第22話 全裸の時に話しかけないでいただきたい

「シルフ、どうやら第二エネルギーは身体強化もできるみたいだぞ」


 アズールとの夕飯が終わり、彼女がプレハブへ入ってから俺はシルフにさきほどアズールと会話した情報を共有していた。


「さすがマナ。魔法よ魔法」


 うわー。まだマナのネタを引っ張るのかよ。すっかり触れられたくない過去になってしまったぞ。


「必要であれば、第二エネルギーの蛇口をアズールに捻ってもらおうとおもう。開くかはわかんないけどな」


 第二エネルギーを体に取り込むことで、どの程度第二エネルギーの壁を探知できるかが知りたいところだ。また、第二エネルギーをどうにかして機械で観測できないものか。吸い上げてタンクに貯蔵しておき、必要な時に利用できれば最高だな。


「第二エネルギーの必要性は、第二エネルギーの壁を探知できるかよね」


「そうだな。壁を探知する方法があるなら、機械で計測したいところだよな。人力判断は正確性に欠ける」


 科学的な観測で計測できないのが第二エネルギーだからなあ。第二エネルギーは機械に影響を及ぼせないし、ハードルは高そうだ。アズールが部屋に入ったし、彼女が寝るにはまだ時間があるだろうし、俺は風呂にでも行くか。

 今日はね。炭酸風呂にするんだ。居住ドーム作ってまず最初に着手したのは風呂だったんだ。風呂はリフレッシュによいからいろいろ拘ってるのさ。炭酸でシュワシュワするのさー。

 服を脱いで、いざ風呂へ。


[お待たせしました]


 突然頭に声が来た。ルベールか...風呂終わるまで待っててくれればいいのに、入ってしまおうと思ったんだけど見られていると思うと気持ちよく入れないので諦めることにした。俺の風呂...


「どこに行けばいいんだ?アズールのところでいいか?」


 全裸ですまし顔の俺。絵的には完全アウトだ。


[いつものテーブルでいいでしょう]


 そんなこんなで、風呂上がり用に準備していたタピオカジュース(ジュースキノコのジュース)とかき氷を持ってテーブルへ。テーブルには既にシルフが三角座りしていた。


「お待たせ。いろいろ聞きたいことがあったんだけど、優先しないといけないことが分かったからまずそれからいいかな?」


 と前置きして、地球から宇宙船が来るかもしれない、このままだと新たな犠牲者が出るかもしれないということを手短に伝えた。


「というわけなんだ。だから第二エネルギーの壁がどうなっているのかを教えて欲しい」


[島田さんのおっしゃるように、このまま宇宙船がこちらに来るとマナの壁に阻まれて生命体は消滅しますね]


 ルベールまでマナになってる。俺の頭!頑張れもうちょっと。

 シルフとの推測どおり、ワープ空間が第二エネルギーの壁に阻まれて人間は消滅してしまうみたいだ。となると第二エネルギーの壁の向こう側に行くか、第二エネルギーの壁を一時的に無効化する必要があるな。


[第二エネルギーの壁は残念ですが、精神体でしか感じ取ることができません。ですので、私以外ではどこまでが壁か判断がつかないでしょう]


 どうやっても俺たちじゃ観測不可能だな。


「第二エネルギーの壁は動くのか?」


[はい、第二エネルギーは地磁気に沿って巡回していますが、動きます。詳しく説明するのも大変ですので、惑星が太陽風を受けて軸が乱れるのに似ています]


 つまり、宇宙へ出て通信可能となった後のワープは不可か。通信するだけなら、宇宙へ行けばなんとかなるかもしれないが、ホープの地磁気がどこまで広がっているのか不明な状況で、航行用のエネルギーをほとんど積んでいない宇宙船で通信可能なところまで航行するのはリスクが高すぎるな。

 どうしようもなくなって、時間切れになりそうになれば、最後の手段として取れるは取れるが。


「地磁気に沿ってとなると、距離の判別が難しいな。衛星は持ってきていないから地磁気の正確な測定もできないし、だいたい地磁気に沿ってるってことは地磁気の外側もあるってことだよな?」


