人を凌ぐ能力を得る話と聞くと、それを好きなように使ってみようと思うのがまずは思いつくものだろう。ところがこの話は逆で、それを使えるようになることで生き方が規定されてしまうというところが強調されている。
序盤はあまりこうしたテーマが色濃くないが、話が進むにつれてそこが明確になっていく。主人公がこの能力に向き合う描写が丁寧で、彼を取り巻く友人や気のある女子との関わりを通じて様々な形で心情の変化が映し出される。映画や漫画と異なり視覚情報の少ない小説ではこうした表現が醍醐味になるので、とても好感が持てた。
舞台の描写や設定も練りこまれていて、シーンごとの展開も楽しめた。作者の繊細で情緒的で、かつ男性的な視点が反映された、胸を打つ良作である。
あと非常に重要な点だが、涼子ちゃんがとてもかわいい。
とてもかわいい。
( ・∇・)
この物語の重心は、倫理観にあります。
芥川龍之介の描いた『羅生門』では、若い下人が飢餓により倫理を捨てて盗賊になろうかどうか迷ったあげく、自分を納得させる大義名分を手にして老婆から着物を奪います。
『羅生門』の時代なら、合戦も盗賊も疫病もありふれているでしょうから、今の時代より死が身近にあったので、倫理に反することをやっても反動が小さくなります。老婆から着物を奪った下人だって、改心すれば何食わぬ顔で日常生活に戻ったところで、責める人間なんて皆無でしょう。
しかし、この物語における主人公は、死が遠い現代日本に生きているので、とある倫理に反することを事故のごとく実行してしまうことで、大きく道を踏み外していくことになります。
若い下人のような物理的な強盗を現代でやれば、法治国家の裁きを受けることでしょう。しかしこの物語の主人公がやった“罪”は法治国家によって裁くことのできない特殊能力によるものでした。
法的には問題ない。しかし倫理には反する。
そのとき主人公はどうするのか?
あなたがラストシーンを読むことで、知ることができるでしょう。
短編モノをメインで読んでいた自分ですが、気づいたら第一波を一気読みしてしまい、
レビューを書かずにはいられませんでした。
少しずつ崩れていく日常に振りまわされる主人公の心情を深く丁寧に描写していて、
これが「自分だったらどうするだろうか・・」と、ふと思ってしまうような没入感を与えてくれます。
個性的なキャラクターも魅力的で、
特定のキャラにフォーカスをあてたエピソードがちりばめられており、
読み手がついつい感情移入してしまいます。
日常のできごとだけでも十分読み応えのある内容ですが、
第二波以降、非日常にどう向き合っていくのか、
残された謎が今後どんな形で明らかになっていくのか、
先の展開が見通せないワクワク感が心地よい作品です。
子供のころ、いじめられた時『もしも超能力があったら、こいつらなんかやっつけてやるのに』、こう願ったことがあります。似たような思いをした人も少なくないのでは。
主人公白峰龍輔は学校の屋上で恐喝、暴力に見舞われ、加害者に力を揮い絶命させます。
法では裁かれることのない彼。しかしその心中は?
