それはあまりにもほろ苦く……

どこにでもいる、普通の高校生であるはずの主人公。両親との距離に、友人とのあり方に、そして自分という存在に悩み苦しむ等身大の少年だった。けれど、そんな彼を取り巻く環境は、彼の内に秘めたる能力によって徐々にその姿を変えていく……丁寧に語られる内的描写だけでなく、心の揺れや緊迫感などを暗示する描写も読みごたえのある物語でした。
ぼくらは人生のなかで壁にぶつかり、その壁を越えるために苦悩し、道を探す。その先にあるものが果たして希望なのか、絶望なのかは壁を越えてみなければわからない。けれど選択のときはじりじりと迫り、待ってはくれない。物語のラストは胸が締め付けられました。謎が多い物語がこの先、どのように繋がっていくのか楽しみです。

人は迷い、過ちを犯してもなお進むことを強いられる生き物なのか……そんな世界で生きるあなたに是非手にとってもらいたい、これはぼくら自身の物語なのかもしれません。

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