[はい。そうです。私ならマナの壁の先端まで行くことはできますが、第三エネルギーが不足してます]


 第二エネルギーの壁の端まで行くくらいの第三エネルギーも残ってないのか。となるとルベールにいろいろ動いてもらうのは難しいな。


「少しの間だけでも地球と通信したいんだけど、何とかならないか?」


[手段はあります。マナの壁に向かって壁以上の密度でマナを当てるのです。そうすれば一時的に穴が開くでしょう]


 それはちょっと無理じゃないか?第二エネルギーの壁向かって、第二エネルギーを当てるって距離は?目の前まで行かないとダメなら宇宙船で行かないといけないし、目の前まで行くならやる意味はないよな。

 壁をまたいでしまえばいいから。そもそも、第二エネルギーの量を計測できないし、集積することもできないからどうしようもないな。


「それは、ルベールならできるのか?」


[可能か不可能かで言えば可能です。ただ、地上からマナを当てるとなると、相当量のマナが必要ですし、私の第三エネルギーが持ちません]


「何らかの手段で第二エネルギーを集積し、それをなるべく第二エネルギーの壁に近いところから発射すればいいのか?」


[はい。集積方法、発射方法をどうするかでしょうが]


 そうなんだよな。集積方法も発射方法も分からない。機械的な手段で集め、発射出来るなら可能だろうが、何しろ第二エネルギーは俺たちは計測さえできないんだ。


「どうにか第二エネルギーを計測したり、集積する方法はあるのか?」


[マナはこの惑星のコアから大量に溢れ出て循環しています。それを生物が取り込み利用しているのです。利用したマナは消滅しますが、コアから生成されていますので総量で見れば減ることはありません。アズールのように意識的にマナを利用できる者はマナを感じ取ることが出来ます」


 つまり、俺が第二エネルギーを取り込めれば、計測できる可能性もあるのか。問題はマナは生命体しか取り込めないってことだよなあ。しかし、空気中から第二エネルギーを分離できるなら、圧縮し集積することができるはずだ。

 アズールに頼んでみるか、ものすごーーく痛いのを。メディックを呼ばないと。シルフなんだけどね。


「もう一つ、ルベールが第三エネルギーを集める手段はあるのか?」


[この惑星は第三エネルギーはあまり産出してません。僅かづつではありますが、コアより第三エネルギーも生産されています。ある程度の密度があれば取り込むことはできます]


「なら、ルベールがコアまで単独で行ければ貯めれるんじゃないか?」


[コアはマナも生産しているのですよ。それもものすごい密度で。ならあなたにもどうなるか想像がつくはずです]


 たぶん、圧倒的な第二エネルギーの密度に囚われてコアから出れなくなるだろうな。となるとアズールと一緒に行く必要があるか。もしくはアズールのように憑依できる知的生命体を地表か地表より低い位置で探すかだな。

 これは予測だが、ルベールが憑依できる条件に第二エネルギーを能動的に使え、テレパシーが通じることが必要だと思う。ならば知的生命体で無ければ不可能だろう。反射で能動的に使う生き物がいるかもしれないが、その生物と意思疎通はできないだろう。


「となると、何らかの手段でアズールを第三エネルギーの密度が濃い地域に連れて行くか、ルベールが一緒にいれる生命体をその地域で探すかだな」


[はい。第三エネルギーの量が少ないとはいえ、地表付近の窪地であれば第三エネルギーが滞留していることが多くあります。そういった第三エネルギーを取り込めば貯めることができるでしょう。しかし、アズールのように上手く一緒にいれる生命体を探すのは至難の技です。心が通じなければ憑くことはできませんので]


「俺が第二エネルギーを使いこなせるようになれば、俺に憑くことはできるか?」


[かなり気が進みませんが、可能かどうかで言うと可能です]


 あからさまに嫌そうだなおい。俺が気に入らないのか!そうなのか。欲しい情報はある程度聞くことはできた。シルフとこの情報をまとめるか。

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