波は放てば、返ってくるもの。

 よせては、かえす、その波は、何を伝えてくるのか。
 それは命の鼓動か。
 それとも異能の胎動か。

 まるで、おだやかな流れの日常から荒波のような非日常を、鋭利なカッターナイフの刃で切り取られたかのように読ませてもらいました。

 また、思春期真っ直中にある主人公の、やや斜に構えた言動に、身に覚えのある読者の方々もいるのではないだろうか。

 確立する自我と社会とのズレ、まだ大人になりきれないが子供でもない葛藤と反発、そこに陰鬱とした過去と、持て余す力が絡み、主人公の行く先に不安を宿す。

 だが、彼を取り巻く人間関係には救いの光が提示されているように思われた。
 波は放てば、返ってくるもの。
 人と人との関係性が、そうであればきっと、と願わずにはいられない。

 今後も気になる作品、読ませて頂きました。
 ありがとうございます。

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