等身大の人間が、ここにいる

 主人公・白峰龍輔は静かに暮らしたい。
 なんて書くと、まるでどこぞの女の指を集めるシリアルキラーだが、勿論今作の主人公はそんな物騒なヤツではない。
 ただ、平穏をよしとし、争いごとなどを好まない、ごく普通の人間なだけだ。
 それは自分に敵対する人間を自殺に追い込んだ異能を持っているにも関わらず、それを無闇やたらと使わない性格からも見て取れる。
 正直なところ、異能が発動してから物語もそっちの方向へぐんぐん加速するんだろうなと思っていたので、この主人公の自粛ぶりには面食らった。
 だが、考えてもみてほしい。自己防衛とは言え自分の力で人を、しかも自分でもよく分からないまま殺してしまったのだ。そんな異能に戸惑いと恐怖を覚えるのは当たり前だろう。
 等身大の人間が、ここにいる。
 思えばタイトルでもあり、物語の序盤によく出てきた漣は、そんな彼の日常の変化はもちろんのこと、心の水面を表しているのかもしれない。
 
 また、主人公だけでなく、その周りを囲むサブキャラ達にもドラマがある。初登場時は単なるモブキャラだと思っていた人物にも隠された過去があって驚いた。
 いまだ謎に包まれた部分も多く、一回しかレビューが書けないカクヨムで、どのタイミングで書くべきかずっと悩んでいたが、もう限界だ(レビューを書く)を押すね! 今だ!

 ……あ、これじゃあ自分がシリアルキラーな人みたいだ(ぁ

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