概要
蝉の声が木霊すとある休日の昼下がり
不意に脳裏に飛来したさざなみの旋律は、変わりばえのしない僕の日常を、満ちる潮のようにゆっくりと、少しずつ侵していった
2017/1/7 第一波完結。
第二波公開中↓↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882358285
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!能力は枷か
人を凌ぐ能力を得る話と聞くと、それを好きなように使ってみようと思うのがまずは思いつくものだろう。ところがこの話は逆で、それを使えるようになることで生き方が規定されてしまうというところが強調されている。
序盤はあまりこうしたテーマが色濃くないが、話が進むにつれてそこが明確になっていく。主人公がこの能力に向き合う描写が丁寧で、彼を取り巻く友人や気のある女子との関わりを通じて様々な形で心情の変化が映し出される。映画や漫画と異なり視覚情報の少ない小説ではこうした表現が醍醐味になるので、とても好感が持てた。
舞台の描写や設定も練りこまれていて、シーンごとの展開も楽しめた。作者の繊細で情緒的で、かつ…続きを読む - ★★ Very Good!!現代版・羅生門
この物語の重心は、倫理観にあります。
芥川龍之介の描いた『羅生門』では、若い下人が飢餓により倫理を捨てて盗賊になろうかどうか迷ったあげく、自分を納得させる大義名分を手にして老婆から着物を奪います。
『羅生門』の時代なら、合戦も盗賊も疫病もありふれているでしょうから、今の時代より死が身近にあったので、倫理に反することをやっても反動が小さくなります。老婆から着物を奪った下人だって、改心すれば何食わぬ顔で日常生活に戻ったところで、責める人間なんて皆無でしょう。
しかし、この物語における主人公は、死が遠い現代日本に生きているので、とある倫理に反することを事故のごとく実行してしまうことで、大きく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!丁寧な心理描写が読み手を物語に引き込みます
短編モノをメインで読んでいた自分ですが、気づいたら第一波を一気読みしてしまい、
レビューを書かずにはいられませんでした。
少しずつ崩れていく日常に振りまわされる主人公の心情を深く丁寧に描写していて、
これが「自分だったらどうするだろうか・・」と、ふと思ってしまうような没入感を与えてくれます。
個性的なキャラクターも魅力的で、
特定のキャラにフォーカスをあてたエピソードがちりばめられており、
読み手がついつい感情移入してしまいます。
日常のできごとだけでも十分読み応えのある内容ですが、
第二波以降、非日常にどう向き合っていくのか、
残された謎が今後どんな形で明らかになっていくのか、
先の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!日常と非日常、平穏と異能。荒ぶる波打ち際で少年は自分を見出す。
子供のころ、いじめられた時『もしも超能力があったら、こいつらなんかやっつけてやるのに』、こう願ったことがあります。似たような思いをした人も少なくないのでは。
主人公白峰龍輔は学校の屋上で恐喝、暴力に見舞われ、加害者に力を揮い絶命させます。
法では裁かれることのない彼。しかしその心中は?
そして犠牲者の妹に会った時去来するものは。
異能の能力をカタルシスを得るための方便ではなく、読者にも苦い痛みを共有させるような青春現代劇。
主人公を思いやる人たち、暖かい団欒、そして別離。
読み終わった時、心が凪ぎになるような一作です。 - ★★★ Excellent!!!ぼくは加害者? 被害者? それとも……
突如使えるようになった、圧倒的な力。
その力は、無意識のうちに自らを被害者から加害者へと変えていた。
そのことに、己はどう向き合うのか。
主人公は、どこにでもいる普通の高校生です。
でもその主人公が力を手にしたことで、変わっていく人間関係。
親友たちや同居人、事件の関係者たちのことなど次第に状況が明らかになるにつれ、その事実に迷い、怯え、自己正当化し、それが新たな事実の前に崩れ去り……そうやって、たどりついた先に彼は何を見ることになるのか……。
まだ、明らかになっていない事象や人物など謎も多く、二部以降の展開が楽しみです。
あと、親友との関係がどうなってしまうのか、それも気になります…続きを読む