そして犠牲者の妹に会った時去来するものは。
異能の能力をカタルシスを得るための方便ではなく、読者にも苦い痛みを共有させるような青春現代劇。
主人公を思いやる人たち、暖かい団欒、そして別離。
読み終わった時、心が凪ぎになるような一作です。
突如使えるようになった、圧倒的な力。
その力は、無意識のうちに自らを被害者から加害者へと変えていた。
そのことに、己はどう向き合うのか。
主人公は、どこにでもいる普通の高校生です。
でもその主人公が力を手にしたことで、変わっていく人間関係。
親友たちや同居人、事件の関係者たちのことなど次第に状況が明らかになるにつれ、その事実に迷い、怯え、自己正当化し、それが新たな事実の前に崩れ去り……そうやって、たどりついた先に彼は何を見ることになるのか……。
まだ、明らかになっていない事象や人物など謎も多く、二部以降の展開が楽しみです。
あと、親友との関係がどうなってしまうのか、それも気になります。
どこにでもいる、普通の高校生であるはずの主人公。両親との距離に、友人とのあり方に、そして自分という存在に悩み苦しむ等身大の少年だった。けれど、そんな彼を取り巻く環境は、彼の内に秘めたる能力によって徐々にその姿を変えていく……丁寧に語られる内的描写だけでなく、心の揺れや緊迫感などを暗示する描写も読みごたえのある物語でした。
ぼくらは人生のなかで壁にぶつかり、その壁を越えるために苦悩し、道を探す。その先にあるものが果たして希望なのか、絶望なのかは壁を越えてみなければわからない。けれど選択のときはじりじりと迫り、待ってはくれない。物語のラストは胸が締め付けられました。謎が多い物語がこの先、どのように繋がっていくのか楽しみです。
人は迷い、過ちを犯してもなお進むことを強いられる生き物なのか……そんな世界で生きるあなたに是非手にとってもらいたい、これはぼくら自身の物語なのかもしれません。
主人公・白峰龍輔は静かに暮らしたい。
なんて書くと、まるでどこぞの女の指を集めるシリアルキラーだが、勿論今作の主人公はそんな物騒なヤツではない。
ただ、平穏をよしとし、争いごとなどを好まない、ごく普通の人間なだけだ。
それは自分に敵対する人間を自殺に追い込んだ異能を持っているにも関わらず、それを無闇やたらと使わない性格からも見て取れる。
正直なところ、異能が発動してから物語もそっちの方向へぐんぐん加速するんだろうなと思っていたので、この主人公の自粛ぶりには面食らった。
だが、考えてもみてほしい。自己防衛とは言え自分の力で人を、しかも自分でもよく分からないまま殺してしまったのだ。そんな異能に戸惑いと恐怖を覚えるのは当たり前だろう。
等身大の人間が、ここにいる。
思えばタイトルでもあり、物語の序盤によく出てきた漣は、そんな彼の日常の変化はもちろんのこと、心の水面を表しているのかもしれない。
また、主人公だけでなく、その周りを囲むサブキャラ達にもドラマがある。初登場時は単なるモブキャラだと思っていた人物にも隠された過去があって驚いた。
いまだ謎に包まれた部分も多く、一回しかレビューが書けないカクヨムで、どのタイミングで書くべきかずっと悩んでいたが、もう限界だ(レビューを書く)を押すね! 今だ!
……あ、これじゃあ自分がシリアルキラーな人みたいだ(ぁ
独り暮らしをしていたはずが、突然はじまるかわいい女の子との同居生活!
でも少年には仲がいい、ひそかに憧れているクラスメイトの女の子もいて、しかもその女の子たちは、同じ部活の先輩後輩と来たものだ。
さあ、どうする!?
って感じで始まる、ちょっとドキドキな青春ストーリーとなっています。
このようにラブコメとしての構図がしっかりしていることに加えて、しっとりと落ち着いた文章により、青春ドラマの部分もとても盛り上がりがあって、話数が進むたびに物語にのめりこんでいきました。
中でも、主人公くんの内面描写がとてつもなくすごい。
過去にいじめを受けた経験があることもあり、人生に諦めモードだったりするのですが、その描写の破壊力が素晴らしいと個人的には思います。
その彼は、異能ともいえる未知の力を手に入れる。
その力をどうするのか、続きがとても気になる作品です。
よせては、かえす、その波は、何を伝えてくるのか。
それは命の鼓動か。
それとも異能の胎動か。
まるで、おだやかな流れの日常から荒波のような非日常を、鋭利なカッターナイフの刃で切り取られたかのように読ませてもらいました。
また、思春期真っ直中にある主人公の、やや斜に構えた言動に、身に覚えのある読者の方々もいるのではないだろうか。
確立する自我と社会とのズレ、まだ大人になりきれないが子供でもない葛藤と反発、そこに陰鬱とした過去と、持て余す力が絡み、主人公の行く先に不安を宿す。
