能力は枷か

人を凌ぐ能力を得る話と聞くと、それを好きなように使ってみようと思うのがまずは思いつくものだろう。ところがこの話は逆で、それを使えるようになることで生き方が規定されてしまうというところが強調されている。

序盤はあまりこうしたテーマが色濃くないが、話が進むにつれてそこが明確になっていく。主人公がこの能力に向き合う描写が丁寧で、彼を取り巻く友人や気のある女子との関わりを通じて様々な形で心情の変化が映し出される。映画や漫画と異なり視覚情報の少ない小説ではこうした表現が醍醐味になるので、とても好感が持てた。

舞台の描写や設定も練りこまれていて、シーンごとの展開も楽しめた。作者の繊細で情緒的で、かつ男性的な視点が反映された、胸を打つ良作である。

あと非常に重要な点だが、涼子ちゃんがとてもかわいい。
とてもかわいい。
( ・∇・)

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