを待つ。まあ一晩置いておけばよいだろ。
指揮官たる俺はここを動かない。
「動かないんじゃなく、やれることないだけでしょ」
いつもながら、突っ込み激しいな。まあ、そういうことだ。
いざ決行だ!
「あー、あー、こちら島田、ポイントA準備はどうだ?」
「ポイントAて何よ?合図だけでいいわよ」
「いや、こういうのは雰囲気がな。まあいい。爆破頼む」
「あいあいさー。モニターチェック!」
モニターには、崩れた岩によって隙間が塞がれたことが確認できる。
よし、成功だ。次行くぞ。
「次、湖側スタート。塞いだら水を注入開始」
「あいあいさー。洞窟内の水位が満水にらなるまで、およそ5時間」
「さすが、シルフ。無駄に高いポンプの性能だ」
「私にかかれば、こんなもの容易いことよ」
ほーっほっほとでも、笑いそうな雰囲気だな。シルフもノリノリだよ。たまにAIであることを忘れる。
「状況監視を頼む。24時間後に洞窟内にいるラジコンにて周囲の状況を確認。問題無ければ、入り口のカーボンを撤去」
「りょーかい」
あれ、ほんとに俺、何もしてない。まあいいや、寝よう。
さて、蜘蛛と蟻はどうなったかなー。
モニターを見る限り、全て死滅しているように見える。素晴らしい!さすが俺の作戦。
「状況報告頼む」
「赤外線で見る限り、熱反応は一切ないわね。休眠でやり過ごす可能性もあるけど、私がそれを見逃すはずはないわよ」
機械のような正確さだな。あ、コンピュータか。余りに人間ぽくてすぐ忘れるけど、シルフはコンピュータだ。
アンドロイドの技術が出来れば、シルフのAIを突っ込んでみたい。きっと人間と変わらないぞ。
「回収はどうしよう?数にして100は軽く超えるよな」
「放置も不味いわね。明日リーノが来るまでに、10体づつくらい回収しちゃう?サンプルも欲しいよね」
「蟻は食用だしな。凍らせておけば保管できるし、蜘蛛は糸次第で使えるかもしれないな」
残りはリーノたちと相談しよう。シルフに大型作業車両を出してもらって、運んでもらうか。俺はここでモニターしておこう。何もしてないじゃないか?って、気にするな。問題ない。
下手に見学して怪我したら嫌だしなー。
「そういえばシルフ。リーノが言ってたんだけどフェルミーカって何?」
「フェルミーカは...蟻よ」
「蟻のことかよ!なんでわざわざフェルミーカなのか」
「あんたの好きな雰囲気作りじゃないの?よくわからないけど」
フェルミーカとはイタリア語で蟻のことらしい。ついでだからリーノも意味あるんじゃないだろうかと思い、シルフに聞いてみるとイタリア語で水玉やドット柄のことをチルコリーノとかパッリーノとか言うらしい。
なら、アズールも意味あるんじゃないかと思い聞いてみると、こちらはフランス語で青という意味らしい。
「全員そのままじゃないか!」とシルフに突っ込みを入れたら、「あんたの頭が単純なのよ」と返された。テレパシーを受け取る側は相手のイメージを脳内で自分の言葉に変換すると予想されるので、俺の頭がそのまんまな解釈をしたってことか!
我ながら単純だな。俺。
翌日、蟻と蜘蛛を運び込み、蟻はそのまま冷凍保存へ。今後冷凍保存を行う食べ物が増えるかもしれないので、新しく冷凍用のドームを仕立てた。蜘蛛は一体を検査に回し、残りはとりあえず冷凍ドームへ放り込んだ。
腐ると大変そうだしね。もし処分するなら焼却に限る。蜘蛛の検査や先日アズールにもらった食べ物の検査、マウス実験の成果などなどやりたいことがいろいろある が、おそらくそろそろリーノが来るはずだ。
蟻の身蒸しジュースキノコを添えてを準備しておこうか。
[こんにちは]
ちょうど出来上がるころにリーノはやって来た。出来上がるのを察知してたんじゃないのかというタイミングだ。
「まあ、食べながら話をしよう」
と奥の洞窟環境ドームにリーノを案内し、蟻の身蒸しジュースキノコを添えての乗った皿と、炭酸入りジュースキノコをリーノの座るテーブルへ運び込んだ。
[また、新しい料理だな。君は毎回私を驚かせる]
シュワシュワと炭酸が泡立つジュースを一瞥し、リーノから感嘆の声。俺が思うに、リーノはきっと食べるの大好きだ。食べているときの様子がいかにも食べるの好きですってオーラが出てる気がするからだ。
炭酸は水に二酸化炭素を混ぜたものだし、この世界にもきっと天然の炭酸水は存在する。
今降っている雨なんて、炭酸水直前だしね。また、二酸化炭素自体は口に入れても問題ないことがわかってるし、むしろ飲む習慣まであるかもしれない。
現状、リーノからは食べ物を持ってきてもらってないので、彼女がどんな成分を吸収できるかは分かっていない。本人が蟻なら食べれると言っていたので蟻を準備しているに過ぎない。
ジュースキノコはアズールと一緒に飲んでいたから大丈夫だろうという想定だ。
「まあ食べながらでもいいんで聞いて欲しい...っと食べてからにしようか」
あまりに食べるのに集中しているため、俺は言葉を切り、リーノの食べっぷりを観察している。食べ方は豪快にフォークに突き刺しているとはいえ、口を開き歯でむしゃむしゃするのは人間そっくりだ。
たまーに、触覚がピコピコ動いているのは意識してなのか、無意識なのかは分からないけど。赤字に青紫の組み合わせの触覚は非常に美しい。
地球に帰れたら、フリソデエビを飼育してみようかな。この青紫は綺麗だ。
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