だが、彼を取り巻く人間関係には救いの光が提示されているように思われた。
波は放てば、返ってくるもの。
人と人との関係性が、そうであればきっと、と願わずにはいられない。
今後も気になる作品、読ませて頂きました。
ありがとうございます。
少しばかり暗い心を持つ少年。あるとき不思議な力が自分に宿っていることに気づいた。そして、同じような力を持つ者が次々と現れ……。
現代アクションというジャンルでありながら、中々ミステリーチックな物語の印象を受けました。まだその不思議な力『サイト』は表面的な説明しかされておらず、これが今後どう主人公達に影響されていくのかものすっごく気になります。
また、順序立てて展開される話でとても読みやすいです。高校生という年齢だからか、会話や展開がどこか初々しいというか、その年代らしいやり取りの部分が垣間見え、一話一話が丁寧に書かれているなと思いました。
少年は『サイト』の先に何を見るのか……続きが楽しみです。
寄せては返す波の情景と共に幕が開け、夢現つの様な世界観から物語は始まります。主人公は過去に暗い影を落とす少年。その彼を取り巻く人物達との関わり合い中で少しずつ彼は自身に秘められた「サイト」という力を自覚し始めます。
2話辺りでから始まる恩師とその娘との同居生活からの4話辺りでの急展開に唖然とさせられました。
いや、それより何より衝撃的だったのは2話目辺りで同居を始めた物語の鍵を握る女の子、涼子ちゃんが、少し陰りがありながらも神秘的な雰囲気を纏うその美少女がいきなり主人公の背中を……おっと言え無い(本編を刮目せよ)。なんて羨ましい、じゃなくてなんてけしからん事を!そこ変われと言いたくなる事間違い無しです!←話の主軸とは関係無い。
主人公には過去の経験や性格、性質、人格的に殺伐とした口調で淡々と物語られていきますが、ヒロインの二人や友人達が読者への清涼剤として働いてそれらを緩和してくれるので安心して下さい。むしろそのせいで主人公が時々アンチヒーローの様に見えてしまいますが、きっと気のせいです。
あと……誰だっけ?
あっ!鴉君も出番はまだ無い様ですがキーパソンな気がします。
涼子ちゃんの年頃の女の子感が和みますが、彼女の過去にもきっと色々あるような雰囲気を感じます。
主人公は果たして、サイトと呼ばれる力とどう向き合っていくのでしょうか。
冒頭、そして作中に時折現れる漣(さざなみ)。主人公の少年を翻弄するそのイメージは、この作品の持つ雰囲気そのものでもあります。
エピソードをひとつ読み進めるごとに、ひとつの物事が明らかになり、そして、またひとつの謎が現れる。よせてはかえす漣のように、物語は清らかな音を立てながら、読み手に向かって次々と押し寄せてきます。気配すら感じなかった伏線に驚き、登場人物の不可解な言動の理由を発見し納得するたびに、すっかり物語の漣に翻弄されていることに気付かされます。
特に、少年の過去が、彼の心の奥底に沈んだ思いが、徐々に明らかになっていく様は、波が砂浜をえぐるかのように静かでありながら、しかし抗い難い迫力に満ちています。「キャラクターの過去設定の説明」という難しい部分を、これほどまでに巧みに語り、読み手を退屈させないばかりか、この部分ですっかり読者を主人公に感情移入させてしまう手腕には、ただただ感嘆してしまいます。
緊張感のある「波」の合間には、少年少女の爽やかなやり取りや、主人公の目を通した繊細な情景描写が織り込まれ、ストーリー構成における見事な緩急の妙にも唸らされます。
未だ明らかにされていない「漣」の正体や登場人物たちの抱える謎は、これからさざなみのように少しずつ明らかにされていくのでしょう。すべてが波の上に露わになるまで、この作品からは目が離せません。(第8話「力-①」まで読了)
とても詩的で美しい文学です。
それでいて、ヒロインと同棲したりお風呂で背中を流してくれたり…ラノベ的なニヤニヤも堪能できるという、何という隙のない小説…!
ある日出会った不思議な雰囲気の後輩は、主人公をお兄ちゃん呼びしようとしたり、朝起こしに来てくれたり、お弁当を作ってくれたりと、天使全開です。それでいて言葉少なにツンツンしてるとか、もう大好き!!!!!
第3話は必読です!
そんな主人公たちは、他人と心のシンクロが出来るという超能力に目覚め、同じ力を持つ団体に勧誘されます。
さらに、彼の幼馴染の女の子や男友達との友情など、思春期ならではの想いが交錯して、話は予想も付かない方向へ…!
冒頭に登場した胸糞悪い不良が、数話後に思わぬ再会をする所なんて、話の展開が巧み過ぎて舌を巻きました。
主人公の落ち着いた語り口が非常に読みやすく、これからも目が離せません!