第13話 外伝と閑話1 

外伝


 島田がホープでの生活を満喫しているころ、地球は騒然としていた。


 順調に積み重ねたワープ実験、満を持して送り出した宇宙船ポチョムキン号は、ワープ直後消息不明。万に一つホープまで到着し、通信途絶の可能性も考えられたが、宇宙ステーション「イェール」の観測ではポチョムキン号があまりに小さすぎ観測は不可能。


 世論は沸騰し、自由と世界を切り開く名前として、ロシア政府関係者が押し切ったポチョムキンという船の名前さえ糾弾されるありさまだった。


 今回のホープ有人探査は、地球の未来をかけた一大プロジェクトで、アメリカ、ロシア、日本、ドイツ、イギリスの5カ国共同の巨大プロジェクトだった。


 ポチョムキン号が行方不明となって以来幾度となく通信が試みられるものの、未だ通信途絶の状況である。超光速通信は、実用化し使用開始されたばかりの技術ではあるものの、使用例がないわけではなく、ポチョムキン号が無事であれば、例え故障しても、優秀なAIであるシルフが修理可能と見積もられていた。


 残された遺族も、行方不明の船員を捜索しようとあらゆる手を尽くそうとしていた。島田の弟である誠二もその一人だ。


「兄さん、待っていてくれ。あの兄さんがあっさり死ぬはずないんだ」


 誠二は半ば妄執に囚われている。ポチョムキン号はきっとホープにたどり着き、兄はそこで迎えを待っているのだと。

 世間や学者の発表では、ポチョムキン号はワープ失敗で虚数空間に囚われ、分子分解されているだろうとの見方が大勢だ。万が一、ワープが成功していたとしても、どこに到着するのかも不明。

 超光速通信は20光年を1秒で駆け抜けるはずなので、もしホープに到着していれば、通信が出来ているはずで、それが成されていないということから、ワープが成功し、無事に虚数空間から抜け出していたとしても、我々が予想するよりはるか彼方へポチョムキン号は到着しているだろうと。


 誠二はポチョムキン事故以来、ホープへと向かうために、民間企業、政府問わず駈けずり回っていた。彼の苦労も虚しく、ワープ失敗の原因究明が出来ていない限り、次のワープはないという回答だった。

 しかし、ついに誠二は協力を申し出てくれるベンチャー企業につなぎをつけることが出来た。

 問題の資金については、船員の遺族が協力し、寄付を募っている。何年かかるか不明だが、ようやく宇宙船の目処がついてきたのだ。



閑話休題

「どうもー、いつもぼっちの大冒険を読んでくれてありがとう!優秀すぎるAIシルフです」


「自分で言うなよ...」


「島田!あんたの動きが引き篭もり過ぎて、惑星探査ものにある手に汗握るアクションが全然ないって言われてるわよ」


「それは映画の中だったら死なないし、不明ウィルスとかもないからいいだろうけど。俺が治療不能の病気にかかってもいいっていうのかよー」


「まあ、あんたに言った私がダメだったわ。田舎に引っ越しました!自給自足してます。たまに、ご近所さんとの心温まる交流が!ってものになってるわよ」


「田舎暮らしと一緒にすんなー!外は60度なんだぞ!」


[こんにちは]


「アズール!あいつに何か言ってやれ!」


[シルフさんとは会話できませんし]


「そうだった!ちきしょー。しかし、いつになったら地球から船くんだろうなあ」


「さあねえ、超光速通信も壊れたままだしね。点検したんだけど、異常はないのよね。気になったんだけど、あんたを心配するような人いるの?恋人とか?奥さんとか?子供とか?」


「ちくしょー。そんなのいたら選考漏れしてるんだよ!悪かったな」


「どうせぼっちなら変わらないんじゃないの」


「違う、違うぞ!シルフ。人間がいないここと、人間がいる地球は全く違う!人がいるってことはな、可能性あるんだ!」


「今まで無しならこれからも無しなんじゃないの?」


「!!」


島田はあまりのダメージに倒れ伏した。


「さて、気を取り直して。アズールとリーノのモデルは作中でも島田が語ってるわね」


「アズールはルリカミキリムシ、リーノはヒョウモンダコとフリソデエビに尻尾だけサソリだね」


「ルリカミキリムシは、日本で一番美しい昆虫と言われてるくらい青色がとても美しい昆虫よ。リーノはたぶんモデルはフリソデエビのほうと思うの。

フリソデエビは地域によって色が違っていて、青紫の斑点と赤っぽい斑点のある種類がいるわ」


「フリソデビモデルだったら、今後リーノの生態が判明したときに、蟻専食とかだったらかなり嫌なんだけど...」


「そうねー。フリソデエビはヒトデ専食だものね。飼育用にコブヒトデが売ってるくらいだし」


「フリソデエビって飼育できんのかよ。ほんと関係ない情報いっぱい入ってんなシルフ」


「優秀なAIだからね。褒めなさい、称えなさい」


「まあ、いつも助かってるよ」


「そ、わかればいいのよ」


(デレた!)


「あと、アズールとかリーノとか後なんだっけあの蟻をなんか変な名前で呼んでたな」


「そうね。テレパシーはあくまでイメージみたいだから、島田が受け取ったイメージがその名前だったんじゃないの?」


「よくわからん。知らない名前までイメージで受け取るのかよー」


「テレパシーとか超常現象なんて私たちにはよくわからないしねー」


「科学的に解明できてないからな。謎物質も」


「っと、こんなことを話すために、ここに来たわけじゃないのよ。」


「そうだった」


「ここまで、ボッチでもなんとか生きてます を読んでいただいてありがとうございます。望外の評価をくださったり、フォローしてくださったり、レビューをくださったり感動しまくりです。今後とも ボッチでもなんとか生きてます をよろしくお願いします」


「すぐ終わったりして」


「島田ボッチエンド以外ありえない」


「えええええええ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る